黒沢明音と映像

著者 :
  • 立風書房
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本棚登録 : 17
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (490ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784651700809

作品紹介・あらすじ

どしゃぶりの雨、横なぐりの風、とどろく馬の蹄、炸裂する斬殺音、琴線にふれる風鈴、竹の裂ける音など、繊細かつダイナミックな黒沢映画作品30の魅力と謎と秘密を、映像とせめぎ合うサウンドから解明。

感想・レビュー・書評

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    ── 西村 雄一郎《黒澤 明 ~ 音と映像 19981101 立風書房》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4651700802
     
    …… 新藤 兼人監督との最初の接触は何だったろう?と思い出してい
    たら、拙著《黒澤 明 音と映像》の書評を、監督が《キネマ旬報 199902‥
    上旬号》に書いてくれたことに思い至った。新藤監督は「異常なほどに
    黒澤 明 は音楽に執着した。(略)黒澤映画のすべての音楽に、著者は
    執拗に食いこんでいく。黒澤 明も異常だが著者もそれに劣らない」と
    明晰な頭脳で、この本を分析してくれている。
     
     実は編集部から、「書評を誰に頼もうか?」と聞かれた時、即座に
    「新藤監督がいい」と私は答えた。なぜなら、私が最も繰り返し見て、
    最も影響を受けた新藤作品は《ある映画監督の生涯・溝口 健二の記録
    1975 》だったからである。この映画は、新藤監督が恩師・溝口に関係
    した人々にインタビューし、それを積み重ねて溝口論を展開した傑作だ。
    私は、この映画を見た瞬間、この形式を使って、黒澤論を展開できない
    かと思った。
     
     その実践を《黒澤 明 音と映像》という本で具体化してみたのだ。
    私は終始、映像のシナリオを書くつもりで、この本を書いた。つまり、
    もともとの発想の源を与えてくれた監督の感想を、聞きたかったのだ。
    監督は見事にその狙いを看破してくれた。「この本も、主人公を取り巻
    く証言形式によって、文で対象に迫ってゆく」と記している。
    https://ameblo.jp/kyuzho/entry-11265892590.html 
     
    (20210213)
     

  • 黒澤明がその映画制作において音楽をどのように位置づけてきたのかということを、鈴木静一と服部正、早坂文雄、佐藤勝、武満徹、池辺晋一郎といった作曲家たちとのかかわりを追いかけることで明らかにしている本です。

    著者は早稲田大学の学生時代に黒澤本人やその周辺の人物たちへのインタヴューをおこない、黒澤をテーマにした卒業論文を執筆しました。本書はその論文をもとに、その後の黒澤映画の展開にかんする補足をおこなったものです。

    著者は、黒澤映画を支えた作曲家たちの率直な意見を紹介し、黒澤の手法に対する厳しい批判があったことにも目を向けています。さらに晩年の黒澤映画については、批判的な意見を表明していますが、それにもかかわらず、著者の黒澤に対する敬愛が文章から伝わってきます。

    興味深い視点から黒澤映画の本質にせまる試みといってよいと思います。ただ注意しないといけないのは、著者自身の黒澤そのひとに対する感想が随所に盛り込まれており、論文というよりはエッセイに近いスタイルで書かれていることで、作品そのものへの批評が見えにくくなってしまっているようにも感じられます。

  • 『椿三十郎』の面白さに心打たれ、これにまつわる文献を探していて出会った。読みやすく人を惹きつける文と、よく分析された批評は大変興味をそそる。音に重点をおかずに観ていたので、黒澤映画の音に関してのこの本を読んでから慌てて映画を見直した。
    『椿三十郎』の部分のみ読んだ。

  • 資料番号:010362317
    請求記号:778.2ク

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著者プロフィール

ノンフィクション作家、映画評論家、音楽評論家。1951年佐賀市生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科を卒業後、「キネマ旬報」パリ駐在員。帰国後、映像ディレクターとしてビデオ作品を演出。1985年から古湯映画祭(佐賀市富士町)の総合ディレクターを務め、その功績により「佐賀新聞文化奨励賞」を受賞。現在佐賀大学で教鞭をとる。佐賀新聞のコラム「シネマトーク」は45年目を超え、新聞単独連載の記録を更新中。2010年、モスクワ国際映画祭の「黒澤明シンポジウム」に招待され、日本代表として講演を行った。著作は『黒澤明 音と映像』(立風書房)、『シネマ・ミーツ・クラシック』(音楽之友社)、『映画でクラシック!』『殉愛 原節子と小津安二郎』(共に新潮社)、『巨匠たちの映画術』(キネマ旬報社)、『輝け!キネマ 巨匠と名優はかくして燃えた』(ちくま文庫)、『君は「七人の侍」を見たか?』(ヒカルランド)他多数。

「2023年 『北の前奏曲 早坂文雄と伊福部昭の青春』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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