肥満は進化の産物か?: 遺伝子進化が病気を生み出すメカニズム (DOJIN選書)

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  • 化学同人
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784759813418

作品紹介・あらすじ

ヒトの病気の原因を進化の過程に求める「進化医学」。本書は遺伝子のレベルから進化と病気の関係をとらえる。遺伝子は長い時間スケールで変化(進化)する。その変化が病気と結びつくとはどういうことか。ビタミン合成の能力を失ったことによる壊血病、尿酸が抗酸化の機能を肩代わりしたことで起きる痛風などの例を引きながら、遺伝子の変化が即座に病気に結びつくわけではなく、生活環境の変化スピードとのミスマッチによって発生するという視点を提供する。

感想・レビュー・書評

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  •  肥満は進化の産物か?答えは肯定だ。このことからも、進化は進歩を意味しないという事実が垣間見れることだろう。 

     進化の機構は分子レベルと集団レベルの機構に概ね2つに大別できる。
    前者の原因は「突然変異」である。突然変異は通常DNAの複製ミスの蓄積によって引き起こされる。後者の原因は「環境」だ。環境によって、遺伝子の働きが重要になる。 例えば食物によってビタミンCを取り入れることが出来、それが常態化すれば、体内でビタミンCを生成する必要がなくなる。だが、一度環境からビタミンCの供給が絶たれると「壊血病」を引き起こすことになる。高血圧や糖尿病も、ヒトが進化した過酷な環境下では必須だった体内にエネルギーや塩分・水分を蓄えておくという機能が、文明が発達し、食事の質が大きく変化した現代ではむしろマイナスに働いてしまう結果とした引き起こされる。過去、有利だった能力が、現在ではむしろ人の健康を脅かすことなるのである。
     なぜ現代人は環境に適応するように進化できなかったのだろう?それは端的かつ明瞭で、文明すなわち環境の変化スピードが速すぎるからである。DNAの変異速度は、すなわち一塩基が別の塩基に変わるのは10億年に1度の出来事なのだ。その変異が全人類に共有されるには。とてつもない時間を必要とする。進化のシステムを人間は超えているという事実を認識すべきだろう。
     しかし、著者のいうように「環境の変化のスピードを遅くする」というのはほとんど不可能だろう。もしこの進化と環境のギャップを埋め、諸所の問題を解決する方法があるとすれば人為的な生態変化、すなわちバイオテクノロジーによって遺伝子を変化させることだ。これは、近い将来確実に起こることだろう。それとともに多くの論争を生み出し、幾多の問題を乗り越えなければならないことは論を待たない。

  • ISBN-13: 978-4759813418

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