世界の教育改革4 OECD教育政策分析 −「非大学型」高等教育、教育とICT、学校教育と生涯学習、租税政策と生涯学習

制作 : OECD  経済協力開発機構 
  • 明石書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750334875

作品紹介・あらすじ

すべての人々に質の高い生涯学習の機会を提供するにはどうすればよいのか? OECD諸国における実証資料やケーススタディをもとに、高等教育の新たな形態、有効なICT活用、学校教育の役割、租税政策による学習支援などについての現状と課題を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 世界は学校教育と生涯学習をどのような視点で見ているのか知りたくて読んでみた。

    ーー
    第3章 学校教育はどの程度生涯学習に寄与しているのか?

    P129
    生涯学習は、生涯を通じての学習の期間を延長するだけでなく。学校教育が生涯にわたる学習を若い人たちに準備するのを確立するためにも重要である。現在のようにほとんどの人々が後期中等教育に就学している状況でも、その多くは学校を卒業する辞典で生涯にわたって必要とされる十分な能力を身につけるには至っていない。
    教育制度にとって必要とされることは、学校教育によって向上する認知能力や動機づけの広範な成果について、これまで以上に重点をおくことである。そうすることで、学校教育は変貌を遂げてゆくだろう。そこでは、学校の教職員自身が生涯学習の実践者となり、学校が生徒中心の効果的な学習文化を創造する革新的な組織になるだろう。

    P132
    学校教育が、どの程度生涯学習を促進しているのかを評価するための枠組みは、次の3つのレベルで構成することができる。個々の学習者のレベル、学校とその組織および教育実践のレベル、そして学校および教育制度のレベルである。

    ・学習者としての生徒
    このレベルでは、この枠組みに対して2つの主要な疑問が起こる。各々の学校組織の役割は、「学び方を学ぶ」を含めた、生涯を通して積極的な額数を継続sることを支える「能力(コンピテンス)」をどの程度高めることができるのか。そして、学校教育の経験が、若者の継続学習をどの程度「動機づけ」ているのかにある。どの程度生徒たちに学習を持続させる準備ができているかについては、若者たちの認知的および非認知的な能力の発達の度合いを見ることで評価することができる。しかしながら、。こうした認知能力の発達については、学校だけが単独で責任を持つものではない。本省では、こうした問題の対処について、PISA調査結果をもとに描き出す。

    ・学校とその組織および教育実践
    このレベルでは、カギとなる問題は次のようなことである。つまり、生徒たちが柔軟な学習者になることを可能にするモデルがどの程度学校に適応してきたのかという問題、そして生徒たちに明確に多様なカリキュラムと評価方法を対応するモデルがどの程度機能してきたのかという問題である。そして、教員たちがこれらのモデルの推進をどの程度整備してきたのかという問題である、学習の展開についてのこの種の問題に対応するために、本章では、どのように授業や知識とその評価が体系づけられているのかについて、いくつかのOECDの研究成果にもとづいて論述する。

    第3節 学習者としての生徒:生涯学習に向けた能力の開発を

    ※リテラシーと動機付けと学校への帰属意識、キーコンピテンシーが載っている。

    「生涯学習の基本概念のもう1つの側面として、その開放性が挙げられる。これは、いくつかの曖昧な面はあるが、額数の中身についての側面であり、認知的および非認知的な学習と関係するものである。生涯学習の推進にとっては、固有の学校カリキュラムでは定義できない内容に重点をおくことが必要である。カリキュラムがどのように生涯学習を支援すべきかを考慮するための効果的な出発点は、DeSeCo(Definision and Selection of Competences)プロジェクトによって見出されたキー・コンDeピテンシーという概念である」

    「DeSeCoプロジェクトは、3つの領域において基本となるコンピテンシーを定義した。第一の領域におけるコンピテンシーは、自立的に活動する能力である。そして、この能力は2つの中核的な概念を統合する。すなわち、個人のアイデンティティの成長、そして意思決定と選択の中で自立性を働かせることである。これらの能力は、自己概念を持つこと、権利を行使すること、生涯のさまざまな場面において責任をとること、に力を与えるものである。さらに将来の目的に順応し、周囲の環境を自覚し、理解することを人々に求めている」

    「詳細については、BOX3.3に列挙している。

    BOX3.3自律的行為のためのキー・コンピテンシー
    ・自らの権利、利益、限界、必要性を擁護し主張する能力。この能力は、しみにゃ家族、労働者、消費者として、将来を自分自身の力で作り上げ、選択する力を人々に与える。
    ・生涯にわたる計画や個人的な取り組みを形作り実行する能力。この能力が容易にするのは、人々に自分の人生に意味を持たせ、それと自分自身の資質を一致させるという目標を定め、それらの目標を達成することである。
    ・大きな展望の中で活動する能力。この能力が人々に求めるのは、より広範な文脈の中で自分自身の行為が果たす役割を理解することであり、そしてこうした行為がmこたらしうる行動の結果を知ることである」

    「DeSeCoによって定義された第二の領域におけるコンピテンシーは、相互作用的に手段(ツール)を活用する能力である」

    「DeSeCoによって定義された第三の領域におけるコンピテンシーは、社会的に異質な集団の中で機能を果たすものである。周囲に相互依存していることや他社との関係を得ることについて、人々は異なる個性と環境の中でそれらを相互に影響させる必要がある。この場合のDeSeCoの特有な定義は、他者と関係し、協力し、摩擦を管理し解説する場面で発揮される能力に関係している」

