- Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
- / ISBN・EAN: 9784757142954
作品紹介・あらすじ
海賊が黄金期を迎えた大航海時代。地中海では、カトリックのマルタ騎士団が略奪を正当化・一大ビジネスにまで発展させた。標的は同じキリスト教徒とはいえオスマン帝国に仕える正教徒のギリシア商人。商人は商品奪還のため、大使館や教会、ときには教皇を動かし訴訟戦術を繰り広げる!
感想・レビュー・書評
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EU企画展2023「EUの北と南スウェーデンとマルタにフォーカス!」 で展示していた図書です。
▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
https://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BB15424657 -
言っては悪いけど、とても面白い本でした!
誰に悪いというと、海賊に襲われてボコボコにされ、船も商品もお金もとられ、裸にされて、無人の小島においていかれたり、小舟に乗せ漂流されられたギリシア商人。
こんな酷いことをする海賊(私掠者)とは、なんと聖ステファーノ騎士団、そして私が憧れていたマルタ騎士団なんだから、驚きです。
なぜ面白いか。その後なんとか助かったギリシア商人たちは裁判を起こすのです。その文書がのこっているので、16・17世紀の地中海世界の「歴史に名を残さずに消えていったはずの人たちの物語」が見えてきます。
ギリシア商人たちが運び、奪われ、補償を求めた積み荷の米は、地中海の商業史の一部をなすだけでなく、地中海の宗教史、政治史の一部ともなっているのです。
マルタ騎士団たちは熱いクリスチャンですが、意外とせこいこともしています。「私掠船に出資して略奪品と捕虜の分配を受ける権利を持つ支援者たち」に過少報告など詐欺行為もしています。でもギリシア商人が法廷で積載証明書の写しを提示してしまうので、支援者たちをいかにだましているかも立証することもできるのです。
その他の登場人物でも、私の頭になかったいろいろ。
「17世紀の地中海におけるフランス人なるものは、実はさまざまな志向性を持った雑多な集団だった。とくに重要なのは、フランス領事というのが、マルセイユやパリの政策の執行者としては極めてでたらめな人々だったということである」
「聖ステファーノ騎士団がトスカーナの港リヴォルノを根拠地としていたそとのきに、トスカーナがオスマン帝国に乗り込んで行って商業特権を求めるというものであった。トスカーナ(メディチ家)のこの度胆を抜くような厚かましさ(後略)」
「まさに利害対立が渦巻く場であるという意味で、法廷が腐敗した組織だったことは疑いない、何と言っても、訴訟を取り仕切った判事たち自身が略奪品の3%を受け取ったうえ、マルタ島全体が私掠で成り立っていたのである」
しかし対抗宗教改革の時代、「正教徒ギリシア人をカトリックにとりいれたいバチカン」が力になってくれるのです。良かったね。 -
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