ケースで学ぶ 司法犯罪心理学――発達・福祉・コミュニティの視点から

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  • 明石書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750350097

作品紹介・あらすじ

犯罪・非行の加害者・被害者の心理や少年法・刑法等の法的手続きの理解から心理的支援までを概説。特に、発達障害や虐待的環境等に起因する少年非行や刑事事件をはじめ、家事・民事分野における離婚、面会交流、養育費、親権等についてもケーススタディで取り上げ、より実証的な思考と理解を目指した一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 筆者は元家裁調査官で、事件の背景をひもとき支援に活かすという視点が貫かれている。
    実際の事件をもとに、その背景にどんな事情があったのか、どんな心理状態だったのか等を分析されているのがとても分かりやすい。ASDが背景にある触法事件の見方はとても参考になる。

  • 自分の興味関心に近く、とても面白かったです。
    実際のケース・架空のケースを題材に、「どうしていたらよかったんだろう」を考える。
    生活費に困窮して…という事件は、より「こういう援助があれば防げた事件だったのに」と悔しいし、他方、実験確認型AHDの薬物投与殺害事件などは、どうしていたらよかったんだろう…手厚いケアだけで防げたのだろうか、と暗い気持ちになる。

    「電子監視は、9割は電子監視をしてもしなくても再犯しない、6%は電子監視をしてもしなくても再犯する、4%に電子監視による防止効果がある」との2018年犯罪心理学会シンポジウムでの甘利教授の報告が紹介されていて目をひいた。根拠はよくわからなかったが、他の研究を少し調べてみると電子監視にはたしかに犯罪抑止効果が認められないようである。(http://www.moj.go.jp/content/000098494.pdf
    フランスでは、非監護親から支払われる養育費が月104ユーロ(1万2千円)以下であれば、国が立て替え払いをし、国が非監護親や勤務先に督促する仕組みがあり、明石市でも2019年度より開始していること、品川区の社会福祉協議会が、市民後見人の先駆的取り組みをしていること(品川成年後見センターを設立し、区内20か所の地域包括支援センターや300人の民生委員を通じて、身寄りがなく判断能力が不十分な人を見つけて月2回のケース会議で後見申立てにつなげているとのこと)、ロールシャッハテストは科学的根拠が乏しく、信頼性と妥当性が確認できない以上、法廷などの司法場面で利用すべきでない、とアメリカではほぼ決着がついていることなど、勉強になったところが少なくなかった。

  • 東2法経図・6F開架:326.34A/Ku33k//K

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著者プロフィール

1970年生,立教大学文学部教育学科卒業後,家庭裁判所調査官として,札幌,いわき,東京,川越,横須賀で計19年勤務。その間,社会人大学院生として筑波大学大学院教育研究科リハビリテーションコース修了(修士:リハビリテーション),筑波大学大学院人間総合科学研究科生涯発達科学専攻修了(博士:リハビリテーション科学)。2010年日本LD学会研究奨励賞。
2013年4月より立教大学コミュニティ福祉学部助教,2018年4月より和光大学現代人間学部心理教育学科教授。専門は司法犯罪心理学,発達障害学。特別支援教育士スーパーヴァイザー,公認心理師。
【主な著書】
『発達障害を有する触法事例の心理・発達アセスメント』(単著,明石書店,2015),『長所活用型指導で子どもが変わる・part5――KABC-Ⅱを活用した社会生活の支援』(編著,藤田和弘監修,熊谷恵子,熊上崇,小林玄編著,2016,図書文化),『発達障害者の理解と支援』(分担執筆,梅永雄二編著,福村出版,2010),『日本版KABC-Ⅱによる解釈の進め方と実践事例』(分担執筆,藤田和弘ほか編,丸善出版,2017),「面会交流と共同親権」(熊上崇、岡村晴美編著、明石書店、2023),「心理検査のフィードバック」(熊上崇、星井純子、熊上藤子編著、図書文化、2022)など。

【主な論文】
「広汎性発達障害を持つ非行事例の特徴」『精神神経学雑誌』108(4),327-336,2006.
「広汎性発達障害を有する非行事例の頻度と特徴」『LD研究』18(2),138-146,2008.
「広汎性発達障害を有する触法事例の文献的研究」『児童青年精神医学とその近接領域』第49(1),25-34,2009.
「LD,ADHDの傾向を有する非行事例の頻度と特徴」『LD研究』18(3),274-283,2009.
「アスペルガー障害を有する触法少年の司法場面における行動特徴」『児童青年精神医学とその近接領域』50(1),16-27,2009.
「学習障害(LD)を有する少年非行に関する研究動向――日本と米国における,知能検査・学習習得度・転帰・介入の調査結果を中心に」『LD研究』20(2),218-229,2011.
「発達障害者と司法上の支援」単著,『リハビリテーション研究』,139,26-31,2009.
「発達障害(特に自閉症スペクトラム)を有する触法事例の現状と課題」『リハビリテーション連携科学』15(2),12-20,2014.
「子どもへの心理検査の結果のフィードバック――実務者への質問紙調査の分析と「学習アドバイスシート」の作成」『K-ABCアセスメント研究』,18,79-88,2016.
「矯正施設から退所した障害を持つ人への地域生活定着支援」『立教大学コミュニティ福祉研究所紀要』,4,19-36,2017.
「心理検査の検査者は子どもにどのようにフィードバック面接をしているか――知能・発達検査の検査者への調査と「子どもへのフィードバック面接手順リスト」の作成」『KABC アセスメント研究』,20,27-39,2018.
「保護者は知能・発達検査の結果をどのように受けとめているか――親の会へのインタビュー調査の分析」『KABCアセスメント研究』,21,25-34,2019.
「面会交流に関する子どもの心理と、子の意見表明に関する研究」『子どもアドボカシー研究,1,60-74,2023.
ほか多数。

「2023年 『ケースで学ぶ 司法犯罪心理学【第2版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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