ホワイト・フェミニズムを解体する――インターセクショナル・フェミニズムによる対抗史

  • 明石書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750354835

作品紹介・あらすじ

中流以上の白人女性を主たる対象としたホワイト・フェミニズムの陰で、有色人種やトランスジェンダーなどのインターセクショナル・フェミニストが既存の社会構造に連帯して立ち向かうことを提唱してきた。本書では、両者の議論を取り上げてフェミニズムの思想史を捉え直す。

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    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/569410

  • 本書はホワイトフェミニズムの深刻な問題点を批判・解体するために、そのカウンターヒストリーであったインターセクショナルフェミニズムの歴史を追うものである。邦題、表装、前書きの印象から、「煽動的でヒステリックな極左ラディカリズム啓発本」を警戒する読者がいるかもしれないが、内容はとても上手く書かれた人権運動の歴史ヒストリーである。
    原題『迷惑な白人女:フェミニズム対抗史』

    ホワイトフェミニズムという批判は、平等や人権という概念が抱えた自己矛盾問題への強烈な反撃である。要約すると、「シスジェンダーの異性愛者の先進国のキリスト教徒の白人女性」が、自分自身の個人的地位や権力取得を目指すことを最優先の(あるいは唯一の)目的とすることを指す。そのためには「普通の性癖」「先進国の市民」「敬虔なキリスト教徒」「優越人種としての白人」というものを批判なく利用する。それは、社会に存在する「その他の不平等(人種差別など)」に目を瞑るか、無視するか、場合によっては利用するかして、「その他」の生活を脅かす行為になっている。また、ホワイトフェミニズムは自身の存在意義を自ら脅かしている行為でもある。著者はホワイトフェミニズムを改善するのではなく、解体すべきだと訴える。
    そのヒントは、過去におけるフェミニズム運動のカウンターヒストリーにあると言う。そこで取り上げられるのが「インターセクショナルフェミニズム(インターセクショナリズム)」だ。要約すると、交差する複数の差別、偏見とされる。例えば60年代に「黒人女性労働者」である者が受けた境遇。彼女はGMて働こうと思ったが、「生産工場で黒人は働けるが、男性のみ」「事務員で女性は働けるが、白人のみ」という募集要綱なので雇用されなかった。このような複数のセクショナリティーに囚われた人の境遇は無視される。無視されるどころか、ホワイトフェミニズム(白人女性の地位向上と権力取得のみを目指す、あるいは最優先にする活動)により利用され、搾取される構造だと言うのだ。要するにホワイトフェミニズムは、全人類の平等や、一部の人間の権力独占に対抗しているのではなく、身勝手にも白人女性、またはフェミニズム活動家個人の独占的権力取得を目的としている。そのために反人種差別運動や格差是正運動を無視するどころか利用し、搾取して踏みにじっているのだと。その理由はホワイトフェミニズム以外の人権活動に目を向けている態度こそが、戦略的に自らの道徳性を証明することになるためなのと、他の人権活動が拡大すると彼女たちの権力取得を脅かすと考えるからだ。そしてこの場合、一番被害に遭うのは有色人種の女性なのだ。
    この現実を歴史と理論によって告発するというのが本書の衝撃性である。
    本書を通して、「過剰なポリコレ」として揶揄される現在の反差別運動の歴史的背景解決と構造が見えてくる。つまり、現在の運動を狂騒的で異常な「深刻な合併症」と捉えるのではなく、「治療過程でほぼ起こる副反応」と捉えることもできる。現在の問題を解決するヒントがここにあるのかもしれない。

    今やフェミニズムは白人の保守主義者の活動の一つにもなっている。
    イヴァンカ・トランプは「私の父はフェミニスト」だと発言した。
    今やフェミニズムは#Metoo運動の活動家だけでなく、白人至上主義者の口にものぼるものに成り下がった12

    ホワイトフェミニズムは終始一貫して、社会のもっとも周縁にいる人々を「さらに疎外」することで白人女性により多くの権利と機会を勝ち取らせる。
    ホワイトフェミニズムは「解放を装った盗っ人」なのだ23

