- Amazon.co.jp ・本 (387ページ)
- / ISBN・EAN: 9784768458488
作品紹介・あらすじ
「ベートーヴェンの第九」として誰もが知っている名曲「歓喜に寄せて」。映画「バルトの楽園」で描かれたように大正時代から日本でもおなじみのこの名曲には秘められた歴史があった。ドイツ文学史・近代史の流れの中で名曲の歴史に新たな光を当てる。
品切れが続いていたロングセラー待望の増補改訂版です!
感想・レビュー・書評
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どちらかと言うとベートーヴェンよりはシラーにスポットを当てて、『歓喜に寄せて』と『第九』の成立について考察されている。
3章と4章ではベートーヴェンとシラーの死後、第九が作者の意図も超えてどんな広がりを持っていったか、後世の人々にどのように聴かれてきたのかが語られている。
日本では特に年末に必ず歳事記的に演奏されているが、その分析が辛辣でもある。
芸術とは何なのか、当たり前のように芸術を肯定していいのだろうかと考えさせられた。
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ルードヴィッヒ・ファン・ベートーベン(1770〜1827)の生誕250年にあたる2020年の前年(今年)に改訂版が出版され、図書館の新着コーナーに置かれていた。
第九交響曲の歌詞である詩「歓喜に寄せて」を書いたフリードリヒ・シラー(1759〜1805)について、その時代背景とともに、シラー自身のことや当時の人々が詩をとのように受け止めたかがわかりやすく書かれている。詩「歓喜に寄せて」は「集いの歌」であり「飲み歌」であり原詩は曲がつけられ歌われていたという。詩は1786年に発表され、シラーは1803年に改訂版を出しており、ベートーベンは改訂版を採用して、詩の一部を第九に用いている。詩を断片的に使うことにたいする批判もあったという。
この二人は時代とともに楽聖及び詩聖として神聖化され、第九はやがてナチス(第三帝国)に利用される。時代がながれるにつれてシラーの存在は希薄となり、第九とベートーベンの存在が残るようになる。
さらに個人主義が台頭するこの時代に、「すべての人は同胞となる」というメッセージはどのように受け止められていくのだろうか。