日本の自治体外交―日本外交と中央地方関係へのインパクト (自治総研叢書)

  • 株式会社敬文堂
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784767001647

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  •  タイトルどおりの本。発刊当時オーストラリア、アデレード大学アジア研究センター長だった研究者による日本の地方自治政策の研究書である。日本の地方自治、中央地方関係を特定の政策を通して俯瞰するにはよい。問題意識、興味を育て知識を充実させるための教科書にもなりうるとも思う。
     グローバル化(昔だと国際化)は、字義どおりに言えば国家規模の現象なのだが、通信・運輸サービスが充実している現在において個人に大きく影響している。そうなると、国家なんてゲートウェイの機能しかもたず、日本の制度からいって自治がどれほど関与できるのだろう。
     そんな問題意識を持っていたところ、たまたまこの本に出会ったのだ。
     本書は、序論からはじまり、外交を国際交流、国際協力、経済外交、ハード外交の4つに区分し、各区分において概要と歴史的背景に簡単に触れたのち、現憲法・現自治体制下の自治体外交について、客観的な記述をしている。
     興味を惹いたのは、国際交流から国際協力への変遷である。特に本書では、「国際貢献」の核であるODAに姉妹都市交流の発展として自治体が関与したことへの評価に触れられており、事業そのもの、あるいは外交的成果の評価とは別に、自治体あるいは地方行政における意義が明らかにされている。
     私自身は、ODA関連事業のため、地方の吏員…つまり県庁・市役所職員…が、JICAや財団法人・社団法人等へ出向するなどのケースが希少ではあるが、一定数あると認識している。このようなケースにおいて、そもそも自治体は適切な目的とメリット、コスト意識を見いだしているのか分からなかった。本書を読んで、国主導の「国際貢献」に限界はあるものの、プロジェクトを通して草の根レベルの行政運営に参画することは、間違いなくノウハウとして自治体に還元できるものであると認識できた。(まぁ、目的意識とやり方を間違いやすい、そして惰性に走りやすい欠点はあるが。)
     最後に、外交を切り口から、日本の自治体の限界の指摘は興味深い。自治体管轄という地理的制約、自治体組織メンバーの能力と財政面の限界は、他と同様普遍的な限界なのだろう。他に、(市町村の)合併・広域化への潮流への警告は重い。自治体の権限は制約が多く、殊外交面は、姉妹都市交流のような緩やかで象徴的な交流しかできていない。そのような緩やかな外交であっても、戦後から長年にわたり、それぞれの地域が、世界各地に独自性をもって交流を続けてきたことは間違いなく、自治体の消滅は交流も消滅するという警告である。
     報道を真に受けた勝手なイメージだが、日本の市民は、総じて世界への関心が高いという。関心が高い、という評価が、自治体単位の草の根レベルの交流にあったのだとすれば、また一つ、地方行政の効率化が大切なものを失ったといえるだろう。
     著者の動機は特に示されておらず読み取れなかったが、世界から日本を、市民と自治の総体としての日本国を描くというのは非常に意義深く、面白かった。

  • 日本の自治体外交の成果と限界について述べている。冷戦時における個々の自治体の草の根の交流によって、中国との国交正常化に影響を与えたり、友好都市、姉妹都市から経済的なつながりに発展したりというものがある。
    一方で、国との敵対関係も生み出しており、在日米軍の問題、神戸への核を搭載した船舶の入港禁止の事例などがある。
    自治体は近隣の、特に中国との関係が多い。

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