    《第一章 エリザベス・ケイティ・スタントンとフランシス・E・W・ハーパー》
    ハーパーは、特権の獲得よりも、「洗練された白人であるという地位」の解体を目指した52

    スタントンは、参政権の無い白人女性は、黒人男性の参政権が認められると、自分たちの参政権獲得が遠退くと考えていた。そこで黒人参政権獲得の法律に反対した。白人女性は神がくださった「天からの雫」であるので、このものたちの地位か向上することにより全世界の文明は向上し、そのことでいずれ人種問題も彼女らによって解決されると、白人女性の生まれながらに備わった才能を主張した(選民思想)62

    《第二章 ハリエット・ビーチャー・ストウとハリエット・ジェイコブズ》
    ジェイコブズには奴隷にされる予定の二人の子どもがいた。父親は白人で、このような例は多い。これは19世紀に奴隷交易が禁止になった後、白人の奴隷所有者が「財産(奴隷)の目減り」を防ぐための「自らの種付けによる畜産経営」の結果。

    『アンクル・トムの小屋』の代表作を持つストウの文学は、あらゆる人間の中で「白人女性に特別に備わった感情の繊細さと、同情する力」が世界を良くする、という思想を生み出した。この選民思想は人種差別問題を世間に知らしめた功績があったが、結果的に人種差別問題そのものではなく「特別な力と優位性を持つ白人女性」というものを中心理論化した。79

    『アンクル・トムの小屋』では「子供のような黒人を啓蒙し、導くのは白人女性しかいない」ということが強調されている。黒人の人格や思考、心情については描写されていない(子供と同じ未熟な存在)。
    そして『アンクル・トムの小屋』に登場する典型的白人女性は子ども(5~6歳)だ。この子は黒人に「あなたの代わりに私が死ぬ」と言ったり、「怠けてないでキリスト教を信じなさい」と言ったりする。ここには「白人女性は生まれながらにして(5~6歳にして)神のような特別な人格と優位性を備えている」という設定が現れている85

    ストウは『アンクル・トムの小屋』の大ヒットで英国に呼ばれ、多大な称賛と莫大な富を手に入れる(富は私物化した)。この直前、ジェイコブズはストウに手紙を送り、自らの体験告白の聞き取りと、自分の娘の英国への帯同を何度も嘆願した。奴隷解放運動のためにはそれが一番効果的と考えたから。しかしその要望はすべて無視された。ストウの英国での成功を知ったジェイコブズは「黒人種では英国人に受け入れられないし、そもそもこのムーブメント(人種差別反対)の栄冠を得るのは自分自身だ、とストウは考えている」と分析した99

    ジェイコブズはとうとう、ストウなど他人に頼らず自らの筆で自身の境遇を書き始めた。そのことは自分を自由解放してくれた当時の白人主人の妻にも知らせなかった。ジェイコブズは、白人女性との連携は進めつつ、白人女性たちが主張するアナロジー〈白人女性の体験(白人間での性差別)と奴隷の置かれている状態との同一視〉を拒否した102

    『アンクル・トムの小屋』などの白人女性による黒人奴隷物語がヒットした背景には、読み手の白人たちが「拷問ポルノ」を求めていたから。白人たちは悲惨な黒人奴隷の虐待描写を「エロティックな同情の対象」として消費していた。これはフロイトなども指摘している。
    しかしジェイコブズはこのような白人読者が登場人物の苦しむ姿を期待する箇所で、あえて黒人女性に主体的に語らせた。これは白人女性たちが描いた「ときにはやんちゃだが優しく情愛が深い無防備な子どもたち」という黒人主人公像を、知性を兼ね備え、戦略的で自己決定の手段を持つ主人公に変えた。意図的に。102

    ジェイコブズの初自著『ある奴隷少女に起こった出来事』は、当時の様々な要因で何度も出版延期の憂き目にあう(白人女性作家の推薦文が必要など。これをストウに頼んだこともあったが拒否された)。結局、ジェイコブズはなんと出版社から銅板を買取り自費出版した。しかし、この黒人奴隷女性が史上初めて自作した本は、当時それほど注目されなかった。一世紀後、再評価が高まると、今度はこの本に推薦文を書いた白人女性がゴーストライトしたものだと解釈されてしまう。研究者の分析で、この本が本当にジェイコブズが書いた(出版もした)と証明された時は、なんと1980年代なかばになっていた108

