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- Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
- / ISBN・EAN: 9784750515533
感想・レビュー・書評
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2019年9月最後の日曜日のEテレ日曜美術館は「異端児、駆け抜ける!岸田劉生」というタイトルで麗子像で有名な岸田劉生を取り上げていました。最終的には西洋絵画を超えて東洋美術をも取り込もうとした早世の異端児という見立てなのですが、番組の中で気になったのは日本の油絵が導入されて日が浅く、それゆえの伝統の無さを克服すべく、当時はやりの印象派に流されず、本格的西洋絵画の泰斗、デューラーを追い続けるという生真面目な画家の在り方でした。やはり西洋絵画が先行し、それを一生懸命追いかける、という構造が日本の美術の宿命かな?と思ったりしました。しかし、抽象美術の登場は、そういうコンプレックス構造をリセットしたのかもしれません。エリアという空間と歴史という時間軸で整理されることが多い美術評論ですが、本書では近代、現在のあらゆる文化活動が繋がり合うことによって生まれる美術を縦横無尽に語っています。夏目漱石の「f+F」やポアンカレの「三体問題」、フレーベルなどの教育運動まで登場し、抽象芸術の持つシンクロニシティを解き明かしていきます。弾けるような話題の展開力が今回の読書の楽しさでした。特に、熊谷守一について彼の《朝のはじまり》という作品が、ラジオで流されていたミュージカル《ヘアー》の楽曲の「Good Morning Starshine」をヒントに生まれたのではないか?という強引な仮説は文化の相互作用という意味で無茶無茶刺激的でした。熊谷守一、89歳、ヒッピーじいさん!いやー、絵画を美術を語ることって楽しいんですね!