ポルノグラフィと性暴力: 新たな法規制を求めて (福島大学叢書新シリーズ 5)
- 明石書店 (2007年4月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
- / ISBN・EAN: 9784750325248
作品紹介・あらすじ
インターネットの普及に伴ってますます増殖し,通常のメディアでも一般化が進むポルノグラフィ。「表現の自由」が叫ばれる裏側で多発する,ポルノグラフィが直接的・間接的に引き起こす性被害をいかに法的に救済するのか。アメリカとカナダの事例から考察。
感想・レビュー・書評
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暴力ポルノは、実際の暴力行為をそのまま撮影する劣悪なものであるという問題提起と、その暴力ポルノを使ってする自慰行為は、暴力ポルノに内包されている女性蔑視の価値観を行為によって受け入れることになり、それゆえにポルノは法規制されるべきという問題提起を行っていた。
ポルノグラフィを、女性を従属的なものとして描く性描写とする独自の定義を用いていて、ちょっと混乱した。
労働環境の問題と、自慰行為によって、その労働環境が成立する基となっている価値観に染まってしまうというところを一直線に結んでいたが、なぜそうなるのか説明不足のように思う。要するに、よくわからなかった。
さらに、こんな害悪を放っておいていいはずがないから法規制だと突き進んでいくに及んで、完全に置いてきぼりだった。
悲惨な撮影現場については憤りを感じるが、例えば、徹夜続きの劣悪な環境で描かれたマンガで自慰行為をしたら、劣悪な労働環境も是とする価値観を植えつけられるのかといったら、そういうことはないと思う。
著者の論旨からすると、「ポルノグラフィ」は女性蔑視のための巧妙で無意識的なプロパガンダだ(意訳)というところに主眼があるようだから、撮影現場の話は論を混乱させただけだったように思う。
男尊女卑がどの程度是正されたかについては、いろいろな見解があると思うが、多少は是正されて、男も女もあり方が変わりつつあるという認識はあまり異存が出ないのではないかと思われる。女性も性の消費者になっている中にあって、著者の見解は最近の状況を反映しているとは言いがたく、やや時代遅れの感があった。詳細をみるコメント0件をすべて表示