「職場がツライ」を変える会話のチカラ

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  • こう書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784769610236

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  • 大衆がクール(賢い・かっこいい)と感じたモノとサービスだけが市場で勝ち残る。これが角川氏が提唱するクール革命だ。モノやサービスはネットワークによって国境をもたやすく越え、世界中の人々に新たな体験をもたらす。それが迫り来るクラウド時代の姿を如実に表したものであり、そのうねりには誰もあらがえない。われわれは知のグローバリゼーションを受け入れ、クラウド時代を生き残っていくための術を自力で見つけ出さないといけない――。ネットは世界と自分の距離を限りなく漸近させるものであり、大衆による知恵の結集は、世界を変えていくものだった。

    クラウドコンピューティングは、これまで日本が築いてきた産業やビジネスの歴史に、パラダイムシフトを要求する。ニコラス・カーが「クラウド化する世界」で言及したこの論点は、われわれの暮らしや生き方ににじり寄る。クラウドは音楽の流通やビジネスモデルを変えた。われわれはネットワーク経由で音楽を手に入れる。店舗でCDを購入するという経験は限りなく少なくなった。今、こうしたデジタル化の余波を、マスコミや出版社がもろに受けている。映画やゲームといったコンテンツ産業にもその影響は広まっていくことは容易に予想できる。

    「主役は大衆である」と角川氏は指摘する。「大衆の英知に誰もがアクセスでき、大衆がすごい、かっこいい、クールと賞賛するモノやできごとが社会を変えていく」。クール革命の定義である。

    大衆の知の力強さを強烈に印象づけたのは、Twitterではないだろうか。Twitterは、大衆がリアルタイムに更新する「現在」の属性を持つコンテンツの存在価値を知らしめた。世界中の人がTwitterで情報を打ち出し、それがデジタルデータとしてWeb上に可視化される。Googleは2009年10月、Twitterのリアルタイム検索において米Twitterと提携した。ネット上のあらゆる情報を整理し、ネット上の秩序を作ったGoogleでさえ、「いま、ここ」を流れるコンテンツの価値を見いだすことができなかった。大衆が発した情報の集合知は、新たな価値として流布する。クール革命の進展を強烈に印象づける内容だ。

    クール革命において、日本企業の名前は聞こえてこない。先導するのは、Google、Apple、Amazonといった米国のプレイヤーである。ソフトや物品の流通における確固たる事業構想が奏功し、コンテンツを体験するというわれわれの生活の一部は劇的に変わった。国境を越えて勝負できるのがソフトウェアの強みなのに、そこに国産ソフトや日本企業のビジネスモデルは名を連ねられない。クラウド時代において、日本はコンテンツ単品で小銭を稼ぐモデルから脱却できないのでは、という危惧が心の中で芽生えた。

    ありえないことが起こり、秩序が変わるという「ブラック・スワン現象」がいとも簡単に起こり、市場を支配するものとされるものに二分するのが、クラウド化する世界がもたらすクール革命の別の顔でもある。「ソフトウェアの力は工業や商業からはじまり、今では娯楽、出版、新聞、教育、政治、国防までもコントロールしている」(角川氏)

    こうした事実とその背景を知り、「じゃあ自分はどうやってこの時代を生き抜いていくか」を考えていかなければならない。個人的には、この流れに乗り遅れる人は、社会を生き遅れることと同義になるのではないかと強く感じた。本著では、日本がこうした時代を生き抜くための提言がなされている。日本がクラウドを取り入れ、事業構想力の強化につなげていくという観点だ。だが、個人に対する提言はない。そこは、読者ひいてはわれわれが考えていくことなのだろう。クラウド時代と<クール革命>は、そんなテーマを否応なしに投げ掛けてくれる。

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