放浪のデニム―グローバル経済に翻弄されるジーンズの世界

制作 : 矢羽野 薫 
  • エクスナレッジ
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本棚登録 : 32
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (345ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784767808260

作品紹介・あらすじ

U2・ボノが立ち上げたブランド「Edun」は、ジーンズを支える人々の苦境を救うことができるのか。旧ソ連圏の綿畑やアジアの衣料工場の労働者、ニューヨークやイタリアのデザイナーなど衣料産業に携わる世界の人々を訪ね歩き、複雑な関税制度や貧困・環境問題など、グローバル経済のさまざまな問題点を浮き彫りにした1冊。

感想・レビュー・書評

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  • テーマも良く、題名もうまい。しかし消化不良なやや残念な1冊。後書きで作者自身がこの本を短いセンテンスで伝えるうまい言葉が見つからないと書いてるのを見て納得してしまう。内容的にはチョコレートの真実のデニム版と言ってもいいんだけど。

    帯にはU2のボノが立ち上げたブランドEdunはジーンズを支える人々の苦境を救うことが出来るのかとあるのだが、その話はほとんど出てこない。1本のジーンズを作るには綿の栽培から糸を織り、染め裁断しデザインし縫い合わせるまで数カ国を経ることが珍しくないらしい。そこで問題になるのが多国間繊維協定と言う2005年に撤廃された貿易協定。欧米、 特にアメリカ向けに輸出できる数量を制限する物でMade in xxxは出来た製品が数カ国を経る場合には最終仕上げ地ではない(例えばロゴだけを縫い付けてmade in Japanにできないと考えればわかるだろう)グローバル経済の中で価格を安く押さえられたジーンズができるまでのそれぞれの土地での苦労が描かれている。

    綿花の生産量は中国、インドで世界の半分を占めついでアメリカ、パキスタン、ブラジル、ウズベキスタン、オーストラリアと続く。作中で取り上げられているのはアゼルバイジャンだがインド西部からパキスタン、中央アジア一帯は世界の主要な生産地帯で最近ではモンサントが開発した遺伝子組み換えのBT綿花と言う殺虫剤成分を組み込まれた綿が増えている。BT綿は殺虫剤の使用量は減るが灌漑水を大量に使用するため環境面でもパーフェクトには遠く、毎年種子を買わなくては行けないので農家の収益性が高いと言うわけでもない。アゼルバイジャンでは機械摘みではなく人の手で摘んだ綿が良いとされるが手間賃は安い。綿肺症と言う職業病や農薬被害もある。それでもアメリカの綿花産業が生き残るのは機械化と補助金のおかげだ。

    繊維産業は人手を要するので労務費が安い開発途上国が最初に始める産業の一つだ。最近では中国からバングラディシュやミャンマーなどに移っているがこの本のテーマの一つが搾取工場である。劣悪な労働環境、きちんと支払われない給料、児童労働、汚職により恒常化されている搾取など様々な問題が有るがそれでも繊維産業が来ることは経済発展の一つのステップではある。児童労働に対する不買運動なども有り多くのブランドが委託先を監査しているが、一方ではコストダウンを要求もする。

    いつも思うのだがこの手の本のライターは化学物質が嫌いな様だ。「これを機に化学業界には、より環境に優しい代替物質を必死に研究してもらいたいと思う。1981年以前に実用化された10万種類の化学物質は、現在にも使われているものでさえ、安全に関する検査をほとんど、あるいはまったくしていないのだ。」こういう人たちの言う化学物質の多くは普通に自然界に存在するので問題はだいたいいつでも量と濃度が高過ぎる(時には低過ぎる)ことなのだが。今年のエイプリルフールにアメリカのラジオ局で水道水に含まれるDHMO(一酸化二水素)の危険性を挙げた所なぜそんな危険な化学物質を規制せずに放置するのかと地元の水道局に問い合わせが殺到しDJはやり過ぎとして謹慎処分になっている。化学物質の正しい怖がり方を知ってもらった方が現実的なのだが・・・

    ボノの取り組みはファッションブランドのEdunでサブサハラに長期的な雇用を生み出すことを目的にしており可能な限りオーガニックな素材を使用し社会的、倫理的に美しい服をつくりチャリティではなくビジネスとして服を作る。これは一つのやり方だろう、Edunの服を着ると言うことに意味を持たせるのはハリウッドでプリウスが流行ったのと同じ様なセンスだと思う。日本は高級ジーンズで成功した例としてあげられているがもはやジーンズ専門店は苦しい状況になり高級品とユニクロに代表される低価格品に二分化されている。ある程度の価格上昇を受け入れる変わりに搾取工場との取引を禁止すると言う方向になるのだろうがどこまで本当に制限できるのか、1本のデニムに使用される大量の化学物質同様、消費者の手元に届く頃にはどういう人たちの手を経て作られたかという経歴も十分に洗い流されているのだ。

  • 990えんジーンズが話題になる今日この頃友達は 古着は念がこもっていて怖いというが安い新品の方がむしろ念がこもっているかもよ。。この間のDr HOUSE は新品の衣服に残っていた薬品で青年二人が死にかけてたしね。。 

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