- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784761526238
作品紹介・あらすじ
この10年全米で一番住みたい都市に選ばれ続け、毎週数百人が移住してくるポートランド。コンパクトな街、サステイナブルな交通、クリエイティブな経済開発、人々が街に関わるしくみなど、才能が集まり賢く成長する街のつくり方を、市開発局に勤務する著者が解説。アクティビストたちのメイキング・オブ・ポートランド。
感想・レビュー・書評
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街はそこで暮らす人々とともに成長し、変容していく。
東京の西部に広がる多摩丘陵、そこにニュータウンが誕生したのは半世紀前になる。
行政を中心とした街づくりの中、車社会、職住分離、核家族といった時間とともに変容する生活様式に、街は次第に魅力を失い多くの課題を抱えるようになっている。
都市計画(アーバンデザイン)、街の再生にはどのようなアプローチが可能か。
ポートランド”世界で一番住みたい街をつくる”という表題に魅かれて本書を読み進めました。
アメリは西海岸、オレゴン州ポートランドは今では自然豊かなコンパクトな街づくり、持続的発展可能(サステイナブル)な街づくりを目指し、多くのクリエイティブな人を魅了しているそうです。
ポートランドも例外ではなく60年代の急速な車社会、工業の発展で豊かな自然は荒廃し、市街地の住環境も悪化していました。街の再生プロセスで興味深いのは、州政府の下に置かれた複数の都市をまとめるメトロ政府とトライメットという組織。ここで数十年先のマスターコンセプトを作るのですが、再開発に伴う利害関係者(行政、市民、事業者)で長期にわたるワークショップを開催しコンセプトを煮詰めていくプロセスがあります。
現在では日本でも市民参加の説明会等もありますが、やはりマスタープランの説明会というイメージが強い。参加する市民の意識も高くないと、利害対立を超えた住みやすい街づくりコンセプトはできないのですかね。 -
著者の山崎満広氏は、1975年茨城県に生まれ、1995年に渡米し、南ミシシッピ大学院を修了後、米国の建設会社勤務、コンサルタント、政府系経済開発などに従事し、2012年からポートランド市開発局で国際事業開発等に携わっている。
ポートランド市は、米国西海岸のオレゴン州の北西部、シアトルとサンフランシスコの間、太平洋からは100㎞ほど内陸に位置する街である。人口は約62万人(船橋市や鹿児島市とほぼ同じ)、周辺都市を含む都市圏人口は235万人で全米24番目の規模である。
そして、「全米で住みたい街No.1」の座を過去10年間キープする街として、そのサステイナブルなコンパクト・シティというコンセプト、リベラルでカジュアルなパシフィック・ノースウェストの文化(アート、ファッション、音楽、フード等々)とともに、今では日本でも注目を集めるようになっている。
ポートランド市の特筆すべき点は、サステイナブルな生活をベンチマークとしている都市(サンフランシスコ、シアトル、ボストンなど)の中でも一番規模が小さいが、単に街が小さいのではなく、「街を小さく保とうとする政策を推進してきた」ことである。それでいて、同規模の他の都市より都会的なダウンタウンがあり、交通インフラが整い、環境にやさしい建物、歩いていて楽しい街路が人びとを引き付ける。更に、この地に引き付けられた人びとが生み出すカルチャーは、いつしか世界中の人びとの注目を集めるようになった。
私が本書を読んで驚いたのは、ポートランド市も1960年代までは米国の多くの都市と変わらない、環境に特段の配慮をすることなく工業化を進める都市だったということである。その頃に「サステイナブル」などというコンセプトがなかったことは、少し考えればわかることなのだが、他の都市と変わらなかったポートランド市が、ヴィジョンをもったリーダーのもと、多くの市民や企業が協働することによって現在のような街に生まれ変わったことは、とても興味深いし、日本においても、人びとの意識と行動により魅力ある街づくりは可能であることを改めて感じたのである。
更に、そのような魅力的な街には、魅力的な人びとや企業が集まり、一層魅力的なものを作り出していく。。。
ジャーナリストのようなライターではなく、現役のポートランド市開発局担当者が、街づくりの専門的・実務的な部分に踏み込んで書いているため、一般向けの書籍とはやや趣を異にするが、そういう意味では、実際に都市開発・再生に従事する人びとにとっても大いに参考になるように思う。
ポートランドに行ってみたい、そして、自分たちの住む街もそんな素敵な街にしてみたい、と思わせる一冊である。
(2019年11月了) -
ポートランドの開発局に勤める日本人、山崎さんの著書。お手伝いした天神明治通り街づくり協議会のフォーラムで仕事がてらお話は聞いていたけど、だいぶ時間も経ってしまったので復習も兼ねて読了。
ポートランドの街づくりについて、これまでの成り立ちと現在の街づくりの実務についての記載。
街が荒れ果ててしまうという危機感から、住民の街づくりへの参加意識が強くなり、それは今も風土として残る。行政の仕組みも、大きな視点から方向性を定めるメトロ政府と交通を司るトライメット、そして開発局と万全の体制であり、かつ住民意見をしっかりと吸い上げている。だから世界一住みたい街ができて、今もよりよくなっている。
誰かがどうにかしてくれる、、、じゃなくて、歴史がみんなの自立意識を育てた結果が今であり、未来になっていっているのがポートランド。
では福岡に活かせることってなんだろう?
