作品紹介・あらすじ
モデルからストーリーへ。文士たちは「日本の近代」をいかに捉えてきたのか-文学者の豊かな直観や鋭敏な観察、的確な時代認識をつぶさに読み取りながら、社会科学が本来もつべき多面的な視点、時代認識力、ストーリー的把握を探究する。博覧強記をもって知られる経済学者による待望の渾身作。
感想・レビュー・書評
絞り込み
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武田泰淳「鶴のドンキホーテ」、太宰治「斜陽」、三島由紀夫「絹と明察」、永井荷風「あめりか物語」、谷崎潤一郎「痴人の愛」、横光利一「上海」、小林多喜二「蟹工船」、大岡昇平「野火」、山田風太郎「戦中派不戦日記」、夏目漱石「文芸の哲学的基礎」といった作品を取上げそれぞれが時代背景を映している社会科学との接点であることを強調しています。武田は社会主義、太宰は華族の没落、三島は繊維業界(オーミケンシ)の労働争議、横光は戦前から既に存在したというグローバル経済、大岡は戦争という異常な現実など、を考えさせてくれるものです。それにより日本の近代を全体として描いているという意欲的な作品です。
著者プロフィール
猪木 武徳(いのき・たけのり):1945年生まれ。経済学者。京都大学経済学部卒業。米国マサチューセッツ工科大学大学院修了。大阪大学経済学部長を経て、2002年より国際日本文化研究センター教授。2008年、同所長。2007年から2008年まで、日本経済学会会長。2012年4月から2016年3月まで青山学院大学特任教授。主な著書に、『経済思想』(岩波書店、サントリー学芸賞・日経・経済図書文化賞)、『自由と秩序』(中公叢書、読売・吉野作造賞)、『文芸にあらわれた日本の近代』(有斐閣、桑原武夫学芸賞)、『戦後世界経済史』(中公新書)などがある。
「2023年 『地霊を訪ねる もうひとつの日本近代史』 で使われていた紹介文から引用しています。」
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