上杉鷹山 (人物叢書 新装版)

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  • 吉川弘文館
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  • Amazon.co.jp ・本 (343ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642050982

感想・レビュー・書評

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  •  財政改革・産業開発・倹約奨励・文教刷新等、藩政改革にすぐれた業績をあげた米沢藩主上杉鷹山は、江戸時代における名君の一人としてその名を謳われる模範的封建領主である。本書は、戦後目覚ましい発展をとげた藩政史研究をふまえ、多年にわたる基礎史料の精査をもとに、この典型的名君の人と生涯に新たな照明をあてた斬新な伝記(初版は1968年の刊)

     名君として有名な上杉鷹山であるが、その業績はあまり知らなかった。借財に苦しむ米沢藩を質素倹約により建て直したというイメージが強い。あとは藤沢周平の小説を読んだくらいか。伝記ではあるがこの本はとても面白い。
     米沢藩は、関ヶ原において120万石から30万石に削られる。その後、4代藩主の急死による15万石に削られるが、家臣団はほとんど減じなかった。その数は、明治3年の藩政一覧によると士族卒族あわせて約6700人で、秋田藩、福井藩より多く福岡藩に匹敵するほどの多さだったという。
     ただし、当初から窮乏していたわけではない。二代藩主定勝卒去の際には15万両相当の囲金があり、4代綱憲の代にも軍用貯金が2万4千両と貯籾18万俵あまりがあったと言う。ところが次第に窮乏が進行し鷹山の義父、重定(9代)は、領地の幕府返上を決意したという。
     鷹山は改革を進めるが思うような成果があがらない。一方、隠居の重定は華美な生活を続ける上に、重定の御殿が焼失し2万両の損失に見舞われるなど足を引っ張り続ける。
    (しかしながら鷹山は重定と対立した訳ではない孝行心に篤い鷹山は、重定に出来る限りの事をしようとしているのである。)
     鷹山は35歳の若さで隠居するが、その後も藩主の後見とし重きをなし、その死後、文政9年には11万両の負債を償還し、軍用金として5千両蓄蔵するまでに至ったという。

     改革を進める中で起きた七家騒動は有名である。門閥家老の須田と芋川には切腹の判決が下されるが、先祖代々の家老としての功績から大赦が下されたというのは知らなかった。(騒動の首謀者とみなされた儒者の藁科立沢は斬首に処せられた。)
     また、藩と御用商人の関係が興味深い。藩は御用商人に名字帯刀を許し禄も与えるが、借金を返すことは出来ない。利子も滞ることがある。それでも、なぜ関係が破綻しないのか疑問に思っていたが、著者は、藩の米や特産物を集中的・特権的に買い上げ、あるいは販売に従事するという共生関係に着目している。
     本書を読むことで、鷹山の改革の実態を知ることが出来たのは良かった。

  • 財政再建の偉大な人物ですが、用いる人があってこそ活用されるんですよね。

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著者プロフィール

1930年、山形県大石田町に生まれる。1960年、東北大学大学院文学研究科修士課程修了。現在、山形大学名誉教授。 ※2020年5月現在
【主要編著書】『上杉鷹山』(人物叢書、吉川弘文館、1968年)、『近世河川水運史の研究』(吉川弘文館、1980年)、『山形藩』(シリーズ藩物語、現代書館、2007年)、『明治前期の地域経済と社会』(岩田書院、2015年)

「2020年 『近世最上川水運と西廻航路』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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