キューブサット物語~超小型手作り衛星、宇宙へ

著者 :
  • エクスナレッジ
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  • Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784767803999

作品紹介・あらすじ

大学の学生たちによって作られた、10cm角の立方体の人工衛星キューブサット。日本初の学生衛星は、今日も地球を回っている。

感想・レビュー・書評

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  • 10センチ角立方体の小型人工衛星、キューブサットを東大と東工大の学生が約4年をかけて2003年に打ち上げ成功したときのドキュメンタリー。

    失敗が許されないハイプレッシャー、自分たちが作ったものを本当に打ち上げできるかどうか確信できない先行き不安、試験・実験機会を無駄にしないよう必要機能を作り上げていくタイトスケジュール、結果的に過労レベルの徹夜・寝不足、、等
    やる気を削ぐであろう要因などたくさんあるのに、それでも諦めずに情熱的にプロジェクトを完遂していく展開に、手に汗を握りながら本書を読み進めていました。

    上記のような要素に加えて、4年の間で卒業や就職でいろいろなメンバーが出入り引き継ぎしていったことも考えると、このプロジェクトを推進していくプロジェクトマネージャーはとても大きな役割だったと思うし、プロジェクトをリードしていくのにどのような姿勢が重要なのかも考えさせられます。

    研究開発、モノづくりに捧げる情熱は計り知れない、すごいですね。

  • 手作りで衛星を打ち上げるという夢の様な事を実現した学生たちの熱意がよく伝わってくる。

  • 先日読んだ本、「人工衛星をつくる」は、キューブサットと呼ばれる人工衛星を題材に、人工衛星開発の解説が行われていた本でした。
    このキューブサットとは、学生が主体となって製作されている、1辺が10Cmの立方体サイズの超小型人工衛星。
    このサイズの人工衛星は、東大の学生チームと東工大の学生チームが世界で初めて開発し、軌道投入に成功しました。

    本書はその開発に打ち込んだ両大学の学生たちと彼らを応援した周囲の人たちを描いたノンフィクションです。

    丁度同じ著者の本で、本書の前編に該当する「上がれ! 空き缶衛星」と言う本があるのですが、こちらでは学生たちが行った空き缶サイズの人工衛星開発がテーマでした。

    本書は、この「上がれ! 空き缶衛星」にも登場している学生たちが、今度は1辺が10cmのキューブサット開発に臨むシーンから始まり、以降、難航を極める開発の過程が描かれています。

    では、以下に簡単に内容紹介。

    当初、日米の大学がキューブサットを開発するはずが、実際に目標を立て、その目標通りに実物を作っていたのが東大チームと東工大チームのみと言う状況になった事や、
    キューブサット打ち上げのために契約し、契約金まで払ったのに、仲介会社がロケット打ち上げを担当する会社と一切契約を結んでいなかったと言う、詐欺に遭遇したりと
    波乱万丈な局面に遭遇する学生たち。

    そして、不眠不休で開発に取り組む彼らが、任された仕事を終えたかと思えば、崩れるように眠りにつく様子。

    極め付きは、本来、命に係わる事態など起こるはずもないキューブサット開発において、液体窒素がタンクから漏れたり、運転をしている学生が睡眠不足のあまり、中央分離帯のゴムポールに車をぶつけたり、北海道の雪道でスリップし、乗っていた車が大破したり・・・と少し間違えば命に係わる場面にも遭遇。

    #本来であれば命にかかわらない事でも、人間の限界に臨めば、それが命に係わる事態になってくるという事でしょうか・・・

    本書では、この様な厳しい状況の中、プロジェクトの成功のため、何が一番大切かを見極め、あらゆる事態に備え、手にしたチャンスは逃さず活用して数々の逆境を乗り越えて行く学生たちの様子とその時にプロジェクトが置かれていた状況が分かりやすく書かれており、数式を見ると頭が痛くなるという方でも十二分に楽しめる内容ではないかと思います。

    #もちろん、数式など一切出て来ません。

    また、逆境の中でのマネジメントに役立つ内容も載っており、特に学生プロジェクトマネージャーの「SNCS(サンクス)」方針

    ・S:ストーリー、だれもが分りやすいプロジェクトの意義付けがされていること
    ・N:ノベルティ、メンバーが魅力を感じる新奇性があること
    ・C:コミットメント、メンバー一人一人に強い参加意識になるような責任が課せられること
    ・S:スピード、魅力が廃れないような速さでプロジェクトを進行させること

    は、社会人にとっても参考になるのではないでしょうか。


    厳しい納期を自らに課し、それを守るため不眠不休の大努力を重ねる。
    それにも関わらず、幾度も延期される打ち上げ。
    その挙句の果ての詐欺の発覚。

    普通であれば、やっていられるか!と言った所でしょうが、それでもあきらめずに最後にはロシアのロケットで軌道投入に成功。

    正に執念、凄いとしか言いようがありません。

    読んでて身が引き締まる思いがする、おすすめの一冊です。

  • 前著「上がれ!空き缶衛星」の、ある意味で続編。本書で描かれるプロジェクトも、東大と東工大の「缶サット」の続編として行われた「キューブサット」の、制作から打ち上げ、宇宙軌道に乗せるまでになります。

    缶サットプロジェクトの方々が引き続き登場し、そこに新たなメンバーが加わります。さらに、缶サットは上空4000mまで飛ばすまでのものでしたが、今回は実際に高度800kmの宇宙軌道に乗せてしまおう、というもの。すなわち、大学生が小型衛星を作り、それを軌道に乗せてしまうわけです。

    缶サットを遙かに超える困難が待ち受け、襲いかかってくるのを学生たちはその度に切り抜け、あるいは諦め、そして前進していきます。当初2年計画のプロジェクトはほぼその倍の期間を閲し、そして遂に打ち上がった衛星は果たして成功するのか……。

    前作同様、丁寧な取材と物語のような筆致で、これがドキュメンタリーであることをたまに忘れさせます。先が気になる展開というか構成も変わらず、ですが結構端折っているのかなと思われる部分も散見されました。まぁ、ある程度の分量で収めるためには仕方のない所業と思いますが。

    クライマックス、ロケットが打ち上がってからの展開は緊迫を極め、本当にドラマを見ているような気分になってきます。学生たちやそれをバックアップする先生たちの思いが伝わってきて、思わず涙ぐみそうになる場面すらあったほど。

    そんな彼らの物語を通じて本書からワシが感じたのは、プロジェクト・マネジメントの根本でした。

    ワシはそもそも「ビジネス書」といわれるものが、苦手というか好きじゃないのですが、本書に書かれた「キューブサット」プロジェクトに取り組む学生たちの姿勢とかは、下手なビジネス書を読むよりもよっぽどプロマネの勉強になる、と思いました。

    いわゆる「机上の空論」ではない、実際にあったことを通じて伝わってくるリアルが、実践的な場で使えるものとしてとても興味深く読むことが出来ます。

    これは、前例のないことを成し遂げた学生たちの物語であり、同時にプロジェクトを成し遂げる苦労と大切さを学ぶことの出来る本当にあった出来事です。様々な面から勉強になった本書に出会えたことに感謝。

    (2010年読了)

  • 日本初のプロジェクトとなった大学生による人工衛星打ち上げ。その夢に懸けた学生たち、そして周りの人々の3年半の軌跡が詰まっています。さまざまなトラブルや失敗をチームワークで乗り越えてゆく彼らの姿に、胸が熱くなること間違いなし!連携サークル「芝浦衛星チーム TASITS」の皆さんもお勧めの本です。

  • 未読

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