- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784642026727
作品紹介・あらすじ
鎌倉新仏教はどのような特徴を有し、その成立の意味はいかなるものであったのかを、得度・授戒という入門儀礼と祖師絵伝(神話)を主な素材として明らかにする。そして、それ以前の宗教が共同体宗教であったのに対し、鎌倉新仏教は「個人」の救済をめざす個人宗教だったことを提示する。旧版刊行後の研究成果を盛り込み、全面的に増補改稿した。
感想・レビュー・書評
-
中世の仏教界における入門儀礼システムと、いわゆる鎌倉新仏教の祖師たちにかんする絵伝などに見られる神話について、歴史学的な立場から考証をおこなっている本です。
本書ではまず、国家によって認められた「官僧」をとりまとめる得度制と授戒制について、多くの史料を引用しながらその実態を明らかにしています。つづいて、いわゆる鎌倉新仏教や「新義律僧」と呼ばれる旧仏教内部の改革派における入門システムについても検討をおこない、「官僧」と「遁世僧」のありかたを制度的側面から明らかにしています。
次に著者は、祖師絵伝に見られる神話を読み解くことで、鎌倉新仏教や新義律僧集団における非人救済および女人救済についての解釈をおこない、旧来の共同体の外部に立つ「個人」に焦点をあてた宗教運動としての側面があったと指摘しています。
とくに前半は、多くの史料を提示しながら専門的な議論が展開されているのですが、著者が「はしがき」に「史料の部分はとばして読んでもらってもかまわない」と述べているように、本文のみをたどっていっても大筋の理解に支障はありません。
歴史学的なアプローチによって鎌倉仏教の実態を解明する試みで、いわゆる「鎌倉新仏教」に対する旧来のイメージと、黒田俊雄の顕密体制論のあいだを通り抜けるようにして、当時の具体的な宗教のありようにせまっています。詳細をみるコメント0件をすべて表示