- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784766426953
作品紹介・あらすじ
――戦略的自律というDNA――
日本にとって「重要だが理解できない国」インド。
中国が存在感を増すなかで、アジアの一大パワーを狙う、
インド外交の見えざる行動様式をあぶりだす。
感想・レビュー・書評
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「自由で開かれたインド太平洋」やら「クワッド」やらで急におなじみになったインド。だが、インドの外交原理とはなんぞや?と言う疑問にちょうど良い本。質も量も文体も(値段も)ちょうどよかった。
米国には「世界最大の民主主義国」と言い、
ロシアには「世界最大の多民族、多言語、多宗教国」と言い、
中国には「世界最大の発展途上国」と言うインド。
だが、国民国家としては脆弱な基盤という側面や、なによりインドの勢力圏外(グローバルな課題)に対しては中国と同じく「現状修正勢力」という側面もあるインド。
それでも、インドをしてインドで有り続けるためには、拡大する中国の圧力が、これまでの全方位善隣外交を続ける選択肢をとりあげつつある。
「自由で開かれたインド太平洋」のためには、インドは掻くことのできないキーストーンだが、そのためにはインド自身の変革も必要なんだなと改めて。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
書名のとおり、印外交の背景にある論理を主に論じる。本書の議論を端的に言えば、大国志向(より正確には、域内では大国として現状維持を、域外では途上国としてルールの修整を求める)、自主独立外交、「アルタ的現実主義」(軍事・非軍事的なあらゆる方策をとるプラグマティズム)が独立以来あるとされる。ネルー時代の理想主義が冷戦後に現実主義に変わった、というよくある言説と異なる像を示すものだ。
今世紀に入り、米印・中印が共に接近し、またその接近には共に限界があると本書は指摘する。印にとり、投資・貿易面では米中ともに重要。同時に、対中警戒を考えれば米との連携が必要な一方で、自主外交、武力介入反対、途上国意識、世界の多極化といった点ではむしろ中国と共通する。印と結んで対中牽制、などと単純化できそうもない。
一国の行動を見る際にすぐ伝統や文化に帰着させるのは、時には単純化しすぎではないかと思う。しかし印についてはそもそも予備知識があまりなかったため、本書から得るものがあった。
ほか、対スリランカ・パキスタン・バングラデシュそれぞれの関係については、印国内の隣接州の存在、エスニック分離主義を無視できないこともよく認識できた。 -
インドの扱いに困っているシリーズ。
最適の盟友たる国がいないから、この国は同盟を作らないということが分かった。
日本に期待することとしてインフラ整備が挙げられているが、インド特有の謎の上から目線により、日本には技術を売ることくらいしかできないだろうとしか思っていなさそう。
Make in Indiaを謳いつつ技術が無いけど、タダで技術が手に入る(しかも円借款というタダで作ってもらえる)。
ぜひとも必要という気概のない国に、なんで技術供与をしなければいけないのか。
とはいえ、将来的には米中に次ぐ経済大国になる見通しのインド。
こんな国に付き合っていくのはハードモード過ぎる。 -
インド自体について、実はあまり知らなかったというのが実際のところで、この本を読んで多くのこと、特にインドの対外政策がどうなっているのかといったことを知ることができた。
建国以来の自主独立外交へのこだわり、アルタ的リアリズム、脆弱な国民国家、弱い連邦政府、パキスタンとの持続的紛争、全方位型戦略的パートナーシップなどのキーワード。
日本にとっての存在感を高めてきたインドは、クアッドの枠組み等を通じて準々同盟国のように思ってしまいがちだが、オーストラリアとも圧倒的に違うインドの対外政策の源泉を知らないと、勘違いして痛い目を見てしまう。