- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758413558
作品紹介・あらすじ
オリンピックまで2年、昭和37年の東京。
17歳の郷子は、2年前に集団就職で上京したものの、劣悪な労働環境から工場を逃亡した。
そのまま上野駅でうろうろしていたところを、浅草にある「洋食バー高野」のおかみ・とし子に拾われ、そこで働くことに。
工場での食事のトラウマからずっと食べられなかったカレー、初体験! 揚げたて熱々カツサンド、心に沁みわたる感動のプリン……。
美味しく温もりあふれる絶品料理と人びとに出会い、郷子は新しい“家族”と“居場所”を見つけていく。
平日の昼間から多くの人が集う、下町の社交場「洋食バー高野」を舞台に描く、少女の上京物語
感想・レビュー・書評
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東京オリンピックを二年後に迎える浅草を舞台に、集団就職先の工場から逃げてきた郷子が『高野バー』という洋食屋で働かせてもらいながら少しずつ自分の生き方を見つけていく話。
数年前に放送された朝ドラで主人公が集団就職する設定があったが、あの会社は実に良心的だったのだなと分かる。
実際のところは郷子の就職先のように少年少女たちを人間扱いもせずに奴隷のように扱っていた職場も多かったのだろう。
それはこの時代に限らず現代に至るまで続いているわけで、勿論良心的な会社もあるが、そうでない会社も一定数あるということだ。
郷子が一人あたりの国民所得が戦前の水準を上回ったことを称える新聞記事を読んで反発を感じるシーンがある。
『国民所得とざっくりとした言葉でまとめているが、その数字を支えているのは大人だけではない。勉学を諦めるしかなかった子供たちだって、多くの部分を貢献しているはずだ。それなのに未成年の子供たちが就労後どうなったのか、どう貢献したのかについては触れられることはない。高度成長の一端を支えているのは、若い時間を奪われた彼らのはずなのに』
集団就職先で働いていたころから常に小さなバールを持ち歩き、毎日磨きながら時に大声を上げてしまう郷子。
まだ十七歳の郷子がそれまでの短い人生の中で、戦争を経験し、終戦後は親に売られる形で集団就職をし、そこで様々な少女たちの不幸や彼女たちを食い物にする大人たちの姿を見てきて、ついには逃げ出した。彼女のその目にはこの世の中のどれほど厭な部分ばかりが映っていたことだろう。
しかし郷子にそこまで悲壮感はない。元々押しが強く鬱陶しいほどで、積極的に関わりたいタイプの子ではない。
『高野バー』のおかみさんにもしつこく付き纏ってついに働かせてもらうし、コック見習いの勝に煩わしがられても何かと口を出すし、仕事で失敗して先輩ウエイトレスに冷静に指摘されて一時的に落ち込むことはあってもすぐに気を持ち直す。逃げ出した就職先の工場長らがいつ追いかけてくるかとビクビクしながらも、いざとなれば逃げ回り立ち回るだけの行動力もある。
また両親に対する怒りと悲しみはあっても叔父は優しく見守ってくれているし、集団就職先は酷かったが『高野バー』では仕事には厳しくも良い職場だ。また盲目だが明るく前向きな小巻という友人も出来た。
東京オリンピックの頃の東京というと華やかできれいで、戦争の爪痕など一掃されたイメージだがそんなことはない。
先輩ウエイトレスは戦災孤児で家族の死といまだ向き合えていない。だが彼女のようにきちんと働ける場所がある人は幸せな方で殆どは苦しい境遇にあるのだろう。また勝の兄は徴兵され戦後帰ってきたが人が変わってしまった。郷子の逃亡を助けてくれたロクさんのようなホームレスも溢れている。
『もやは戦後ではない』という言葉が郷子には違和感を以て響く。
それでも郷子の、時に強引で時に真っ直ぐで、時に冷静に俯瞰も出来る姿勢で自分なりに居場所を作っていく。
表題作のプリンアラモードをはじめ、『高野バー』のメニューはどれも丁寧で美味しそうだった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
集団就職で、親から身売り同然に上京してきた郷子。過酷で劣悪な環境に耐えかねて寮を逃げ出し、浅草の洋食バーのママに拾われ、そこで働くことになる。
オリンピック前の、高度経済成長のきざしが見える日本。その下で、こうやって文字通り血の滲むような思いで働いていた子供がいたんだ、と気付かされる。
テーマは重いけれど、文章は軽く、郷子もたくましく生きているので暗くはない。
洋食バーのごはんも美味しそう。まだまだ物語は始まったばかりのような雰囲気なのでシリーズ化するのかな。
郷子や郷子を取り巻く人たちが幸せになる話になっていく展開になるといいな。 -
キョーちゃん逞し。こういう話しもあっても良いな。朝ドラになって欲しい。
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昭和37年、浅草。
高野バーで働く畠山郷子。まだ17才。
集団就職で川崎の工場で働いていたけど、理不尽なツラい日々に嫌気がさし、上野まで逃げてきた。
そして高野バーの店主に助けられたのだ。
はい、ここで従業員や盲目の少女と交流しながら成長していくという、よくある話でした。
でも、こういうの好きですよ。 -
集団就職先はとんでもないブラック企業、川崎から脱走して来た郷子(キョーちゃん)は今更群馬にも帰れず、上野であわや殺されると死の覚悟をしたところで運命の出会いをする。これだけでなかなか今までに類を見ないストーリーだと思った。
そんな行動力の化身の如き主人公、キョーちゃんの下町浅草での成長記。いろんなことを知ってしまったキョーちゃんがあっけらかんと社会の闇の部分を話すのに少し悲しさを感じた。小巻ちゃんもあの時代じゃ、相当進んだ人って思われていたろうけれど、今生きてたらとっても生きやすいんだろうなあ。それぞれの人たちにストーリーがあって、でももっといろんな登場人物たちのストーリーが見たかったなあ。続いてるのかなー。 -
実際にいたら苦手なタイプだけども
キョーちゃんキュート。
もっと読みたかったな。