    ストウはフロリダの元プランテーションに移り住んでオレンジ栽培を営んだ。ストウは、黒人男性を「フロリダの屋外ような灼熱の場所で肉体労働する」力を生まれながらに持った者たちと解釈していた。そのためそこで、このような労働に従事する元奴隷の黒人を育成するのが自分の使命だ、と考え実行した。黒人たちはストウのオレンジ果樹園で働き、その莫大な利益はストウのものになった116

    《第三章 アリス・フレッチャーとジトカラ・サ》
    ジトカラ・サは8歳の時インディアン居留地から離れ、白人同化のための矯正施設に入った121

    フレッチャーは自身のフェミニズムのはけ口として、慈善活動と教育的公演の団体を立ち上げた122

    フレッチャーは「インディアン改革」なる活動を始めた。黒人同様に「インディアンは子どものような存在」と認識し、文明化を進める「入植者フェミニズム」である。インディアンにはびこる悪しき風習を破壊するため、インディアンの子どもを親と部族から切り離し生活させる124

    インディアン社会の女性は、当時の白人社会における女性に比較するとはるかに地位が保証されていた。当時の白人女性の地位を聞かされた先住民女性は「白人女性でなくてよかった!」とフレッチャーに言ったほどである。
    しかしフレッチャーは白人女性の権利獲得のため、これらのインディアン女性の地位が凋落することになるインディアン社会の構造破壊を実行した150

    フレッチャーは、自分が先住民の母親のような権限があると考えており、同志の中には「彼女はオハマ族を自分の子と-いや赤ん坊と-呼びそうな不快きわまる感傷的な状態に陥っていた」と不満を盛らす者もいた151

    フレッチャーによって行われた全寮制学校などの先住民子女分離政策は、先住民の生活文化の大いなる破壊をもたらしたが、この政策による予期せぬ可能性ももたらした。学校に集められたインディアン子女は、まったく異なる地域出身の先住民同士だったので、ここから「部族間ネットワーク」が生まれた。これを政治力に変えたのがジトカラ・サだった158

    《第四章 マーガレット・サンガーとドクター・ドロシー・フェレビー》
    サンガーは貧民街での看護師経験から、社会不適格者(精神障害者、身体障害者、虚弱者、病人、クィア、アルコール依存者、犯罪者、慢性的な貧弱。合衆国人口の四分の一としている)の野放しの生殖規制を推し進めた産児制限活動家(優生学思想家)169

    フェレビーは黒人の貧困家庭の問題を、レイシズムを含む多様な社会状況の改善させた医師。特に健康についての対策を行った。ただし彼女も優生学を利用した172

    《第5章 パウリ・マレーとベティ・フリーダン》
    マレーは公民権活動家の弁護士。60年代、記者クラブ制度に存在したミソジニーを告発して、数々の権利獲得をした。黒人が座ってはいけないバスの席に陣取り投獄されるという、あの有名なバスアクションを初めて行った人物
    フリーダンは心理学者。家庭における女性の地位を告発する有名な本を書いて、「ウーマンリブを生み出した」人とされているが、その行動は先行したマレーの運動の後を追うものだった。フリーダンはそれを認めなかった。

    白人女性は、最も優秀で「繁栄に値する存在」である白人男性を産む存在であり、慈悲と同情という崇高な道徳性においては白人男性をも凌ぐ存在である。
    いっぽう有色人種女性は、「不適格者」を産む危険なブリーダーであり、せいぜい出来ることは「適格者」の家族に仕えることだけである219

    ジム・クロウ法は黒人差別を合法とした悪しき法律なので、
    「ジム・クロウ」=法律による人種差別
    「ジェーン・クロウ」=法律による性差別
    という比喩で使われる224

    フリーダンは「最も女性にアイデンティティークライシスを起こさせるのは家事」という理論を作った。これを止めるために家事を労働者階級にやらせることを勧めた。しかし家事代行業の担い手は、ほぼ女性であり、多くが有色人種だった。そして彼女らの立場と存在は無視された。230

