遠距離交際と近所づきあい 成功する組織ネットワーク戦略

著者 :
  • NTT出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (420ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757121836

作品紹介・あらすじ

能力があるのに、"つながり"の悪い職場や家庭で悩んでいませんか?何の変哲もない個人、組織、地域が、恵まれた環境でもないのに困難を乗り越え、目立って繁栄する場合がある。世界各地の事例と最新のネットワーク理論から、その秘密、法則に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • ▼福島大学附属図書館の貸出状況
    https://www.lib.fukushima-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/TB90206624

    個人や組織の繁栄は、そこにいる人の努力や能力によってのみ決定されるわけではない。その人をとりかこむ周囲の人びとや、外部の組織との繋がり方によっても、運命は大きく変わる。単に運がよく繁栄しているように見える個人や組織も、意識していなくても、実は周囲との繋がりに関する何らかの法則性に則して意思決定し、行動している可能性がある。本書はその法則性に対して、世界各地の事例を用いて迫る、ネットワーク研究の入門書である。

    (推薦者:経済経営学類 林 正先生)

  • 第1章を読んで興味を持って図書館で借りたのですが、
    第2章以降は企業やサプライチェーン、政府の話に移り
    どちらかというと個人的なネットワークに興味のあった自分には
    ちょっと肩すかしのような感じでした。

  • ネットワークに関する本を読みました。ネットワーク理論は意味不明という印象を持っています。そんな印象を持ったのは、慶応の金子先生の本を読んで、面白く読めたのですが、何のことやら分からないという印象が残っているためでしょう。この本のテーマは、ケンブリッジのリサーチパークです。そのリサーチパークの成功は、濃密なネットワークが原因だそうです。リサーチパークの成功には、大学の先生と弟子という1本線では十分ではないのです。何本も濃密な線が、複数交わっている必要があります。これは、間違いないと思います。ネットワークの理論により、プロ野球の現状をうまく説明できると思います。プロ野球は、見るだけ出ではなく、語り合うことが楽しいのです。野球を語り合える人が多ければ、多いほど面白くなります。つまり、ある球団のファンであることの効用を決定するのは、ファンの数ではなく、ファンの濃度ということになります。福岡、仙台、札幌でのプロ野球の成功は、ファン濃度が高いことです。これらの地域では、学校、職場では、過半数を超える人たちが、地元の球団のファンでしょう。球団の話題を語ることの出来る友人を見つけるのは、容易でしょう。それに対して、横浜、近鉄の失敗も、ファン濃度で説明できます。ファンの数自体は少なくありませんが、友人の中で、同好の士を見つけることが困難です。それは、二つの原因があります。第1に、フランチャイズが広すぎるのです。フランチャイズが広いと、潜在的顧客が増加します。しかし、同じ人数のファンがいても、ファン濃度が低下します。第2に、競合球団が存在することです。横浜の場合、巨人、ヤクルトと競合しています。オリックスの場合、阪神の競合しています。もちろん、ネットワーク理論で説明できない部分もあります。阪神はフランチャイズは広いですが、経営的にうまくいっています。広島はフランチャイズは狭いですが、経営的にうまくいっていません。

  • 温州人のネットワーク、トヨタのサプライチェーン、英国の国防省そして著者自ら「防衛調達制度調査検討会」の正式メンバーとして参加した日本の防衛庁(現防衛省)などの研究結果に基付く「遠距離交際と近所づきあい」、を社会学あるいは経営学の立場からネットワーク理論を取り込みじっくりと解説している。再読で少しは理解が深まった気がするが、かなり深い考察(自分の理解力不足の可能性が高いが^^;)をしているのでもう少し読み込む必要がありそうだ。

    温州人ネットワークでは地縁・血縁(近所づきあい)を中心としながらも広く海外までのネットワークを持ち、地域内そして海外でもそのネットワーク内でのコミュニケーションでそれぞれが発展する様子が良く分かる。
    トヨタのサプライチェーンでは一次請け、二次請け、三次請けなどの縦の関係に対して勉強会などで横串をいれ(これが遠距離交際に当たる)スモールワールドを形成している。そのスモールワールドがアイシン精機で火災が発生した時、直接取引関係に無かった企業が一致協力して迅速なリカバリ行った。その状況を分析することで、遠距離交際の重要性を説く。
    また、組織が大きくなると、部門間が断絶し部分最適が跋扈することで全体最適が失われがちになる。そのもっとも典型的な政府機関で部門を横断する「ケーパビリティー」を定め組織間のインターフェースを再構築(これも遠距離交際にあたる)し全体最適を図ることでコスト削減などを実現したのが、英国の国防省や日本の防衛庁の実例だ。

    著者が企業研修などで講演をなどを行うことがあるとのこと、長期に渡って業績の良い会社では、皆が活気に満ち、職位にかかわらず言論の自由があり、初対面の講師にも親しげに話しかけてくる人が多いとのこと、それに対して業績の低迷している会社は雰囲気がガラリと異なり、多くの受講者が斜に構え、会社命令だから仕方なくきたとの態度だそうだ。これには講師である著者もさっさと退散したくなるとのこと、逆に前述の業績の良い会社の人たちだと講演が終わってから一緒に酒でも飲みたい(もっと接したいとの著者の表現をわかりやすくしてみましたw)と思うとのこと。著者はこの件をトポロジー(人の関係)の違いが人々に大きく影響する例として、挙げています。これもパットナムの「哲学する民主主義」における北イタリアと南イタリアと話とよく似ている。

  • ジャンル:ネットワーク理論

  • ネットワーク知りたい方は必読。

  • 大きな分類でいえば組織構造論、組織行動学の本といえる。最初のほうで最新のネットワーク科学の知識を導入しながら、トヨタのジャストインタイムに代表される前工程と後工程でカスタマーリレーションを結び、全体としてのベストプラクティスを出すサプライチェーン上のフタクラル構造論に触れ、英国での全体最適を実行する防衛対策などのベストプラクティスの手法・方法論に触れている。<br /><br />科学的な知識がいろいろと入っているが、科学的な踏み込みは事実のみを取り上げ、それよりは大きな組織行動のほうに興味が当たっている。それでもネットワーク科学におけるスモールワールドでのリワイヤリングは、例えば、カスタマーリレーションのレギュラーなネットワークでも情報をショートカットする役割を演じるので組織にとっては有用であるところが非常に興味深いと思う。<br /><br />こういう風に科学と社会をつなぐネットワーク科学はやはり有益な学問分野だと改めて感じる良書といえる。

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著者プロフィール

一橋大学イノベーション研究センター名誉教授

「2016年 『コミュニティー・キャピタル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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