- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758444576
作品紹介・あらすじ
カツカレー、焼き魚定食、ハンバーグ、ナポリタン──
「近所にあれば、毎日通いたい!」という熱い声が続々寄せられている、
ほっとする美味しい料理で、財布にも心と体にも優しいはじめ食堂。
姑の一子と嫁の二三、今や大きな戦力になった万里の三人で、仲良く営んでいます。
そんなある日、万里がはじめ食堂の慰労会で訪れた、新富町「八雲」のスッポンのコース料理に衝撃を受けて──
四十万部突破の大人気シリーズ、文庫オリジナル。
どの巻からでもお読みいただけます。
感想・レビュー・書評
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食堂のおばちゃんシリーズ11冊目。
姑の一子と嫁の二三が切り盛りする、はじめ食堂。
万里が参加してから六年半が経過。
その歳月に培われた料理の腕前、隠し味は人の縁。
迎えるのは新たなる展開。それは旅立ちの時。そして、始まり。
第一話 夜のお茶漬け・・・二三へ同級生から引きこもりの相談が。
万里は言う。人は変わると。そう、納豆茶漬けの驚きのように。
第二話 師走の目玉焼き・・・再開発計画が突然浮上し、立ち退きの
危機がはじめ食堂を含めた近隣に。心が揺れる師走。
第三話 戦う鴨めし・・・ヴァレンタイン特別ランチは白いオムレツ。
再開発計画の不安を消す客の笑顔。そして突然の好転が。
第四話 スッポンで一本・・・春は旅立ちの季節。メイも新たな
一歩を踏み出す布石に苦悩している。そんなとき、
はじめ食堂の面々が慰労会で入った店での味への衝撃。
日本料理は引き算の美学。
第五話 旅立ちの水餃子・・・4月、はじめ食堂に転機が訪れる。
若き二人の旅立ちと未来に、幸いあれ!
<巻末>食堂のおばちゃんのワンポイントアドバイス・・・レシピ。
最後に一言・・・今回は特に手間いらずが揃っていると。
優しい心遣いが味付けになる大衆食堂での、人情話短編集。
秋から春の季節に寄り添う中での物語は、季節の味で彩られる。
認知症、引きこもり、再開発計画とマンションの手抜き工事、
街の変化等の、昨今の話題も味付けにして話が展開します。
そして、何時かと気を揉んだ旅立ちの時が。
新たな一歩には葛藤もあったと思うけど、勇気ある決断が大事。
それを後押ししてくれる常連さんたちの存在も良かったです。
今後の展開に、期待します。 -
佃の再開発の話が浮上!食堂のみならず酒屋や魚屋はどうなる?意外な結末に。
スッポンは万里にどんな影響をもたらしたのだろうか。
今回の結びは万里とメイの門出! -
万里君の旅立ちとか、再開発の話とか、ちょっぴりドキドキしながら、でもきっと悪い方には向かわない安心感を持って読める。
気になったレシピは白いオムライス。検索すると実在してた。
あと、すぐにでもできそうだけど、ちょっと勇気が必要な「納豆茶漬け」。
とりあえず、ほうじ茶買いました。 -
一つの大きな節目!!!!
いくつになっても新しいことに出会えるって素敵やなぁ -
通うお客様にとっては「いつもそこにある」安心の場所であろうはじめ食堂。今回は大きな変化の時が訪れる。次の巻が今から楽しみになる。
それにしても。仕事とはいえ、80代と60代の女性が毎日こんなにたくさんのメニューを提供しているなんてすごいエネルギーだなと。50代に入ってレパートリーがワンパターン化してきて、ご飯考えるの面倒!という私には、このおばちゃん達のような存在が近くにあったらな〜と読む度に思う。 -
嫁姑の一子、二三、バイトの万里の3人が営むあったかい食堂and居酒屋。
今回は万里くんの旅立ちのエピソードが。
どの巻から読んでも楽しめる、あったかい食事と人間模様が楽しめるシリーズです。 -
著者の作品は、お腹が空いている時に読むのは危険(笑)
深夜に、色々と食べたくなっている。。
今回は、万里が旅立つ。
ああ、とうとうかーと思うと共に、その意気込みの凄さに、本気度が伺えて、がんばれよ!と、強く背中を押して送り出したくなった。
万里がいなくなると、食堂の二人は、かなり忙しくなるはず。
そこにメイちゃんが入ったとしても、しばらくはてんてこ舞いだろうな。
でも、頑張ってほしい食堂である。 -
佃の食堂兼居酒屋「はじめ食堂」を舞台にしたヒューマンドラマ。
シリーズ 11 作目も5話構成で、第1話が表題作。
* * * * *
山口さんの作品の中では最も好きなシリーズだけれど、今回はいただけなかった。
それは、作品の売りである人情を描くための「タメ」が足りなかったからで、珍しくバランスがよくない構成だったと思います。
本巻のメインは第5話に配された万里の巣立ちでしょう。
はじめ食堂の厨房を任されて6年。万里は今や食堂になくてはならない見事なシェフぶりを見せるまでになりました。それまでどんな職についても長続きしない、グータラ極楽とんぼだったとは思えないほどです。
一子や二三に信頼され常連客には愛される今の万里は当然、仕事にも食堂にもそして人間関係にも離れがたい愛着が湧いているはずです。
なのに修業のためとはいえ食堂を離れる決心をするまでが、あまりにもあっさりしすぎているように感じました。万里はもっと誠実でまっすぐな人柄なのではなかったのか⁉
本来ならもっと苦悩する姿が描かれてしかるべきで、本巻全編を通してのテーマにしてもいいくらいだと思います。
例えば佃のはじめ食堂のある一帯の再開発話が持ち上がり、食堂存続の危機に見舞われる話をただのドタバタで終わらせず、万里にも身の振り方を真剣に考えさせる筋立てにするなどの工夫があってもよかったのではないでしょうか。
それをしなかった結果、万里が思いつきや勢いだけで行動したように映り、万里という人間を軽く薄っぺらく感じさせてしまっています。まずこれが惜しい。 ( 三原をフォローに使っていましたが、焼石に水の感じです。)
次に修業先となる割烹八雲の主人も簡単に引き受けすぎています。
店の佇まいや接客ぶりから、主人は思慮深く練れた人柄のように見受けられます。だから、客として1度来店しただけの人間を軽々に雇い入れたりはしないはずです。
雇うにしても、はじめ食堂を訪れ万里の仕事ぶりや料理人の適性を見てからのことにするに違いありません。 ( 味の継承を考えるなら尚更でしょう。)
今後も登場しそうな人物なだけに、この展開も惜しいと思いました。
さらにメイが万里の後釜として食堂に入ることになるという運びも、無理に取ってつけたように感じる展開です。
ともかく残念さが残る作品でした。