高校英語教育を整理する!教育現場における22のギャップ (アルク選書シリーズ)

  • アルク
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757424005

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  •  「コミュニケーション能力を育成するために」や「英語の授業は英語で」と言う時の「コミュニケーション能力」とは何を指すのか、誰が「英語で」授業中話すのか、といった議論の前提になる部分を整理したもの。教員同士、教員と保護者や校長といった対話の中から、なぜ議論が噛み合っていないのか、議論を建設的に発展させるためにはっきりさせたい概念は何か、といったことが述べられている。
     この本を読んでて一番印象的なのは「関係代名詞(後置修飾)」の部分。なぜならちょうどおれが今授業で関係代名詞を教えているから。しかも、この章で出てくる「C先生」とまったくもって同じことを言いながら教えている。「特に、A先生とC先生は、関係詞の使い方について認識がずれています」(p.36)と書いてありドキッとする。この文の意味は「正しい認識から逸脱している」という意味ではなく、単純に「2人が違う意識を持っている」という意味なんだろう、と思うことでおれ自身を安心させた。どの章でも、どっちが正しいか、どうすれば良いか、ということは、ほとんど教えてくれない。自分で考えるきっかけにしろ、ということだそうだ。
     「議論のずれ」とは、「議論が噛み合わない」という意味で、例えば「ナチュラルスピード」や「CBI」、「音読の役割」などの章で、同じ言葉に対して2人(以上)の思っていることが違う結果、話が噛み合わないという事態になっている。(しかも「音読の役割」の章では、「音読」に対する認識がずれているというより「アウトプット」に対する認識のずれだと思う)ただ、例えば「基礎・基本」の章や「やさしい教科書はダメ?」、「『環境』問題」などの章では、別に話が噛み合ってないという訳ではなく、ある問題についてそれぞれ異なる意見を持っている、ということが確認されるだけであり、別に話が噛み合っていない訳ではないと思う。そういう意味で、この本の言う「ずれ」には2種類あると思うのだが、どうだろうか。「整理する!」という本の中身自体を整理したくなる衝動に駆られた。
     ただ悪いことやムダなことは書かれていないし、読んでいてとても面白い。というか英語の教員としてはこれらの全ての問題について、正しい認識や、自分なりの考えというのを持っておくべきだと思う。
     特に「状況的真正性」と「交流的真正性」というのは知らなかった。また、「自分の意見を言う」というのはどういうことなのか、表現系の授業では特に計画段階、年度当初で担当者で確認して決めないといけないと思う。
     最後に、第5章、第6章ではまとめ的なことが書いてあるが、共感できる部分が多い。例えば、p.184には「さまざまな授業を見せていただく機会がありますが、何か問題点を指摘したり、改善を提案したりといった意見はあまり出ない」と書いてあり、おれが自分の授業を他人に見せても、「面白かったです」くらいのコメントがもらえればいい感じで、あまり建設的なコメントがもらえなかったりした時があって、どうなんだろうと思ったことがあった。同じページの「教師には、互いに不可侵という文化がある」というのも、ある程度はそうなんだろうなと思う。また、「『準備のための授業』」(p.198)や、「形式を整えるための真面目さ」が「落とし穴になっている」(同)というのも、特にうちの学校に極めて日常的に起こっている現象だなあと思った。最後に、「実力のある教師ほど努力していて、時間がない」(p.188)、「努力する教師は、(略)時間もコストも無視して人生を捧げてい」(同)る、とか書いてあり、これはたぶん良くない現状の例として挙がっていることなのだろうけど、おれも「時間を惜しんで努力する教師」でありたいし、その結果として「実力のある教師」になりたいと思った。(13/11/24)

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