軍閥興亡史 1 (光人社ノンフィクション文庫 205)

著者 :
  • 潮書房光人新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784769822059

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  • 1998年(底本1957年)刊。

     著者は戦前に時事新報社編集局長、戦後、共同通信社理事長・時事新報社社長・産経時事主幹・産経新聞顧問等に就く。
     本書は全3巻中第1巻。戊辰戦争期~日露戦終幕までを叙述対象とする。


    「軍閥」のタイトルだが、軍部内の派閥抗争(長閥と薩閥、皇道派と統制派など)でなく、軍部とその他(例えば、内閣、大蔵省)の対抗が叙述され、さながら陸軍史・戦史の趣きだ。

     逆に国内の社会史や清韓の民衆史という観点は皆無(新聞報道には言及しているが)。ゆえに途中からはザッピング。古い書でさほど新奇なネタがないためだ。
     また、続巻未読であるが、巨視的には「明治期万歳、昭和期罵倒」が想定される書き振りで、間違いではないが、それもまた古典的。加えて、今更メッケル絶賛など「流石にどうよ」いう記述も多く、良く言えば古典的戦史書の類である。

     一方で、細かい戦史描写など多くの他書で古典的陸軍書として参考文献に挙げられるだけのことはある。

     内容をもう少し具に見れば、後の軍部で露呈した補給軽視・精神偏重主義の片鱗が見え隠れする。
     例えば、
    ① 「村田銃」開発者の昇進が大佐止まりであった点(なるほど、著者はこれを不公正な取扱いとするものの、本人は満足であったはずの如き記述を、さほどの根拠もなく行っている。この著者自身にも、精神主義の過剰重視の傾向性は伺える)。
    ② 日清戦争初期の大鳥隊が、準備不足で行李に馬利用が叶わず、輜重に過大負担を強いた点。
    などなど。

     さらに、著者の身贔屓プリズムを通せば、こんな風に言えてしまう見本の如き叙述もある。
     先述の②の際、輜重のため朝鮮国内での人馬を徴用したが朝鮮人離反で不奏効。自国軍ではない日本軍への、この至極当然の離反対応を否定的に見ている。
     また、仮に著者のいう「徴用」の語義通りなら、強制的動員で、対価なしも想定可能なものについて、その離反反応を否定的に見ることは果たして是なのか。
     その一方で、当時の日本軍軍紀の清冽さを称揚する偏頗ぶり。この徴用が軍紀以前の、民衆収奪という問題だと気付いていないのだ。

     また明治人全体か、著者固有の指向かは不明だが、清韓(台湾住民を包含)を教化すべき遅れた者とも読める記述も散見される。これも著者の悪しきバイアスの例と見受けられる。

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