独裁者のためのハンドブック (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)

  • 亜紀書房
3.63
  • (18)
  • (11)
  • (23)
  • (4)
  • (3)
本棚登録 : 374
感想 : 25
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750513317

作品紹介・あらすじ

「政治」と「権力」を支配するルールを,古今東西の独裁者・組織の事例から読み解く。あらゆる「政治」のメカニズムがわかる、成り上がり、生き残るための必読書。
古代ローマのカエサルからカダフィ大佐、金正恩、さらには超有名企業やIOCまで100を超える独裁者・組織が登場!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ある医師の方が、ボランティアで正確な情報を届ける活動(厚労省や政治家からの依頼で行っているわけでもなく(分科会などのようなアドバイザリーボードとは違う・関係がない)、当然見返りや報酬があるわけでもない)をしているにも関わらず、
    御用学者だの、厚労省と繋がっているんだろ、だのと誹謗中傷を受けまくっている頃-今でも続いているけどー、音声配信でぽろっと「そういう人は政治の仕組みを分かっていない。『独裁者のためのハンドブック』と言う本が面白いから読んでみるといいよ」と皮肉半分、本好きのその先生らしいリスナーへの本紹介半分、この本について触れていた。
    それで、面白うそうだな、と思って手に取った。帯の【独裁と民主主義に境界はない!】に衝撃を受けるが、本書を読み進めていくと、なるほどな、と思う。【カネとヒトを支配する権力構造】を理解すると、確かに、民主主義国家とて、独裁国家と、その基本的な権力構造はなんら変わりないのであって、説明されてみれば、権力構造って国も企業も自治体もこうだよね、と。
    ただ、『本書は、『独裁者のためのハンドブック』というタイトルからして著者の皮肉が込められている。著者の意図は、いかにして読者が独裁者になるか、あるいは盟友集団に加わって私的な見返りや特徴の恩恵にあずかるかではなく、独裁によって多くの人々が被る苦難をいかに終わらせるかと言う点にある。「支配者が支配されるルール」に習熟すれば、私たちにも勝ち目があるというのが著者からのメッセージである』(訳者まえがき)
    と言うように、ただ権力の構造を知って悲嘆すると言うよりは、知らないと戦い方も分からないですよね、と言う本なのだ。
    最後の締めくくりの章でこう書かれている。『私たちはすでに有権者集団や影響力のある者、そして盟友集団が回している政治のすべてについて学んで来た。それらすべてを拡大すれば、取り換えのきく者たちも盟友集団ほどには利口になるし、あらゆることが圧倒的多数の人々にとって良くなるようにかわるだろう』
    しかし、無力な安月給の庶民には、権力の構造を改めて知ったとて、具体的に何をしたら大きな力となるのか・・・結局選挙に行くと言う基本のキしかないのか・・・
    結局、冒頭のこの思いに引き戻されてしまうのだ。『政治は、まったくわけのわからないことばかりだ。私たちは、日々トップ・ニュースにショックを受け、驚かされる。毎日のそんなニュースに登場するのは、詐欺をはたらき、不正を犯し、二枚舌を使う企業経営者や、嘘を重ねて他人の物を掠め盗り、残虐行為のはあげくに人まで殺す為政者の姿である』

    ところで、残念な点だが、少し読みにくく、読むのに結構な時間がかかった。ケーススタディを取り上げながら、1つ1つ分析していくが、基本的に言っていることと言うか主張の軸が同じなので、冗長に感じると言うこともあるのだが、訳が読みにくいと感じる。こういう内容の本は、そもそもが読みやすい文章ではないのかもしれないが、いかにも外国語を日本語に訳しました、と言う感じの読み口で、もう少し日本語らしい表現の工夫などあると読みやすかったのかも、、、

    ・印象に残った
    昨年、東京オリンピックが行われ、読書中には北京オリンピックが開催中だったこともあり第6章の【賄賂と腐敗】の中の”娯楽と金を追求するIOC”はタイムリー過ぎて苦笑してしまった。『IOCにとって、政治的および個人的歪曲から解放された中で、国際的なスポーツ競技の質(およびおそらく量)の向上よりも大切なものは何だろうか?答えは贅沢な娯楽と金である』(長野オリンピックを勝ち取った際、日本は440万ドル以上を、IOC委員への接待費に費やした、とありますね、、、)


    ・抜粋
    独裁者のための五つのルール
    ●ルール1 盟友集団は、できるだけ小さくせよ
    ●ルール2 名目上の集団は、できるだけ大きくせよ
    ●ルール3 歳入をコントロールせよ
    ●ルール4 盟友には、忠誠を保つに足るだけ見返りを与えよ
    ●ルール5 庶民の暮らしを良くするために、盟友の分け前をピンハネするな

  • 独裁者、民主制の代表者を問わず、支配者が支配者であるために、支配されるルールがある。それは「支配を支えるために不可欠な人たちの忠誠をいかに維持するか」という、シンプルなものだ。内政も外交もそのルールに支配されている。本書ではそれを明るみに出すことで、「民主制・独裁制」などのレトリックで政治を捉えては見逃してしまうような現実が明らかにされていく。
    論理はとても明快で面白いのだが、邦訳が酷すぎて読みにくいのがもったいない。原著で読めればそちらをオススメしたい。
    なぜ多額の援助にも関わらず途上国は豊かにならないのか、なぜ既存の独裁者を打倒したのにも関わらずその国の民主化が進まないのか、などが良くわかる。

