- Amazon.co.jp ・本 (218ページ)
- / ISBN・EAN: 9784642056960
作品紹介・あらすじ
戦前日本、天皇を支えた宮内大臣・内大臣・侍従長ら側近たち。彼らは戦争への道を突き進む激動の昭和にいかなる政治的影響力を持っていたのか。牧野伸顕・木戸幸一ら昭和天皇の側近たちの視点から近代日本の軌跡を描く。
感想・レビュー・書評
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牧野伸顕、湯浅倉平、木戸幸一・・・。天皇を支え続けた忠臣たち。彼らの目から見た昭和史。
戦前日本、天皇を支えた宮内大臣・内大臣・侍従長ら側近たち。彼らは戦争への道を突き進む激動の昭和にいかなる政治的盈虚力を持っていたのか。牧野伸顕・木戸幸一ら昭和天皇の側近たちの視点から近代日本の軌跡を描く。(2010年刊)
・昭和天皇側近たちの歴史認識―プロローグ
・明治憲法体制と天皇側近
・満州事変と側近たちの動揺
・二・二六事件と側近の一新
・日中戦争下の側近と軍部への接近
・アジア太平洋戦争期における天皇側近
・新憲法制定と象徴天皇制―エピローグ
表紙の写真(西園寺公望、牧野伸顕、木戸幸一)が、象徴的である。本書を読んだ後に、表紙を眺めると、時代の流れを感じずにはいられない。
まず、西園寺公望は、最後の元老として、後継首相奏請という重要な責任を担うほか、ときに自分の意見を伝えることにより間接的に影響力を発揮したが、晩年は、自身の高齢化や、木戸が政情報告を怠ったことにより政治的影響力が低下する。
牧野伸顕は、牧野グループを形成し、英米協調にむけて主体的に活動を行うが、重臣批判の高まりや、自身の健康問題などにより、政治的引退を余儀なくされる。
木戸幸一は、近衛文麿と二人三脚により政治をリードし、結果的に戦争への道に突き進む事になる。(ただし、本書の木戸に関する記述は十分とは言えない。)
後世の人間とすれば、昭和天皇がその権力を発揮し、戦争を回避することが出来なかったのかとの見方をしてしまうが、本書を読むと、政治勢力(内閣や枢密院や軍部)の輔弼の元に大権を行使していたことがわかる。(輔弼の無い事項には大権を行使することが出来なかったことを考えると、権威の割には権力がなかったことがわかる)
また、時代を経るにつれ人材が枯渇していくことがわかるのも悲しい。一体どこで道を誤ってしまったのか考えさせられる一冊である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者の最新作「宮中から見る日本近代史」を読後に興味を持ち、著者の前作を手にとってみたのだが、なるほど最新作の方が昭和戦前期の時代をよく理解できる。
基本的な内容はそう変わらないと思うが、新書としてまとめるにあたって時代認識の表現がより洗練されたと思えた。
本書は、昭和天皇の側近たちがどのように行動したのかを歴史として発表しているが、
それがどのような意味を持っていたのかの考察が少ないために、新書版にくらべて時代が理解しにくい。
それにしても、「明治憲法体制」においては、「政府」や「軍部」のそれぞれが独立しており、意見が異なった時にそれを調整するシステムが「天皇」しかない体制であったとは驚きである。
なるほど、それならば天皇を補佐する「宮中」が大きな政治力を持っていたこともうなずける。
著者は「宮中」で活躍した人物として「西園寺公望」「牧野伸顕」「木戸幸一」などを取り上げて研究・考察しているが、最新作の「宮中から見る日本近代史」においては「木戸幸一」をあまり評価していないように思えたが、本書では「戦争終結にいたる最後の過程において木戸の輔弼スタイルがうまく機能したといえる」と評価しているが、これは研究が進んだ結果なのだろうか。
さらなる「宮中」の研究も知りたいと思えた。
本書を読むと、天皇を補佐する「宮中」が、法律によって決められた権限ではなく、個人的能力とか個性によって左右される「明治憲法体制」について、より理解が深まったと思えたが、やはり最新作の「宮中から見る日本近代史」の方が読みやすくわかりやすかった。 -
感想未記入
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一般人が入手しやすい昭和初期宮中の本はなかなか無いので重宝。昭和天皇・牧野と西園寺と木戸の立憲君主制への認識の違いの解説がわかりやすい。
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『昭和戦前期の宮中勢力と政治』の読みやすいバージョン。内容は勿論あちらの方がみっしりしてますが、写真が差し込まれているのが嬉しいところ。