上山春平と新京都学派の哲学

著者 :
  • 晃洋書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784771032682

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  • 「新京都学派」と呼ばれる研究者グループの代表的なメンバーの一人である上山春平の思想について考察している本です。

    本書では、三つの観点から上山の思想の検討がおこなわれています。第一の観点は、従来の学問の分類を超えるような思索をおこなった新京都学派の学風のなかに上山の仕事を位置づけ、現在危機に直面している人文科学の研究のありかたに新たな展望を切り開くためのヒントを見いだすというものです。

    第二の観点は、上山の比較文明論を、さまざまな思想家たちとの関係のなかに置いて理解することです。著者は、今西錦司や梅棹忠夫といった新京都学派の思想家たちの仕事を援用することで、上山が人類史と自然史を一体的にとらえる視座を獲得したことを明らかにしています。また、梯明秀や廣松渉といったマルクス主義の立場に立つ思想家たちの唯物史観との対照をおこない、上山が多元的な文明史の構想をいだいていたことを評価しています。

    第三の観点は、上山の日本文明論、とりわけ天皇制についての議論を、丸山眞男に代表される戦後思想との比較を通じて考察するというものです。著者は、人間魚雷「回天」の乗組員となった上山の経歴にも触れながら、丸山とは異なるしかたで日本の「無責任」体制にメスを入れた上山の議論についての考察をおこなっています。

    そもそも上山自身が、狭い学問分野の垣根を越えた思索をおこなっていたということも理由なのかもしれませんが、著者の議論が多様な論点にまたがっているために、焦点が定まらないような印象を受けてしまいました。

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著者プロフィール

菅原 潤(すがわら・じゅん)
1963年、宮城県仙台市生まれ。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。現在、日本大学工学部教授。主な著書・訳書に『シェリング哲学の逆説』(北樹出版)、『京都学派』(講談社現代新書)、『実在論的転回と人新世』、リュディガー・ブプナー『美的経験』、リチャード・J・バーンスタイン『根源悪の系譜』(いずれも法政大学出版局・共訳)など。

「2023年 『マルクス・ガブリエルの哲学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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