- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784642083263
作品紹介・あらすじ
日本文化は、独特の自然環境によって形成された基層文化の上に、大陸より漢字・仏教・儒教などを受容し、さらにヨーロッパ文化が伝来することで重層的で複雑な構造を持つことになった。神話の時代から現代に至る思想・宗教・文学・芸能など幅広い事象を講義形式で解説。文化史の時代区分に一石を投じ、今後の歴史研究のあり方に問題を提起する。
感想・レビュー・書評
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刺激的な体験だった。日本の諸文化の流れを追ううちに、それらが織りなす時代の流れが現代に繋がっていく。文化史の推移を辿ることで「学問・思想から、文学へ、芸能へ、思想へ、学問へ、という循環を見出す事ができ」るという見方も、この本を読み進めた後では納得できる。
その背景に「建前と本音」の二重構造がある事が様々な葛藤や進歩を生むという事なのだろう。それは悩み苦しむ中で、葛藤を抱えた個人がロゴスの世界から情の世界へと体験を辿り、その流れを辿る中で人がまた新たな生き方を選び次の葛藤に巡り合うという人間の成長ともパラレルな関係にある様に思われる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本文化史の概観をおこなうとともに、文化史研究の方法にまつわる問題提起をわかりやすいことばで説明している本です。
本書は三部構成となっており、第一部では著者の放送大学での授業内容を踏まえつつ、日本文化史の概要を説明しています。第二部では文化史における時代区分の問題について、第三部では文化史における文学作品のあつかいについて、それぞれ問題提起をおこない、「文化史」という学問領域の方法における問題が提起されています。
「あとがき」の叙述から、著者自身が本書の内容に満足していないうかがわれます。本書の叙述は、読者にとって親しみやすい文章になりよう心掛けられているということもあり、たしかに提起された問題に対する十分な検討がおこなわれているとはいいがたいような印象もあります。問題そのものは重要な内容を含んでいるように思われるので、より包括的なかたちでこれらの問題について考察をおこなう論者が出てくることを期待したいところです。 -
文化史と言うと聞き慣れないが、新たな試みであるため、当然である。著者の構想する文化史はまだ過渡期にあり、完成形とは遠いが、思想も文学も芸能も含めて、文化事象の経過を動的に捉えようとしている。従って、各時代の文化的特徴を切り取って並べるというより、文化事象の動きを記述してその躍動を追うことに努めている。それ故、思想史として思想だけを追うでなく、もしくは、文学史として文学作品ばかり焦点化するでなく、文化の出来事を可能な限り考慮に入れて、社会に生じる文化的出来事をリアルに近い形で追跡しようとしている。そうすると、社会の前面で光彩を放つ文化事象ばかり焦点化されるという側面は確かにあるが、それでも既成の学問的な枠組みを超えてより一層マクロに文化を洞察することができ、私は少なからず知的興奮を覚えた。近い将来、日本文化史が科目化することは必定である。
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東2法経図・開架 210.12A/O79n//K