ポルノグラフィと性暴力: 新たな法規制を求めて (福島大学叢書新シリーズ 5)

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  • Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750325248

作品紹介・あらすじ

インターネットの普及に伴ってますます増殖し,通常のメディアでも一般化が進むポルノグラフィ。「表現の自由」が叫ばれる裏側で多発する,ポルノグラフィが直接的・間接的に引き起こす性被害をいかに法的に救済するのか。アメリカとカナダの事例から考察。

感想・レビュー・書評

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  • 暴力ポルノは、実際の暴力行為をそのまま撮影する劣悪なものであるという問題提起と、その暴力ポルノを使ってする自慰行為は、暴力ポルノに内包されている女性蔑視の価値観を行為によって受け入れることになり、それゆえにポルノは法規制されるべきという問題提起を行っていた。

    ポルノグラフィを、女性を従属的なものとして描く性描写とする独自の定義を用いていて、ちょっと混乱した。

    労働環境の問題と、自慰行為によって、その労働環境が成立する基となっている価値観に染まってしまうというところを一直線に結んでいたが、なぜそうなるのか説明不足のように思う。要するに、よくわからなかった。

    さらに、こんな害悪を放っておいていいはずがないから法規制だと突き進んでいくに及んで、完全に置いてきぼりだった。

    悲惨な撮影現場については憤りを感じるが、例えば、徹夜続きの劣悪な環境で描かれたマンガで自慰行為をしたら、劣悪な労働環境も是とする価値観を植えつけられるのかといったら、そういうことはないと思う。

    著者の論旨からすると、「ポルノグラフィ」は女性蔑視のための巧妙で無意識的なプロパガンダだ(意訳)というところに主眼があるようだから、撮影現場の話は論を混乱させただけだったように思う。

    男尊女卑がどの程度是正されたかについては、いろいろな見解があると思うが、多少は是正されて、男も女もあり方が変わりつつあるという認識はあまり異存が出ないのではないかと思われる。女性も性の消費者になっている中にあって、著者の見解は最近の状況を反映しているとは言いがたく、やや時代遅れの感があった。

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著者プロフィール

1966年、福岡市生まれ。現在、徳島大学総合科学部准教授。専門は憲法、ジェンダー法学。名古屋大学大学院法学研究科および米国ミネソタ大学ロースクールLL.M.修了。1999年~2012年、福島大学行政政策学類准教授。著書に、『クローズアップ憲法 第2版』(小沢隆一編、法律文化社)、『ポルノグラフィと性暴力─新たな法規制を求めて』(明石書店)、『憲法24条+9条─なぜ男女平等がねらわれるのか』(かもがわ出版)など。ポルノグラフィ、売買春を人権と両性平等の観点から批判的に研究する「ポルノ・買春問題研究会」("www.app-jp.org")、市民の非暴力行動によって国際紛争の予防・解決をめざす国際NGOの日本グループ「非暴力平和隊・日本」などの会員。

「2012年 『鎌仲監督 vs. 福島大学1年生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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