魔術の生成学: ピエロ・ディ・コジモからパラッツォ・ピッティへ (イメージの探検学 7)

制作 : 石井朗 
  • ありな書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784756616487

作品紹介・あらすじ

近世イタリアにおいて、美術と魔術の親密な関係、しかも単に主題と形式の関係ではなく、創作論の根本にかかわる問題としての美術側から魔術への接近の、もっとも典型的な例を見ることができるのはたしかであろう。もちろん、両者の親近性は時代や地域、文化的パラダイムの枠を超えたより根源的なものとも見ることができ、事実、両者が密接にかかわった時代や地域の例をほかにもいくつも挙げることができる。無意識に関心を向け、それから具体的なイメージや表現形式を引きだす手段として、錬金術に範を求めたシュルレアリスムはその一例である。近世の魔術や錬金術、占星術が依拠していたのはいずれも基本的に古典古代の宇宙観であり、たとえそれらの知識体系が近代科学の揺籃となったにせよ、それらが根拠としたアリストテレスの体系は科学革命によって塗り替えられてしまった。しかし魔術の思考体系、世界に対する見方の体系は、近代合理主義の時代をも生き延び、むしろそれへの反動として息を吹きかえし、ついにはフロイトやユングの無意識の理論のような、新たな理論的体系と結びついて、芸術の創作に少なからぬ貢献を果たしてきたのである。かつて教会から弾圧され、近代合理主義から疎まれた魔術は、常にいわば「周縁」にあり、ある種「カウンター・カルチャー」的性格をもっていた。今日なお、「オカルト」の名を冠せられ、実質的にサブ・カルチャーという差別的枠組みに押しこまれた魔術であるが、少なくとも芸術の領域におけるかぎり、今後もなんらかのかたちで、重要な役割を演じ続けていくことであろう。

著者プロフィール

弘前大学教育学部准教授/イタリア美術史

「2019年 『光彩のアルストピア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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