- Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
- / ISBN・EAN: 9784761254292
感想・レビュー・書評
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アサヒビール名誉顧問 中條高徳氏の自伝的なアサヒビールの復活劇。陸軍士官学校で終戦を迎え、学習院大学へ再入学。そしてアサヒビールへと。アサヒビールはじりじりとシェア凋落するなかついに生のスーパードライで大逆転した時代の中心人物のお一人。孫子などの古典や作戦要務令など軍事用語、マーケティング用語を駆使して当時の様子を生き生きと物語る。
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スーパードライというブランド、ドライビールというジャンルを立ち上げ、
アサヒビールを復活させた著者が、
ビジネスの考え方や心構えを、兵法書の引用を中心に自身の経験を語る。
昭和末期の内容であり、本書の発刊も1994年であるため、内容の古さは否めない。
しかし、決して色あせることのない兵法書の引用は、
なんらかの部分で読者の琴線に触れることは間違いなく、
自分の考え方・方向性を見直す良いきっかけになる本であろう。
ビジネスに絶対はない。
固定観念の恐ろしさを感じ取ることが出来る本書は読む価値があると思う。 -
兵法によれば、強者と弱者との戦いにおいて、弱者が勝つためには①一点集中、②少数精鋭、③個別撃破、④奇襲戦法の4つの方法があると教えている。ナポレオンは一点集中の戦法を用い、敵の兵力をけん制して分散させ、決戦の場に自軍の兵力を集中して勝利をおさめた。
経営理念はややもすれば恰好のいいものとして形骸化されがちであるが松下幸之助氏は違った。
「事業経営においては、たとえば技術力も大事、資金力も大事、また人も大事といったように大切なものは個々にはいろいろあるが、一番根本になるのは、正しい経営理念である。それが根底にあってこそ、人も技術も資金もはじめて真に生かされてくるし、また一面、それらはそうした正しい経営のあるところから生まれてきやすいともいえる。だから経営の健全な発展を生むためには、まずこの経営理念を持つということから始めなくてはならない。」
大声を出して士気を奮い立たせる効果
声を大きくすることは単純で素朴な行為であるが、組織行動においてはきわめて大きな効果を発揮する。自らのフラストレーションの解消に役立ち、相手を圧倒し、内なる者たちの勢いを増す。逆に「小声の三原則」といって声が小さいのは、秘め事か、悪いことか、自信がないか、そのどれかに相場は決まっている。
「任怨分謗」
任怨:何か思い切った新しい仕事をするときには、決まってだれかの怨みを買う、しかし、そうした怨みをいちいち気にしていたのでは、とても大事業は遂行できない。だから、あえてその怨みを受け、中傷の火の粉を恐れるな、という意。
分謗:敵の攻撃を一身に受けている人間をほったらかして逃げてはいけない、いったん志をともにした以上は、一心同体となって、怨みを分けて受ける気概がなければいけない。
戦争は推測の世界であり、データの四分の三までは不確実である。知力をもって真相を見通すとともに、勇気と自信をもって不確実性を克服しなくてはならない。byクラウゼウィッツ
決定には危険性と不確実性をともなう。したがって決定のためには勇気を必要とする。byPFドラッカー
智者というのは、利には害を、害には利をまじえてものごとを熟慮するものである。ピンチがふりかかっても、チャンスになることを考えて努力すれば、ピンチはチャンスに変えることができる。困ったなとか、弱ったななどと、ものごとを悪く考えていると、事態はますます悪くなる。by孫子 -
アサヒスーパードライの生みの親である中條氏が、アサヒビール再生に向けて取った様々な戦略/戦術は、すべて兵法に基づいて実行されていた。
兵法と聞くと縁遠い感じがしないでもないが、「一点集中の理」や「勝ち戦の時こそ援軍を出せ」など、ビジネスに応用可能ないくつもの戦法が紹介されている。
惜しむらくは、アサヒ再生の歴史に沿って述べられているため、網羅性の点では疑問が残るところである。初心者コースから上級者コースまで、ビジネスの様々なケースを想定しながら、整理して述べれば、とても面白い教科書になるのではないか?