日本の現場:地方紙で読む2016

制作 : 早稲田大学ジャーナリズム研究所 
  • 早稲田大学出版部
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  • Amazon.co.jp ・本 (460ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784657160157

作品紹介・あらすじ

 戦後70年と戦争経験者、憲法と平和、基地問題、東日本大震災と福島原発事故のいま、記憶に新しい「熊本」の衝撃、足元の政治と社会、進む高齢化、差別の実相と人権、子どもと貧困、教育とスポーツ……。「東京発」ではない、「地方発」の記事群が映し出す「日本の現場」。18紙36本の連載記事を収録。

[協力]北海道新聞、河北新報、福島民報、東京新聞、神奈川新聞、新潟日報、信濃毎日新聞、静岡新聞、京都新聞、山陽新聞、中国新聞、愛媛新聞、高知新聞、熊本日日新聞、宮崎日日新聞、南日本新聞、琉球新報、沖縄タイムス

感想・レビュー・書評

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  • 459pという分厚い本である。しかし、案外と読みやすい。デザインは、新聞発表時とほぼ同じ一行14字の4段組で通した。各シリーズの終わりに連載時のキャップが取材後記を書いている。わたしたちは新聞を隅から隅まで精読するだろうか?断じて否だ。わたしたちは記事を選んで、読む。すると、「事実」が目に飛び込んで来る。それが多い新聞がいい新聞だ。記者たちが足で書いた、いろんな人々の生の声が向こうの方から飛び込んでやって来る。そんなことをしているうちに、何時の間にか一冊の興味あるところを読み通していた。

    地方紙の方が、朝日や毎日、ましてや読売や産経よりも鋭い記事が多いことは、戦争法をめぐる報道をチェックする中でも気がついていた。だから、ここには本にもなっている神奈川新聞の「時代の正体」も入っている。当然沖縄タイムスの「誤解だらけの沖縄基地」も入っている。東北ならではの「挽歌の宛先 祈りと震災」(河北新報)、「賠償の底流 東京電力福島第一原発事故」(福島民報)もある。しかしそれだけではない。新潟日報の「がんと向き合う」では、在宅医療の景色を地域の空気が感じられるまで描いているだろう。信濃毎日新聞は「群青の風 若者×社会」で、ラインでクラスの課題をまとめるやり方に一石を投じた。医療の問題、ひとり親問題、戦後70年の問題、地方の疲弊問題、テーマは全国紙でも扱えるが、アプローチは明らかに地方紙の方が読者に寄り添っていることがわかる記事が次々と目に入る。

    良書である。是非とも毎年出して欲しい。

    それにしても、百田尚樹の「誤解だらけの沖縄基地」発言を、ひとつひとつ反論している連載は、本土には1/10も伝わっていなかったとつくづく思う。「普天間飛行場は田んぼのなかにできた(だから県民の犠牲は少なかった)」発言にカチンと来た住民が、当時の集落の様子を再現したジオラマを作ったり、「基地の地主はみんな年収何千万」という百田発言にも丁寧に実際とは大きくかけ離れていることを書いている。「辺野古反対運動は日当制」「反対運動の資金源は中国」というとんでも意見にもきちんと取材して答えている。百田が自らの発言を訂正し、謝ったという事実はまだ聞こえてこない。反対に、ネットの世界で、こんな無責任な「意見」が、まだまだ拡散しているのが現実だ。

    2016年12月26日読了

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著者プロフィール

早稲田大学総合研究機構に承認されたプロジェクト研究所で、前身のジャーナリズム教育研究所を引き継いで、2015年4月に設立。ジャーナリズムに関わる教育・研究・社会貢献を通じて、デモクラシーとジャーナリズムの接続と再接続に貢献することを目的とする。教員の研究所員と外部の協力者の招聘研究員とによって構成される。財源は寄付金、研究員の拠出金、受託研究費。所長は花田達朗。ホームページ:http://www.hanadataz.jp/

「2016年 『日本の現場 地方紙で読む 2016』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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