電通と原発報道――巨大広告主と大手広告代理店によるメディア支配のしくみ
- 亜紀書房 (2012年6月19日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784750512105
作品紹介・あらすじ
東京電力 269億円(普及開発関係費、2010年)
電事連加盟10社 866億円(普及開発関係費、2010年)
完全独占企業が莫大な宣伝広告費をメディアに投じている理由はなにか。
博報堂の元社員が実体験と統計資料をもとに、
巨大広告主―大手広告代理店―メディアの強固な絆を解説!
感想・レビュー・書評
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少し古いのだが、広告業界を覗いてみたくて。本著は博報堂OBによって書かれたもの。興味の発端は、先の東京オリンピックでの電通関係者の逮捕だが、至近の週刊誌報道なども契機とした芸能界隈での老舗権威の度重なる失墜、つまり、ジャニーズや吉本や宝塚、それでもって韓国勢が紅白歌合戦での躍進劇。デジタル転換の遅れや自社ビル売却など、決して安泰な事業を送っている訳ではない彼らが、今、何をしているのか。妄想を膨らませるために読んでみた。
原発利権、その危険性を報じる事を広告費のマネーパワーで一定程度抑え込んできたという本書の告発は最早古いし、だから日本企業はヤバい、という論調には必ずしも同意しない。少なくとも、福島原発の時にそのヤバさは崩れ、明るみに出たのだから、報道は機能したとも言える。
東電が地域の独占企業であるにもかかわらず、大量の宣伝広告費をメディアにばらまいていたのは、原発の反対派による告発や原発関連のニュースが表舞台になることを押さえ込むためだった、というのは、既知の事。クライアントの企業不祥事に対する危機管理セクションを電通や博報堂は持っていて、ある程度その機能が働く事は、当然あり得る事。そのためのNHKでは?という問題は別の話だが、本音はそちらにある。
という事で、本書は少し物足りないが、こうした広告会社が日夜の努力でプロダクトや企業についての印象操作を巧みに行い、今日も日本経済を動かす欲求のエネルギー源になっている事は、敬服すべき事だ。過労死が続かぬ事、手段を選ばす、社会悪を齎さぬ事を切に願う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
電通告発本ではない。広告代理店の仕事に対する基本姿勢を、もと博報堂社員である著者が紹介している。顧客のためにはなんでもやるという姿勢が、結果として原発を抱える事業者等を擁護することになっているということらしい。悪意がないから余計にしまつにおえないのかもしれない。
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図書館。
原発報道と銘打つほどには原発について書かれては
いなかったように思ったけれど、広告代理店の
ビジネススタイルがわかりやすかった。 -
勇ましいタイトルですが、「原発」の割合より「電通」の割合が圧倒的に多い。表紙にそれが現れてますね。謝罪会見やイメージ回復キャンペーンなんかも広告会社の「お仕事」になるそうで、こと原発報道関係については読んでいて腹立たしくなることが多々あります。そういえば、原発意見公聴会の取り仕切りも博報堂だったし、他に入札したところは電通だけだった。
著者も断っているように、第五の権力ともいうべき広告会社の側面を紹介する、というもので、原発事故以外の、広告会社とメディアの話がほとんど。商売とはいえ、嫌な話ですよ。 -
表には出てこない、
業界の裏事情が描かれていて、
興味深かった。
こういう情報は、
マスコミには書けないだろうけど、
そしたら真実を伝えるメディアって、
ないんだろうか。 -
電通と原発報道 という題名だが、内容的には、日本の広告代理店とは(原発報道からみるカラクリ)とかの方がよいと思った。
内容は、元博報堂社員だった筆者が、現場レベルでの電通と博報堂の違い、広告代理店の仕事とは、そのうえで原発報道への過剰な対処が行われていたことを(予想を含めて)書いてある。
電通と博報堂の違いも理解できたので読んでよかったと思った。日本は空気の文化であって、行き過ぎた配慮が時には、陰謀として語れることが多いが、広告代理店においても同じような面があるように感じだ。 -
新聞、テレビ等メディアの一面がよくわかった。また、広告代理店がなにをしているのかもよく分かった本。企業の社会貢献・還元という言葉が空しく聞こえる。まあ、どこの国でもこんなものか。
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「広告を打つ」って言葉があるけど、それって何にために打つんだろう。
競合がたくさんいる会社が打つのは、分かる。イメージアップが必要だからね。
企業だけじゃなく、政党が打つのも、わかる。競合政党がいるからね。
何かのイベントをやる、その動員をするために打つのも、わかる。知名度が必要だよね。
じゃあ、電力会社が広告を打つのは、なんでだろう。
競合相手は、いない。地域ごとに一社ずつしかないから。圧勝、一人勝ちだ。
じゃあ、動員をするための知名度アップのため?そんなことしなくても、エネルギーは生活必需品だから、みんな使うよね。
でも、答えはこの「動員をするため」だったら。
一体何のための動員?
本書は、この謎解きのために書かれた。
驚くべきことに、エネルギー会社が動員するのは、その「広告」を目にする、消費者だけじゃなかった。
誰しも、お金をくれる人には頭が上がらない。
エネルギー会社がお金を渡すのは、二つ。マスメディア。そして両者をつなぐ広告代理店。
エネルギー料金は、「公定価格」と言って、自由に料金を変えられない。(ここまでは中学生でも習う。)
でも、一応企業だから、赤字にはなっちゃいけない。でもぼろもうけもしちゃいけない。
だから、政府に、「運営にこれくらいの費用がかかっています」という帳簿を提出する。これが一つの目安になって、価格が決められている。
じゃあ、問題は、その帳簿の真偽だ。それが自己申告だとしたら…。ここにカラクリがある。
本書にデータが載っているけど、電力会社は広告費がすごい。
これは彼らが勝手にやっていることだ。でもこのお金が、電気料金に上掛けされているとしたら。
本書は、上記のカラクリがマスメディアに仕掛けられているがゆえに、決してマスメディアでは紹介されない本だ。いわば「内部告発本」。