【改訂版】「歓喜に寄せて」の物語: シラーとベートーヴェンの『第九』

著者 :
  • 現代書館
4.00
  • (0)
  • (2)
  • (0)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 14
感想 : 2
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (387ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784768458488

作品紹介・あらすじ

「ベートーヴェンの第九」として誰もが知っている名曲「歓喜に寄せて」。映画「バルトの楽園」で描かれたように大正時代から日本でもおなじみのこの名曲には秘められた歴史があった。ドイツ文学史・近代史の流れの中で名曲の歴史に新たな光を当てる。
品切れが続いていたロングセラー待望の増補改訂版です!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • どちらかと言うとベートーヴェンよりはシラーにスポットを当てて、『歓喜に寄せて』と『第九』の成立について考察されている。
    3章と4章ではベートーヴェンとシラーの死後、第九が作者の意図も超えてどんな広がりを持っていったか、後世の人々にどのように聴かれてきたのかが語られている。
    日本では特に年末に必ず歳事記的に演奏されているが、その分析が辛辣でもある。
    芸術とは何なのか、当たり前のように芸術を肯定していいのだろうかと考えさせられた。

  •  ルードヴィッヒ・ファン・ベートーベン(1770〜1827)の生誕250年にあたる2020年の前年(今年)に改訂版が出版され、図書館の新着コーナーに置かれていた。
     第九交響曲の歌詞である詩「歓喜に寄せて」を書いたフリードリヒ・シラー(1759〜1805)について、その時代背景とともに、シラー自身のことや当時の人々が詩をとのように受け止めたかがわかりやすく書かれている。詩「歓喜に寄せて」は「集いの歌」であり「飲み歌」であり原詩は曲がつけられ歌われていたという。詩は1786年に発表され、シラーは1803年に改訂版を出しており、ベートーベンは改訂版を採用して、詩の一部を第九に用いている。詩を断片的に使うことにたいする批判もあったという。
     この二人は時代とともに楽聖及び詩聖として神聖化され、第九はやがてナチス(第三帝国)に利用される。時代がながれるにつれてシラーの存在は希薄となり、第九とベートーベンの存在が残るようになる。
     さらに個人主義が台頭するこの時代に、「すべての人は同胞となる」というメッセージはどのように受け止められていくのだろうか。

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

1962年、岩手県盛岡市出身。獨協大学外国語学部ドイツ語学科教授。
主な著書は『「歓喜に寄せて」の物語 シラーとベートーベンの「第九」』『第九 祝祭と追悼のドイツ二〇世紀史』(いずれも現代書館)、『詩作の個人性と社会性 ヘルダーリンの詩「追想」』(近代文芸社)、『スタート!ドイツ語A1』『スタート!ドイツ語A2』『スタート!ドイツ語B1』(共著、白水社)、『読んで味わうドイツ語文法』(研究社)。

「2022年 『日本の「第九」 合唱が社会を変える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

矢羽々崇の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×