- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784760130849
感想・レビュー・書評
-
本著は、亡くなった久世光彦さんを悼んでつくられた一冊である。
生前の久世光彦さんに、一度だけ取材させていただいたことがある。その時、「葬式の準備をしている」と言い、カメラマンに「葬儀に使えるような写真を撮ってくれ」とおっしゃっていたことが忘れられない。冗談だと思っていたが、彼は死を予見していたのだろう。それを思うと、胸がいたむ。
たくさんの方々が、久世光彦さんとの思い出を語っている。中でもビックリしたのが、『寺内貫太郎一家』の命名の由来。戦中の大将・寺内正毅と、終戦時の総理・鈴木貫太郎の名を合わせたもの。久世さんと向田さんらしい命名だ。
昭和十九年くらいの平均寿命は、49歳くらいという話も胸を打つ。今と異なり年齢順に亡くなっていくのではない。生まれてすぐ栄養不足で亡くなったり、思春期で結核になったり、戦争に行ったり。若者が「生」を全うできない。「死」が身近だから、あの世代の方々は「死にたい」などと言わないのかもしれない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久世さんと夏彦さんの対談があったのに驚いた。
鹿島茂さんとの対談も。
鹿島さんとの対談は、お互いに好きなものをひたすら並べあっていて、楽しそうだった。
それについて深く語るのではなく、記憶の中のものを虫干しにするように、とにかく取り出して並べる。こういうことをするのは楽しいよね。
追悼文なんていらない、と思ったけれども、久世さんの書かれたものではなく、他の人の視点からの久世さんを知るのもおもしろいと、ものによっては感じられた。読んでいて、久世さんが亡くなったことを再認識してしまって、悲しくなる。
この本のよい点は、対談などであげられていた詩や小説が、一部掲載されていること。
いい構成だ。その本が読みたい!と思っても、手に入らない場合もあるし、その読みどころを語られた直後に、一番読みたくなるんだから。