受験英語をバージョンアップする ―ずっと使える英語力への15 の Tips― (一歩進める英語学習・研究ブックス)

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  • 開拓社
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758912211

作品紹介・あらすじ

本書は学校現場の経験×言語学の観点を踏まえ、今よりも一歩進んだ英語学習を提供します。中学・高校の現場で出会う「英語学習の躓きやすいポイント」から様々な英語の表現を紹介。さらにはan Einsteinやnor he meのような「入試で見かけるちょっと変わった表現」を英語学・言語学の知見から紐解きます。学校英文法では十分に語られてこなかった現象を学び、「ワンランクアップ」の知識を身に付けて、あなたの英語をバージョンアップしませんか?

感想・レビュー・書評

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  •  私立中高の教員で生成文法を専攻していた著者による、受験英語の意義、学校文法の改善点、英語学との接点。第I部は文法とは、英語学習とは、という話。第II部は「入試英作文を通して学ぶ英語表現」で、受験生の間違いやすい表現を取り上げて正しい表現例を解説、第III部は現在の学習文法では解説が不十分なところを英語学でどう解説されているかを紹介、という構成。
     本書の大きなところは中高生に英語を実際に教えている先生が、言語学との接点を語っているというところで、入試の英語が素材の大部分になっていることからも、教える必要性を説いている部分には納得できるところもある(と言っても優秀な進学校の先生、という意味では日本の大部分の高校生とは事情が違うのだけれど)。ただやっぱり個人的に一番面白いのは第II部の入試英作文、のところかな。竹岡先生の本の内容とも共通するような、受験英語の要点、盲点が解説されている部分が、直接指導に活かせそう、という意味では面白かった。
     あとは断片的に気になったところのメモ。”I didn’t know you could play the guitar so beautifully.” (p.92)は、時制の一致だったら1回きりのこともcouldって使えるんじゃなかったっけ?って思った。run water into...で「水を注ぐ」(p.147)っていう意味があんのか、とか「server(切断する)という動詞は100万語につき9回の頻度ですが、動詞の定義は4つしかありません。」(pp.157-8)ってserverの動詞って調べても辞書にないなあ、とか思ったり。「受動態を作る際に、要素の移動という概念は想定されていません。」(p.198)とあるけど、今では批判される能動文と受動文の書き換え問題って、要素を移動させるものなんじゃないかな、とか思った。間接疑問文の縮約のことはスルーシングと言うらしく、「sluiceは『(材木などを)水路に流して送る』という意味なので、スルーシングで省略される語句の多さとsluiceのイメージが重なってこのような名前が付いたのかもしれません。」(p.166)ということらしい。We knew that something was terribly wrong, but had no idea what. とかWe need to know why.みたいな文の省略現象がスルーシング、と呼ばれるのを初めて知った。(23/09/13)

  • 受験英語というと、実際には使い物にならないというイメージがある。





    しかし受験英語の世界も変化してきている。英語長文は、著者によると英語圏の人々が読んでいるものを題材にしている。




    題材にしている英文は、2017年度の大学入試を見ると、早稲田大学は英国の週刊誌『The Economist』や『Sapiens』(Yuval Noah Harari 2015)(邦題『サピエンス全史』)から出題していた。




    そして岐阜大学の医学部の問題では、MITの入学要項から出題していた。




    受験英語で必要な語彙について、学習指導要領では中高で合わせて3000語と設定されている。




    大学受験ではさらに必要となり、一般的に4000語から5000語程度、難関大学になると6000語から8000語程度、場合によっては10000語もの語彙力が必要になるそうだ。




    とは言っても、洋書、新聞、雑誌、ニュースを見たり聞いたりするには、学習指導要領の範囲では話にならない。




    語彙力はいくらあっても困らない。




    入試英作文を通して学ぶ英語表現では、日本語から英語にする際に、どうしても日本語に引きずられる場合や、英語特有の表現につい学べる。





    受験英語も活用次第では役に立つ。

  • 英語を学ぶ大学生、現役の英語教師に読んでほしい本

    大変勉強になった。特に冠詞の章についてはほぼ無知で、読んでよかったと思った。Way構文、結果構文、描写述語、場所句倒置構文、話題化、空所化、語彙意味論における語彙概念構造等、幅広い文法項目から大学入試に出でくる英文を素材にして検討されていた。
    また、第II部も英作文の指導に生きる有益な記述が複数あった。再現答案と改善答案が両方掲載されているため、添削のポイントが分かりやすい。

    何よりも唸るのか著者の見識の高さである。英語教育に関わる分野から英語学の統語論から語彙意味論、認知言語学まで、幅広い観点から英語の実体が説明されている。

    大学入試を見ていると、高校レベルの総合英文法書の説明では対応できない英文に出会うことがある。はたして解説すべきかどうか判断に悩むことがある。大学で学ぶ英文法の知識を伝えたいと思う気持ちがある一方で、教えすぎになるかもしれないと自分を引き止める気持ちになることもある。しかし、いずれにせよやはり教員としては教える/教えないは別にして知識として知っておかないと始まらない。英語教育に携わる者の教養として、この本を読んでおくと安心なのではないかと思う。

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著者プロフィール

1982 年生まれ。現在,大阪星光学院 中学・高等学校 教諭。神戸市外国語大学大学院 英語教育専攻 在籍(第2 言語習得理論)。京都外国語大学大学院 英米語学専攻修了(生成文法)。TOEIC 990 点、英検1 級。主な著作:『Seek Next シリーズ3-5』(2022、第一学習社、単著)、『Vision Quest 総合英語 Ultimate 2nd edition』(2022、啓林館、共著)、『英文解釈のテオリア』(2021、Z 会、校閲)、『Active Practical Reading 完成編』(2021、第一学習社、単著)、『Active Writing Complete Course』(2021、第一学習社、単著)、『Active Writing Basic Course』(2021、第一学習社、単著)、『Active Practical Reading 基本編』(2020、第一学習社、単著)、『総合英語able』(2017、第一学習社、共著)、『全国大学入試問題正解』(旺文社、解答解説執筆)、など。

「2022年 『受験英語をバージョンアップする ―ずっと使える英語力への15 の Tips―』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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