- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784768459294
作品紹介・あらすじ
北海道の国鉄職員で社会党の地方議員でもあった父は、強烈な家父長意識の持主だった。そして「娘は名字が変わるから」と女の子を差別した。著者は、父に愛されようと自分の名字を名乗ってくれる男性と学生結婚。しかし、2021年6月、夫婦同姓を定める民法750条を合憲とした最高裁判決により夫婦別姓を選択できる可能性を遠ざけたことに怒りが再燃。その怒りを原動力に、介護と女性問題をライフワークとしてきたノンフィクション作家が、家制度に縛られてきた自らの半生を赤裸々に綴った。
感想・レビュー・書評
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戦後まもない頃は、日本のどこも貧しかったのだろうが、北海道の田舎町はひときわ貧しかったと著者は語る。
その時代に女として生まれ、父からはことあるごとに「女はつまらん」「家も継げん」といわれて育った。
存在を貶めるような行為に傷つき、男になれないことに悔しい思いをする。
母の違う障害のある姉や結核を患った父や母の病気、落ち着く間もなく姉の脚の切断など次々と病に翻弄される。
そんな中、大学へ進学し「家庭の事情は知ってる、あなたの名字を名乗ってもいい」のことばで学生結婚をする。
だがそれは新たな葛藤を生み、不安と苦痛と辛抱という途轍もない始まりだった。
家のためなのか、家を継ぐということのためなのか…父に認められたいという思いだったのか。
時代とはいえ、名字は人生を苦痛にさせるほど重いものなのかを痛切に感じた。
今は長男だからとか、うちは女の子ばかりだから家を継ぐことないわ、とかあまり聞かなくなった。
子どもも少ないせいかもしれないし、結婚もせずシングルも多く、墓終いする時代になってきている。
だが、夫婦になればどちらかの姓にしなければならない。離婚して旧姓に戻り、再婚して夫の姓に変わりと女性の場合は、結婚、離婚のたびに姓はどうする?がつきまとう。
姓が変わるということ…望む姓で自由に生きていける社会であればと思う。
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作家はすでに80歳を超えた女性。女性であること、苗字を継ぐことに支配された、慟哭の人生を振り返り、書いたのが本書。私も女だけの姉妹の長女であり、家を継ぐというプレッシャーを受けて生きてきたものとして、理解できるところは多い。が、正直彼女の決断や忍耐には、読みながら歯軋りの出る思いもした。この年代で、大学で勉強できたのは、とても恵まれてると思うし、そこまで学問を積み、勉強を重ねながら、父親の呪縛から抜け出せないものなのか??歯がゆいばかり。。終盤、夫婦別姓への想いを理性的に語っているのが、私にとっては救いの文章。これがなかったら、最後まで憤まんが残ったと思う。