- Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
- / ISBN・EAN: 9784750315355
作品紹介・あらすじ
シェーンブルン宮殿のような華麗な建築,モーツァルトをはじめとする豊かな文化・芸術が育まれたハプスブルク帝国の首都ウィーン。文化遺産と音楽の都を中心に歴史,自然,国際政治から音楽,文化までオーストリアの魅力を独自性豊かに描き出す。
感想・レビュー・書評
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広瀬佳一とありますが、執筆者は9人です。
1 ハプスブルク帝国からオーストリア共和国へ
2 国際社会のなかのオーストリア
3 暮らしと経済
4 文化と芸術・音楽
1はいつもなら避けて通る「政治の話題」でした。
でもその後に楽しい内容が待っていたので
頑張って読みました。
わかりやすくて面白かったです。
全体に、旅行ガイドブックのようにいいことばかり書かれているわけではなく、少し冷めた目でオーストリアを見ている。
たとえて言えば、日本で、事件のあったあと週刊文春あたりであらためてかかれるみたいな。
ただ、本当に面白くて、今回は暇さえあれば読んでしまいました。
その中で忘れたくないので、これだけは書いておきます。
第29章 オーストリアの技術と日本の産業ー新幹線の守護神はオーストリア製保線車(引用します)
日本の新幹線は昭和39年運転開始以来、技術的欠陥による人身事故を一度も引き起こさずに走り続けているが、その軌道や架線を監視する保線車のほとんどがオーストリア製である。(中略)このオーストリアの保線車こそ、乗客がいなくなった真夜中にこっそりと、翌日の乗客の安全を守るために線路をみてまわる、まさに日本の鉄道の守護神ともいえる存在である。
もうひとつ。
第50章からも引用
オーストリア国民が「開かれた、革新的な方向を求める気概に富んでいるか」あるいは「閉鎖的・排他的で、保守的か」と問えば。返ってくる答えは後者だろう。(中略)
「閉鎖的かつ排他的」とは否定的語感の単語だが、芸術にとっては役立つ場合もある。ヨーロッパという地続きの大陸の上にスペイン系、フランス系、イタリア系、ドイツ系、スラヴ系…とさまざまな文化が共存共栄し、お互い刺激しあいながらも決して融合することなく個性を保ち続けてきた史実の背景は、閉鎖的かつ排他的な気概なしには考えられない。島国で、好むと好まざるとにかかわらず海洋が異文化の防波堤になってきた日本とは、状況が根本的に異なるのだ。
だからこそハプスブルク王朝という強大な勢力の庇護のもと、今日われわれが「ウィーン古典派」と呼びならわしている音楽が、独自の体系を発展させることができたのだ。
聴衆ー古くは宮廷の貴族、後には善良な市民たちーはおいそれと新しいものには飛びつかず、理解の許容度を少しでも超えるものには本能的に拒否反応を起こし、そっぽを向く。しかし彼らが時間とともに新しい意匠を受け入れざるをえないのは、いつの世もかわらない。斬新な響きの音楽、新しい描写技法による絵画、想像もしなかったデザインの建造物…。こうして時代は流れ、変貌をとげていく。詳細をみるコメント0件をすべて表示