    マレーは成績優秀で学位を取得し弁護士になった。しかし数々の歴史的活動により、彼女に弁護士の案件を依頼するものはなく、生活のためにタイプ打ちの副業をした。そしてフリーダンの原稿も幾度となくタイプ打ちした232

    マレーとフリーダンは女性解放運動組織NOWを作った。しばらくして「女性の解放のみ」に特化するフリーダンとの思想の違いから、マレーは脱退する。その後、「レズビアンの運動家」は女性解放に不利に働くとの見解からフリーダンは彼女らを組織から排除する。そしてなんとこの行動にマレーが同調する。マレー自身がクィア(同性愛者で男性の格好をしていた)であるのに249

    《第6章 ジャニス・レイモンドとサンディ・ストーン》
    73年にカルフォルニア大学でのレズビアン権利集会で、トランスレズビアンのベス・エリオットが唄おうとすると暴動が起きた。「お前にここで唄う権利は無い」と。そして著名なレズビアン活動家のロビン・モーガンは「女装した男性にレズビアンや女性の境遇は解るわけはない。白人が黒塗りメイクをしているのと同じだ」「彼を日和見主義者で、侵入者で、破壊者(レイピスト)だと告発する」と演説した。
    ホワイトフェミニズムの内部にはトランスセクシャルの女性という新たな不安材料が生まれた257

    この事件はTERF(トランス排除ラディカルフェミニスト)というものを生んだ。そしてそこに登場して批判の対象になったのが、レズビアンの音楽レーベルオリヴィアレコードに招かれたトランス女性の録音技師ストーンだった。ストーンはドク・ストーチの名でジミ・ヘンドリクスやヴァン・モリソン、グレイトフル・デッド、バーズなどの録音とミキシングを担当した天才だった。
    これに真っ向から挑んだのが修道女出身の学者レイモンド。彼女が発表した学術論文はその後何十年にも渡ってTERFの悪名高いアジェンダになった260

    オリヴィアレコードにトランス女性が居ることが解ると、徐々に抗議や嫌がらせの手紙が増えていった。発売されたアルバムの派手なドラムの音が「振動する男のエネルギー」だと書いてあった。次第に手紙はストーンの殺害予告やスタッフへの暴動行為予告にエスカレートした268

    過去のホワイトフェミニズムが目指したのは、白人男性の地位を白人女性が取って変わることだった。TERFが目指すのは、男性のいない社会の構築。そのためTERFが主宰する音楽祭では、すべての男性とトランス女性(侵略者、おぞましく改造された肉体そのものの存在で女性をレイプする男、ロボットレイピスト)を閉め出し、四歳以上の男児も母親や姉から引き剥がし、会場から離れたキャンプ場へ送り込んだ276

    《第7章 シェリル・サンドバーグとアレクサンドリア・オカシオ=コルテス》
    サンドバーグはGoogle社員の時妊娠中だった。この時社員駐車場が本社ビルからかなり遠いのを上役に訴え、妊婦用駐車場を作らせた。その活動は注目され、その後Facebookのザッカーバーグから口説かれ、Facebook最高執行責任者になり億万長者になった。つまりつまり消費社会の成功者であり、さらに資本主義社会の格差拡大そのものを司る側でもある。これら事を元にしたホワイトフェミニズム宣言『リーン・イン』を上梓してベストセラーになり、ホワイトフェミニズムの「新たなボス」と呼ばれるようになった。彼女の思想はフェミニスト、さらにはあらゆる人々に「もっと必死に、もっと頭を使って、もっと迅速に働け。役員室にたどり着いた後もそうしろ」と強要する。これらは「企業フェミニズム」「重役フェミニズム」と呼ばれる。
    コルテス(AOCと略される)はプエルトリカン。先住民居留地に石油パイプラインが出来ることへの反対運動をしていた。しかしそこで一企業が運動側へ棍棒や催涙弾を打ち込む現実に衝撃を受けた。その後、父が早死して自宅が差し押さえの危機にあう。教育のパートに着いたが差し押さえの危機は免れず、自分の理想も遂げられず苦しんだ。とうとうタコス店のウェイトレスになったが、そこで「自分がどうなりたいか」ではなく「どうありたいか」を見つける。そこですぐに下院議員に立候補して、多くの支持のもと当選した。彼女の主張は資本主義そのもののに潜む差別の構造の追及。「私はレフト(左翼)から、立候補しているのではない。ボトム(底辺)から立候補しているのだ」