  • 報道される独裁者達が自国民を虐殺するなどの暴挙を見聞きしたとき、なんでそんな馬鹿なことをするのだろう。自分が独裁者の立場だったら絶対そんなことしないと思ったことのある人。そういう人への回答となるかもしれない本。

    独裁者に限らず組織を支配する人間が守らなければならないルール、支配者を支配するルールが存在する。
    一見すると暴挙にみえる独裁者の行動もそのルールを忠実に守っているに過ぎないと筆者は言う。
    そのルールはいかなるものかを古今東西の独裁者と呼ばれる人たちの行動を例に皮肉たっぷりの表現を織り交ぜながら解説している。

    独裁と民主主義に境界は無いという新視点の政治論であり、一見すると不合理に見える支配者の行動に潜む合理性がはっきりと示されている。
    資源が豊富な独裁政権国家ほど民衆を省みない理由、貧しい国家では民主化が進みやすい理由などの解説としてとても腑に落ちるものだった。
    かなり濃い色眼鏡で見たからこその話であり、これが唯一無二の解釈だってことはないのだろうが、こういう眼鏡で見るからこそ見える世界は確かにある。
    タイトルからは独裁者になる方法を想像するが、作者のメッセージとしては支配者が支配されるルールに習熟することでよりよい世界になることを期待するものであった。ただ、そのためにはこのルールに習熟する人が少しでも増える必要があり、その意味でも多くの人に読んでもらいたいと思う。

  • 自分以外のものを大きく見てしまうことが私の弱点だと思っていたが、ほとんどの人間は心理上そう感じている。ただし、その心理を多数の手法を使うことでより大きく見せ、偉大な独裁者となっている。全員が全員中身が悪者はわからないが、手法によっては誰でも独裁者になれるし、そう見せることができる

  • 2022年6月号

  • カエサル、ヒトラー、金正日…。なぜ「悪政」を行う独裁者が失脚しないのか? なぜあの権力者は不合理な決断をくだしながら生き残れるのか? 「政治」と「権力」を支配するルールを、古今東西の独裁者・組織の事例から読み解いていく。

    序章 支配者を支配するルール
    第1章 政治の原理
    第2章 権力の掌握
    第3章 権力の維持
    第4章 財政
    第5章 公共事業
    第6章 腐敗と賄賂
    第7章 海外援助
    第8章 反乱抑止
    第9章 安全保障
    第10章 民主化への決断

  • 【所蔵館】
    総合図書館中百舌鳥

    大阪府立大学図書館OPACへ↓
    https://opac.osakafu-u.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2000940691

  • この本では、独裁国家・民主国家関係なく、トップの人は、少数の盟友のために行動しているということ、最初から最後までずっと言っています。
    言い回し・例は違うが結局同じことを言っているだけで、本の厚さに比例しない内容の量だった。

    北朝鮮で、一般市民が餓えようが、どうなろうと関係なく、
    自分を支持する幹部たちに金を与え、支持を継続させることが大事だっていうこと。
    https://seisenudoku.seesaa.net/article/473784364.html

  • ふむ

  • 【由来】
    ・honzと佐藤優

    【期待したもの】


    【ノート】
    ・タイトルからすると、人を支配するためのノウハウが書かれている本かと思うが、内容としては、政治的権力者の内在的理論について分析した本。
     例えば、自然災害などによる世界からの善意の義援金などは独裁国家にとっては格好のたかり対象。あえて国民を救出せず、その救出を名目に援助金を釣り上げる。この手口は開発援助でも使いまわされる。民衆に届くことはなく、援助する側も実はそのことを把握しているが、独裁者が自分たちの意向に沿う政策を取っている限り、別に構わないというスタンスだったりする。そして、そんな「援助する側」の姿勢は、我々の姿の反映でもあるってところを忘れちゃいけない。「我々は西アフリカや中東の本当の変化よりも、安い価格の原油を求めているのである。したがって我々は、リーダーが我々の希望することがらを実行しようとするのに対して、不満を言うべきではない。これはつまるところ、民主主義とはこのようなものだ、ということを示している。 (P254)」

    ・独裁者は、少数の「かけがえのない盟友(他にもっとしっくりくる日本語はないのかな?)」に、ケチることなくおいしい思いを保障しておくことがポイント、という基本構造が一貫して主張されている。そして、この「かけがえのない盟友」という支持基盤が少数の取り巻きというレベルではなく、多数になればなるほど、構造的に民主主義に寄っていくことになる。民主的社会であれば「独裁者」ではなく「リーダー」と呼び名が変わるが、抽象した構造は、実は似通っている。また、オリンピック委員会やFIFAなんかも「独裁者と少数の盟友」によって運営されている組織として引き合いに出されている。

    ・実際の独裁者のエピソードを例として解説されていて、面白く読める箇所もあるんだけど、訳が少し読みづらくて、自分にとっては読み通すのがキツかった。ちなみに、独裁者のためのルールは以下の5条だそうです。

    ・ルール1 盟友集団は、できるだけ小さくせよ
    ・ルール2 名目上の集団は、できるだけ大きくせよ
    ・ルール3 歳入をコントロールせよ
    ・ルール4 盟友には、忠誠を保つに足る分だけ見返りを与えよ
    ・ルール5 庶民の暮らしをよくするために、盟友の分け前をピンハネするな (P69)

全25件中 1 - 10件を表示

四本健二の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×