現代産業社会の展開と科学・技術・政策―人類社会形成の新しい時代に向けて―
- 晃洋書房 (2023年10月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
- / ISBN・EAN: 9784771037908
作品紹介・あらすじ
立ち現れる複層的な課題に私たちは問われている.人類と産業社会,基盤としての自然との絡み合いを,科学的真理性と市民的公共性を礎とした知恵と価値を拠り所に解きほぐし展望する.21世紀にかけて急速に世界化した重化学工業化・情報通信技術による産業経済の拡大,地球環境問題と資源問題,ブロック経済化と「武装平和の抑止論」,軍産複合体の常態化,AI技術の進歩,感染症の蔓延など,人類社会は複層的課題を抱える時代を迎え,未来に向けての社会選択が問われている.本書は“科学・技術・政策と社会”の部面から考察する.
感想・レビュー・書評
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東2法経図・6F開架:504A/H99g//K
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まえがき
――新展開の一方で混迷を深める現代産業社会――
第Ⅰ部 現代産業社会と科学・技術
第1章 産業経済社会の現局面に見られる諸問題と科学的・技術的解決の可能性
1 産業活動はこれまで地球環境にどのような負荷,歪みをもたらしたのか
2 20世紀後半の特異性「地下資源依存型の大量生産・流通・消費」をめぐって
3 エネルギーの資源種は適正か,エネルギー生産・消費は果たして効率的なのか
4 石炭火力発電技術は改良によって効率的になればよいのか
5 地下資源の埋蔵量・可採年数について
6 社会的規制と科学力・工学力による解決の期待
第2章 大量生産方式とデュアルユース型研究開発,そして国家科学の推進
1 大量生産とその功罪をめぐって
2 大量生産方式とは
3 デュアルユース型研究開発と軍民転換
4 20世紀における国家科学の展開
第3章 欧米技術の導入と資本集約型技術進歩の功罪
1 GDP を押し上げた「高度経済成長」とは何だったのか
2 戦後の旺盛な技術導入と技術の国産化
3 製鉄業に見る生産の大規模化
4 各種生産部門,流通部門の大規模化
――技術の体系の波及効果――
5 エネルギー多消費型産業としての重化学工業
6 変動為替相場制と生産拠点の海外展開
7 産業活動のグローバル展開と地球環境問題
――物財の生産・移送と地球的自然に対する作用・改変――
第Ⅱ部 戦争と科学・技術,そして科学者・技術者
第4章 経済不況と戦争
――第二次世界大戦期のアメリカの軍需生産と科学・技術動員――
1 世界主要国の軍事費の現状
2 なぜ米国は軍事大国に至る道を歩むようになったのか
3 軍需生産と軍事的研究開発
4 経済の軍事化による企業業績の「好転」の背景
――膨れ上がる「戦時経済」の政府予算――
5 軍事的覇権主義と「アメリカの世界性」の波及
第5章 原爆開発・製造・投下と科学者の行動と責任
1 1945年に製造された原爆は,いくつ,どういうタイプのものだったか
2 原子核の基礎研究,そして原爆の開発研究はどのように始まったのか
3 原爆製造計画を実現する研究所と工場,その経費
4 原爆製造計画・原爆投下の意思決定を行う当局と科学者たちの対応
5 原子兵器の取り扱いをめぐるマンハッタン計画当局と科学者
6 科学者たちの群像
第6章 生物化学兵器の開発と「ミドリ十字」
――731部隊と人倫の貧窮――
1 秘匿名称「満州第731部隊」
2 731部隊に対する戦後の日米両政府の対応と裁判
3 731部隊と血液製剤メーカー「ミドリ十字」創業者:内藤良一
4 血友病患者のエイズ発症と人命軽視の製剤メーカーの企業体質
5 米国でのエイズ感染の発覚とミドリ十字の対応の経緯
6 日本の血液供給事業とその問題点
7 旧・厚生省と医学者,メーカーの癒着構造
8 ミドリ十字の利益優先の安全性を度外視した在庫減らしの経営
9 今日までのHIV 感染者及びAIDS 患者報告数の推移
10 職務として専門性を発揮するだけでよいのか
――市民的社会性の涵養の必要性――
第Ⅲ部 原子力,AI,感染症と人類社会
第7章 国策としての原子力発電と過酷事故,そして回帰
1 東京電力福島第一原子力発電所の過酷事故と東日本大震災
2 福島第一原発事故のメルトダウン及び水素爆発等によって放出された膨大な放射性物質
3 福島第一原発事故と住民避難
4 原子力発電への回帰と日本のエネルギー政策の変転
第8章 制御技術の高度化とAI 時代の「到来」
1 AI とは何か,AI で何ができるか
2 AI の「到来」の実相はどういうものなのか
3 機械技術の自動化・体系化,その延長線上にあるAI システム
4 自動制御技術のネットワーク化と多彩な新産業の成立
5 生産の自動化・デジタル化の普及条件
6 生産の自動化・デジタル化にともなう労働の変容と労働者
7 AI, IoT と連携した技術システムとその「共生」
――問題点とルールづくり――
第9章 産業化・都市化の進行と感染症の蔓延
――問われている人類社会のあり方――
1 社会的分業の人類史と都市化,そして疫病
2 近代産業革命,その後の重化学工業化と都市化
3 日本の産業構造の転換と人口の都市集積による感染症の潜在リスクの増大
4 「インバウンド効果」と新型コロナウイルス感染症
5 資源採取・採掘による地球的自然の壊変
6 地球的自然の開発と感染症
――野生種と栽培品種・家畜品種――
7 自然との間合いと産業社会の「質」
第Ⅳ部 「国家資源」としての科学と政府,企業
――競争政策・安全保障政策と学術研究体制――
第10章 科学・技術の20世紀的展開と世界市場の形成
――競争政策と軍事的覇権政策――
1 19世紀から20世紀にかけての学術・産業・政府
――科学・技術政策の底流――
2 「東西冷戦」と軍産複合体の常態化
3 科学・技術は軍事主導性で高められるものなのか
4 EU の競争政策と「知識基盤型経済」の提起
5 東アジア市場の台頭と「米中対立」
6 日本型競争政策の先鋭化としての陥穽
第11章 「研究力低下」を招いた競争資金政策
――「研究大学」「公的研究機関」構想と財政基盤の格差構造――
1 科学技術指標が示す「研究力の低下」の概況と科学技術政策
2 欧米主要国との日本の資金政策の違い
3 日本の科学技術関係予算の推移と学術研究環境の格差構造
4 格差構造を打開する政策策定と民主主義
第12章 「安全保障技術」研究と学術界の立ち位置
1 研究開発モデルのせめぎ合い
2 デュアルユース型研究開発モデルと防衛計画大綱
3 学術研究型研究開発モデルの政策的推進
――日本学術会議の2017年声明――
4 日本学術会議の見地・態度の根底
5 科学者の立ち位置と戦前・戦時の科学動員
6 日本学術会議の「声明」発信は功を奏したか
第13章 学術研究を抑制する科学技術政策の国策化
1 学術と政治の行き違いと学術研究環境の格差構造
2 国策化したイノベーション型・デュアルユース型研究政策と統制される学術研究体制
3 経済界の政策提言,文科省政策に見る大学の位置づけ
4 政府・政権与党の学術(科学・技術)の見地
5 学術研究体制の構造的問題の克服を展望して