- Amazon.co.jp ・本 (181ページ)
- / ISBN・EAN: 9784652201015
作品紹介・あらすじ
この結末は、悲劇?それとも、喜劇?-最後の1行に評価が割れた『首飾り』はじめ、フランス自然主義の巨星がのこした屈指の傑作選。
感想・レビュー・書評
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モーパッサンの短編は、随分前に読んだことがあったが、「首飾り」と「ジュール叔父さん」しか覚えていない。
これは子ども向けに翻訳されたシリーズなので、モーパッサンは人生の皮肉と悲哀を描く作家だとは思ったが、子どもが読めるなら紹介したいと思い読んでみた。
確かに翻訳は難しいところはないし、作品も、子どもに理解しやすい設定のものが選ばれている。
オチが鮮やかな「首飾り」は、子どもが読んでも面白いのではないかと思う。
が、いくら昔の外国の話だからって、未婚の母を持つ子どもが学校でいじめられたり、母親も身持ちの悪い女のように言われるというのは、今しか知らない子どもには違和感あるのではないか。(「シモンのパパ」)それに、シモンに親切にする男も、あわよくば母親と懇ろになりたいという下心を持って近づくのであって、子どもへの同情心だけではないあたり、やはり小学校高学年では難しいだろう。
「酒樽」「クロシェット」「穴場」も、子どもは困惑すると思う。「マドモアゼル・ぺルル」もよくわからないだろう。
有名な「首飾り」にしろ「ジュール叔父さん」にしろ、大人が読むと惨めな境遇に陥った人も、当人にとって不幸なことばかりではないと感じる。
「首飾り」の主人公の夫が妻を愛する姿には胸打たれる。マティルドは平凡な小役人の夫に不満で仕方なかったわけだが、あの事件があったから彼がいかに得難い夫であったかに気づけたわけで、それは着飾ってパーティーをするような刹那の喜びと引き換えにできるものではない。
また、その境遇になったのも、もとはといえばマティルドには過剰な虚栄心、ジュールにはお金に対するルーズさがあったからで、そもそも不幸の芽はその人物の中にあったのだ。予想もできないような不幸がふりかかったわけではない。
そこらあたりもきちんと描かれているところが、さすがモーパッサンと思う。が、子どもにはわかるまい。
海外の名作を子どもに読んでほしいと思ったら、やっぱり、O・ヘンリーやヴェルヌ、ケストナーなどのほうがわかりやすいだろう。
しかし、それすら今の子どもに読ませるのは難しいのだけど。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人生って、一寸先はそんなもの
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途中でオチの想像がついたが、人の欲望(深層心理)がわかりやすい物語でした。
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佐藤優氏の本から導かれて読んでみた。 なんとも、救われない話だったけれど、おもしろかった。その後、この哀れなご婦人は何を思ってどのように生きたのだろう
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収録巻末の「ジュール叔父さん」。はて、中学くらいに教科書で読んだのではなかろうか、と思いながら読み始めた。
表題作の「首飾り」は訳者あとがきによると夏目漱石が批判したそうだが、漱石、読みが甘いな、フッ、と思ってしまった。皮肉な結末も、ちゃんと落ち着いて考えれば落とし穴に陥らなかった可能性もあった、という伏線がきちんと張られているのだし、若さという最大の武器が身に着けるものの価値を幻惑させる、ということもあったかもしれない。
で、「ジュール叔父さん」。
完全に忘れてました。が、読み終えるとうっすらよみがえる記憶・・・。
中学生ではわからないけど、大人になったら「そういう親戚おるわ・・・」って思う人は少なくないはず。
一つ一つはすぐに読みきれる掌編だが、なんと人生の機微にとんでいることか。中学生向けに編集された本だが、年齢を経て読み返してみるとまた違った感慨を受けること間違いなし。いやあ、生きるってほろ苦い。ちょっぴり演歌?そうか、モーパッサンは演歌か!そういや、シャンソンはフランス演歌って言いますもんね(なんのこっちゃ)。 -
『サキ』の傑作集を読んだ時、あとがきに紹介されていたので『首飾り』という短編が読みたくて借りてみた。
まあまあ。
サキほどブラックではないし、オチが単純。
レイ・ブラッドベリや、フレデリック・ブラウンのほうが好み。
あとがきに、夏目氏が『首飾り』の批評をしているということが書いてあり、それが面白かった。 -
日常に潜む心情がまざまざと書かれているからこそ、名作と呼ばれ長く読み継がれていく。ハリウッド映画を見終わった後のような爽快感があるわけでもなく、謎解きの達成感があるわけでもない。しかし、読み終わった後に心に残る温かさに正直びっくりした。
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人生は不条理だ。そうだった。