    サンドバーグは企業の職場をフェミニストの自己実現の場に変えた。クリントン政権の補佐官になったサンドバーグは、新自由主義的資本主義のもっとも破滅的な政策のいくつかを導いた318

    サンドバーグは、リーン・インフェミニストを演じるために、わざと「弱さのある女性」を演じる。これによって彼女に憧れるホワイトフェミニストは「私にも出来る」と思い込まされる。そしてこれが新自由主義的資本主義のシステムと見事に同調した。多くのその他大勢を下に落として322

    《結論》
    黒人女性はアメリカ上院の有力政治家にも選ばれ、「全ての人類の救済者」「女神」と例えられる。これは「有色人種の女性」が正義の指針として、あらゆることに免罪符を与えるからでもある。しかしこの構造は「スーパーウーマン・スキーマ」と言われる深刻な構造だ。彼女らは際限ない正しい判断と成功と無制限の包容力を期待され、疲弊する。このシステムは、白人女性と同情的な白人男性を慰めるために作り出されたものでもある。351

    ホワイトフェミニズムは本質的に収奪行為だ352

    「未来は女性にある」「女性の心の知性こそが社会の成功を生み出す」「リーマンブラザーズではなくリーマンシスターズなら2008の財政破綻を免れた」「女性リーダーのほうがコロナウィルスの扱いに長けていた」このような「リーダーの決断は内にある性差の本質からにじみ出る」という解釈こそが、あらゆる社会の中にはびこる、悪しきホワイトフェミニズムを発見する目安だ353

    インターセクショナルフェミニズムとは、「気付き」とか「インクルージョン社会(誰もが参加する社会)」とかの現代の理想社会作りのお決まりフレーズではなく、体制を本当に脅かせる大衆の力を構築するための「革命的行為」である356

    フェミニズムの対抗史を知ることは、人類の未来に向かって現れつつある青写真を手にすることだ359

    《監役者解説》
    ホワイトフェミニズムという用語は「白人女性による害悪なフェミニズム」以上の意味があり、その点、日本のフェミニズムを批判的に検討するうえでも重要364

    ホワイトフェミニズムは、単にマイノリティ女性を無視し排除してきただけでなく、自らの利益のためにマイノリティを積極的に裏切り、抑圧してきた歴史を持つ「害悪の積極的な形態」だ。だからシュラーはホワイトフェミニズムを「修復」するのではなく「解体」するべきだと主張している364

  • 岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
    http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00639768

    中流以上の白人女性を主たる対象としたホワイト・フェミニズムの陰で、有色人種やトランスジェンダーなどのインターセクショナル・フェミニストが既存の社会構造に連帯して立ち向かうことを提唱してきた。本書では、両者の議論を取り上げてフェミニズムの思想史を捉え直す。
    (出版社HPより)

  • 今読むべき本。「トランスジェンダー問題」など続々とインターセクショナル•フェミニズムについての本が邦訳されていることに感謝。

    歴史的な制約を無視したドグマ化した議論に感じられる部分もあるけれど、筆者の徹底した姿勢に強く共感を覚えるし、文明化でも浄化でも最適化でもなく連帯が必要なのだと改めて。

    最適化の罠はすぐそばにあるので改めて自戒

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著者プロフィール

ラトガーズ大学ニューブランズウィック校女性・ジェンダー・セクシュアリティ研究科准教授。スタンフォード大学人文科学センターおよびアメリカ諸学会評議員会より特別研究員奨励費を受けた。北米、ヨーロッパ各地で講演をおこなっている。《ネイション》誌で特集が組まれたほか、《ランパス》、《ロサンゼルス・レビュー・オブ・ブックス》、《アヴィッドリー》などの雑誌にも寄稿している。著書に『The Biopolitics of Feeling:Race,Sex,and Science in the Nineteenth Century』(Duke University Press、2018年)がある。

「2023年 『ホワイト・フェミニズムを解体する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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