救いの森 (ハルキ文庫 こ 15-1)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 67
感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758444842

作品紹介・あらすじ

児童保護救済法が成立し、いじめや虐待、誘拐など、命の危険を感じた時に起動させると児童救命士がかけつける「ライフバンド」の着用が子どもたちに義務づけられた。
新米児童救命士の長谷川は、先輩救命士の新堂と「ライフバンド」の検査で出向いた小学校で、わざと警告音を鳴らす少年と出会う。
深淵に沈む少年の声を聴くため、長谷川は調査を続けていくと、隠された真実が明らかになっていく──。
未来を支える子どもたちを守る、救いと希望の物語。待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 小林由香『救いの森』ハルキ文庫。

    子供たちを救おうとする新米児童救命士の奮闘を描いた連作形式の作品。推理小説のような一面もあり、面白い話もあるのだが、余りにもぶちこみ過ぎた最終話が全てを壊している。

    最近、親が子供を虐待したり、育児放棄したり、虐めによる子供の自殺など悲しい報道をよく目にする。少子化が加速し、かつて国の宝と呼ばれた子供たちは減少の一途である。

    児童保護救済法が施行され、虐めや虐待、誘拐など児童が命の危険を感じた時に腕に巻いた『ライフバンド』を起動すると児童救命士が駆け付け、児童の命を救うという架空の日本が物語の舞台である。

    『第一章 語らない少年』。自分の窮状をなかなか口に出来ない少年。やる気が無いように見えた先輩の新堂は全てを見越していたのか……なかなか面白い。

    ある日、新米児童救命士の長谷川が先輩の新堂と小学校にライフバンドの検査に行くと、わざとアラームを鳴らしたと見られる一人の児童が気に掛かる。長谷川が児童の調査を進めると隠された真実が明らかになる。★★★★★

    『第二章 ギトモサイア』。またも冷静な目で子供の背後にある問題を見出だす新堂……このエピソードは普通だった。

    行方不明になっていた少女を救助した長谷川と新堂。少女が口にした謎の言葉『ギトモサイア』……少女が独りで抱える問題は……★★★

    『第三章 リピーター』。少しずつ明らかになる新堂の過去。『救いの森』とは……余りにも切ない物語。

    3回もライフバンドを使用した少年は学校で虐めに合っていると話すが……★★★★

    『第四章 希望の音』。最終話。新堂と長谷川に訪れた最大の危機。余りにもぶちこみ過ぎて、お涙頂戴の嘘っぽい物語になっているように思う。

    新堂の少年に対する激しい暴力行為が明らかになる。しかし、それは……★★

    ~蛇足~

    日本経済の疲弊と少子化

    政府の労働者派遣法の施行により非正規雇用が加速し、若者たちを含む国民の収入が減少していく。これに加えて外国人技能実習生など海外からの安価な労働力がさらに収入減を加速する。国民の収入が減少すれば税収も減少するのは当然で、政府は真っ先に社会保障費を削減する。

    収入が減少し、社会保障も手薄な状況に将来を見通せず、結婚しようという若者は減少、少子化が加速するという負のスパイラル。政府が今さらながら出産費用の補助や児童手当を充実させても子供が産まれないことには全くの無意味である。

    かつては日本企業の正社員の時間単金はアジア諸国の5倍とか10倍とか言われていたが、今や2倍程度。日本のアルバイトの時給と変わらないくらいまで格差は縮まっている。つまりは日本の労働者の価値が確実に下がっているのだ。それなのにBCPなどと理由を付けて、まだ海外展開を図ろうとしている企業があることに驚くばかりだ。これもまた負のスパイラル。

    本体価格720円
    ★★★

  • 児童保護救済法が成立し、いじめや虐待、誘拐など、命の危険を感じた時に起動させると児童救命士がかけつける「ライフバンド」の着用が子どもたちに義務づけられた。未来を支える子どもたちを守る、救いと希望の物語。(e-honより)

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著者プロフィール

1976年長野県生まれ。11年「ジャッジメント」で第33回小説推理新人賞を受賞。2016年、同作で単行本デビュー。他の著書に『罪人が祈るとき』『救いの森』がある。

「2020年 『イノセンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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