- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784642056755
作品紹介・あらすじ
二〇〇七年の教科書検定で大きな波紋を呼んだ「集団自決」問題。生存者の証言・新資料などによる沖縄戦の検証から、その実態と全体像に迫る。「集団自決」の原因を"天皇制国家の支配構造"から解き明かした問題作。
感想・レビュー・書評
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タイトル通り、左派論客による本(集団自決を「強制された」と言っている点において)。
この立場の論客の特徴であろう、膨大な資料や書籍から、実証的に分析している。
特に集団自決が生じた要因について、沖縄という地域性、家父長制など様々な要因から考察している点は興味深い。
沖縄での集団自決について、国または軍の直接的または間接的な強制によりなされたとの論を展開する。
ここでいう直接的とは、軍人が自ら、市民を殺す場合や、軍の命令のもとに、手榴弾を渡して、いざというときはこれで自決せよと強制することをいう。
一方、間接的とは、アメリカ兵に捕まった場合、ひどい殺され方をすると脅し、結果的に退路を断つやり方である。これは、中国における日本軍が現地人に対してした仕打ちを沖縄の人たちに語りきかせ、鬼畜のアメリカ人ならそれ以上のことをやる、という形で脅しがなされたようである。
著者は、このことを「侵略戦争でのアジア民衆に対する加害の経験が、逆に日本人に刃を向けてきたのが「集団自決」であったといえるであろう」といっている。
ここで、ポイントとなるのは、軍の命令の有無で、明確な命令がない場合に(実際はこれがほとんどのようである)、周辺事実からどの程度まで軍の関与を認めるかにある。
右派は文字通り軍の命令があるかないかをメルクマールとするのに対し、著者は、直接の命令がなくとも、実質的にそれと同視しうる状況があれば、軍の関与を認める立場である。
内容は非常に実証的なものではあるものの、完全に左に傾いており、一方からの片面的な意見に終始している点は残念。
もう一方の立場(右派)の見解を実証的に封じ込める部分などがあれば(「援護法と集団自決」のところで多少言及はあるが)、より説得力を増したと思う。