    「このようなコンピテンシーの分野は、学習計画やカリキュラムとしていまだ提案されておらず、また多くは公教育とノンフォーマル学習を融合した広範囲なプロセスで身につけられるべきものである。このような能力に関する明確な定義は、次のような議論を活性化する同定におけるガイドラインを設定することに役立つ。「これらのキー・コンピテンシーは、私たちの学校を通じて直接的あるいは間接的にどれほど促進されるものか?」

    第5章 学校組織とナレッジマネジメント

    一般に、学校では教員間において、その連携と知識の共有化に脆弱な状況がある。教育的な研究会は巣い費用を費やすことは非常に低く、またその効果はかなり制限されている。教員が日常職務の中で使う専門的知識の大部分は暗黙的なものであり、それは明示的なものになったり、同僚と共有されることがめったにないものである。学校と学級は通常連結したものではなく、むしろそれぞれから独立したものである。いうなれば、知識の在り方を学ぶことが学校にとっての明確な使命であるにもかかわらず、学校ではいまだに基礎的なナレッジマネジメントの実践しかなされていない傾向がある」

    P150

    「生徒に対する形成的評価の徹底的な活用は、決定的なものであり、また教授方法そのものを形作り、専門的技術をより明確にすることを求められる分野である」

    「Black and Wiliam (1998, p61)は「達成状況から得られるものは実際には相当数ありうる‥、そして教育的是正措置としては、これまでに報告細大のもの」と主張する。このようなアプローチは、標準値を押し上げることを確実にするだけでなく、公正性に真摯に取り組むものである。そして、教員が教授と学習戦略の個別化を通じて継続的な学習証明を実施することにより、苦境に陥っている生徒に対する個別の応答性を往生させることになる」

    Black, P and D. William (1998), Inside the Black Box; Raising Standards through Classroom Asessment, School of Education, King's college, London, and Phi Dleta Kappan, Vol.80 (2), pp.139-148

    現在、形成的評価を通して、学習「ニーズ」を識別し、効果的なガイダンスと情報提供サービスを通して学習「ルート」を綿密に計画し、検討することが重視されている。これは初期教育段階からその後を通して、時には個々人の複雑な学習方針に対応し、継続学習をおこなううえで、ますます重視されている」

    「OECD諸国の政府が歓迎していることは、生涯学習と学校教育を段階的に統合していくアプローチとして、生涯学習のための指針を学校教育とは別に位置づけるよりも学校教育のカリキュラムの中に徐々に組み込んでいくことである」しかし、OECDによる分析結果は、生涯学習の指針をより明白につなぐ、より広範なアプローチが必要であることを示唆している。つまり、「少なくとも、キャリアガイダンスサービスは、生涯における選択肢やその範囲について『判断』する際に大いに役立つだけでなく、多様なキャリアマネジメント『スキル』の開発に至るまで幅広く必要とされるものである」(OECD, 2003c, p25)

    OECD(2003c)「世界の教育改革3 OECD教育政策分析:特別支援教育、キャリア・ガイダンス、高等教育ガバナンス、成人生涯学習への投資」OECD編著、御園生純、稲川英嗣監訳、一木玲子、大塚裕介、高橋聡訳、明石書店、2009年)

    P159
    「キャリアガイダンスが複雑な学習方法を通して生徒の発達を向上させる可能性がある一方で、学校領域はいまだ全体として調査や研究開発に関する活動や支出に消極的であり、ネットワークを構築し教員間で知識を共有することが少なく、より良い教授と学習に役立つICTの潜在的イな可能性を十分に発揮していないという特徴が存在する」

    P161
    「形成的評価は、特別な出来事よりもむしろ日常のありふれた指導の継続的部分である生徒の成長の評価に注目するものである」

  • 高等教育機関への門戸を開き、多様かつ適切な形態を提供するために、「非大学型」高等教育機関が果たす役割。各国がどのようにしたら教育分野でのICT投資から教育上の見返りを得ることができるのか。生涯学習が学校に提起する課題。租税政策はどのようにしたら生涯学習を支援することができるのか。以上にかかわる政策課題と国際動向の現状を分析している。巻末にOECD諸国における注目すべき教育改革の概要も記されている。

    買った動機は、
    ・第2章 教育へのICT投資から得られるものは何か?
    ・第4章 生涯学習のための租税政策の役割
    ・付録 近年開発された教育政策
    であった。

    全般的にデータが古いために、近年著しい各国の教育の情報化に関する取り組みとはタイムラグがある。しかしながら課題や改革の方向性は現在でも参考になる諸点があった。

    また、”第1章「非大学型」高等教育機関の課題と役割” で述べられている論点から「大学」のあるべき役割も見えてくる。大学視点で検討するだけでなく、違う視点・役割から大学を考える示唆を得ることができた。

    残念であったのは、”付録:近年開発された教育政策”で示された教育政策の文化的、歴史的背景に関する記述がなかったことである。
    付録だから仕方ないが、その記述がなされていると、さらに政策の意図の理解につながったと考える。

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著者プロフィール

岩手県立大学准教授

「2009年 『世界の教育改革3 OECD教育政策分析』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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