抽象の力 (近代芸術の解析)

著者 :
  • 亜紀書房
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750515533

感想・レビュー・書評

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  • 抽象芸術史とその解説、分析。美術作品、作家の思想に重点を置き岸田劉生や熊谷守一のような日本の作家を含む芸術に対する詳細かつ多角的な見方を展開している。唯、私が浅学のためか、やや理解できない箇所も散見された。美術、芸術思想、そして若干の自然科学あるいは社会学的素養が無ければ少々読みにくいと感じる。一方で最後の具体の批評は論理そのものとして完結しているので本論等に比してわかりやすく、展開として面白かったと思う。

  • 2019年9月最後の日曜日のEテレ日曜美術館は「異端児、駆け抜ける!岸田劉生」というタイトルで麗子像で有名な岸田劉生を取り上げていました。最終的には西洋絵画を超えて東洋美術をも取り込もうとした早世の異端児という見立てなのですが、番組の中で気になったのは日本の油絵が導入されて日が浅く、それゆえの伝統の無さを克服すべく、当時はやりの印象派に流されず、本格的西洋絵画の泰斗、デューラーを追い続けるという生真面目な画家の在り方でした。やはり西洋絵画が先行し、それを一生懸命追いかける、という構造が日本の美術の宿命かな?と思ったりしました。しかし、抽象美術の登場は、そういうコンプレックス構造をリセットしたのかもしれません。エリアという空間と歴史という時間軸で整理されることが多い美術評論ですが、本書では近代、現在のあらゆる文化活動が繋がり合うことによって生まれる美術を縦横無尽に語っています。夏目漱石の「f+F」やポアンカレの「三体問題」、フレーベルなどの教育運動まで登場し、抽象芸術の持つシンクロニシティを解き明かしていきます。弾けるような話題の展開力が今回の読書の楽しさでした。特に、熊谷守一について彼の《朝のはじまり》という作品が、ラジオで流されていたミュージカル《ヘアー》の楽曲の「Good Morning Starshine」をヒントに生まれたのではないか?という強引な仮説は文化の相互作用という意味で無茶無茶刺激的でした。熊谷守一、89歳、ヒッピーじいさん!いやー、絵画を美術を語ることって楽しいんですね!

著者プロフィール

一九五五年東京生まれ。造形作家、批評家。絵画、彫刻、映像、建築など、ジャンルを超えて作品を創造するとともに、美術批評を中心に執筆を続けてきた。一九八二年のパリ・ビエンナーレに招聘されて以来、数多くの国際展に出品し、二〇〇二年にはセゾン現代美術館にて大規模な個展を開催。また、同年に開催された「ヴェネツィア・ビエンナーレ第8回建築展」の日本館にディレクターとして参加するなど幅広い活動を行っている。
主な著書に『近代芸術の解析 抽象の力』(亜紀書房)『ルネサンス 経験の条件』(文春学藝ライブラリー)、『芸術の設計』(編著、フィルムアート社)、『れろれろくん』(ぱくきょんみとの共著、小学館)、『ぽぱーぺ ぽぴぱっぷ』(谷川俊太郎との共著、クレヨンハウス)、『絵画の準備を!』(松浦寿夫との共著、朝日出版社)、『白井晟一の原爆堂 四つの対話』(共著、晶文社)。作品集に『TOPICA PICTUS とぴか ぴくたす』(urizen)、『視覚のカイソウ』(ナナロク社)、『Kenjiro OKAZAKI』(BankART1929)など。

「2021年 『感覚のエデン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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