制度が生まれた歴史がないままに、そっくりそのまま制度を持ってきたって、一時的にはうまくいっても根付くものにならない。
福岡の歴史の上にある仕組みってどんなものなのかなと考えてさせられた。
黒田藩、明治以降の堀を埋めたりの開発、一面ほぼ焼け野原となった戦後からの復興とその象徴のビル、そして今、直面している再開発。
ソフト面でも、お祭りなどの文化に加えてエリアマネジメントの組織。
民間と行政とそして市民の立場。
今は民間の立場であって、引っ張ってくれてるリーダーをお手伝いしている状況。
どうしたらいいのかと行き詰まることも多いけど、色々なことを学びながら今の場所でできることを精一杯やる。でもしっかり学びながら考えながら仕事をしよう!
とりあえずポートランド行きたい。笑
行ってたらまたこの本を読み返してみたいなぁ〜 -
SDGs|目標11 住み続けられる まちづくりを|
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/699484 -
ポートランド市の開発局につとめる筆者が、同市の都市づくり政策の仕組みや歴史をまとめて紹介してくれる本。
70年代から始まった市民や企業が参加する都市計画の仕組みや、ポートランド市開発局(PDC)によって進められたTIFやCBDといった開発資金調達の仕組みなど、いずれもコンパクトに事例を挙げながら説明をされていて参考になった。
2000年代に入ってからは、産業振興や海外へのノウハウ輸出にも取り組んでいるということで、常に世界の潮流の10年先を行っているような印象を受けた。
産業振興については、大企業の工場を誘致して雇用を創出するという方法ではなく、地域に立地する企業のノウハウをいかにビジネスチャンスにつなげるかという視点で取り組んでいるという点が重要であると感じた。
写真やチャートも豊富で理解しやすく書かれており、都市政策のあり方を広い視点で考えるのによい本であると思う。 -
配置場所:1F電動書架C
請求記号:518.8||Y 48
資料ID:W0187854 -
具体的な団体名や、制度が多く出てきて少し読み進めづらかったけども、
ざっくり言うとポートランド流まちづくりの肝は、政策を議論したり新しいチャレンジに予算をつけるコミュニティが複数機能しているということ。
どのコミュニティも経済とサステナビリティの両立を念頭に置きながら、それぞれ目的が違う。
40年の歴史の中で、政治、経済、まちづくりの分野で何人もの人がポートランドを戦略的に変えていこうと奮闘した結果が、いまの人気の理由になっている。
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ポートランド開発局で働いていた山﨑さんの書いた本。
5−6年前からポートランドのことを雑誌などで見ていたけれど、何となく敬遠していたのだが、本書を読んでやはり学ぶべきことは多い、と思った。日本にいると気づかないが、都市というのは作り出せす、作り直せるるものなんだ、ということが分かる。気づきに感謝。
タイムラインで拝見し、驚きと嬉しさで書き込んでいます。
また楽しみにレビューを読ませていただきますね。...
タイムラインで拝見し、驚きと嬉しさで書き込んでいます。
また楽しみにレビューを読ませていただきますね。
どうぞよろしくお願いします♪