わたしで最後にして: ナチスの障害者虐殺と優生思想

著者 :
  • 合同出版
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本棚登録 : 173
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784772613583

作品紹介・あらすじ

歴史をふりかえると戦争中にマイノリティが虐殺されるという悲劇的な事件が何度かあった。その1つの根本は為政者/国家の優生思想にある。それは決して過去の話でなく現代社会の「障害者差別」や「ヘイトクライム」「資本主義」に象徴されている。人間の価値とは何か、多様な人が暮らす社会はどうあるべきかを問う。

感想・レビュー・書評

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  • DaiGo氏の差別発言で本棚にポップ 書店員のささやかな「抵抗」 | 毎日新聞
    https://mainichi.jp/articles/20210909/k00/00m/040/068000c

    わたしで最後にして - 合同出版
    https://www.godo-shuppan.co.jp/smp/book/b474135.html

  • 副題のとおり、ナチスが行った障害者虐殺「T4作戦」と、その地盤にある優生思想について。優生思想に基いた施策については、ナチス・ドイツだけでなく、その前後の時代のスウェーデン(いまは福祉国家として知られるのに)、アメリカに触れ、そして日本に至る。津久井やまゆり園での悲惨な事件に話題は及ぶ。
    著者は、過去と今を知り、つながりを考えることが大切だと言っている。まさにそれを体現したもの。ノーマライゼーション、インクルーシブが「ノーマル」になるには……わたしが一市民としてできることを、目をつぶらずにしていきたい。
    著者がドイツで資料館を見学していたとき、若い見学者が何組もいたというエピソードに、ドイツへの尊敬と日本への危惧を感じる。

  •  ナチスによる障がい者安楽死作戦(実質的には大量殺人作戦)「T4作戦」を軸に、優生思想かいかに各種の属性の障がい者を害してきたか、各国ではどうか、そしてもちろん我が国ではどうだったか、そして今日の各国や国際組織の取り組みや我が国の現状などについてコンパクトに、冒頭にドイツ取材の成果の画像を掲載し本文下部に比較的初級者には難しいと思われる用語の丁寧な解説を挿入して書かれた丁寧な概説書。著者の藤井克徳さんも視覚障がい者(中途障がい者。元々弱視であったと巻末にある)で、その点からも想像力、歴史も今も、とにかく知る事の大切さを丁寧な言葉で練り上げてあり安心して読める良書。広く、これらの問題に関心がある人に読むことを強くお勧めしたい書籍と言えます。
     著者藤井克徳さんは、「今も残念ながらときどき頭をもたげる」優生思想に対抗するには、すでに日本も批准している「障害者権利条約」の理念や条文、それらを不十分ながらも国内法として整備されている法律によるのが良い、と具体的な対抗案も示しておられます。

  • ナチスの犯した酷い暴力を
    今更ながら考えて、吐き気がするほど気分を悪くしながら読んだ
    優性思想ー自分は他人より秀でている。ユダヤ人は自分たちより劣った民族だと考えた事がそもそもの間違い。
    人間はみな平等なのだ、と強く思う。

  • 3.6/145
    『「こんな死に方、わたしで最後にして」
    というガス室からのうめきは、今を生きる私たちへの真摯なメッセージです。
    ナチスは、「T4作戦」というかたちで、大量の障害者を虐殺しました。
    その根幹にある優生思想は、
    「理想の社会は、優秀な人だけが残り、弱い人は消えてもらいましょう」という考え方です。
    これは、けっして過去の話だけではありません。
    私たちの日本社会にも深く潜み、「障害者差別」や「ヘイトクライム」の姿で、いまもときどき頭をもたげるのです。
    史実をたどりながら、人間の価値とは何か、多様な人が暮らす社会はどうあるべきかを、探っていきたいと思います。』
    (「合同出版サイト」より▽)
    https://www.godo-shuppan.co.jp/book/b474135.html

    目次
    第1章 オットー・ヴァイトとの出会い
    第2章 殺された障害のある人は20万人以上
    第3章 優生思想は多くの国々で、私たちの日本でも
    第4章 優生思想に対峙する障害者権利条約
    第5章 「やまゆり園事件」と障害のある人のいま
    第6章 私たちにできること

    冒頭
    『この本では、あまりに重いテーマを取り上げることになります。ウォーミングアップするつもりで、私がなぜ「ナチス・ドイツと障害者」に出会うことになったのか、ここから話を始めることにしましょう。
    私が「ナチス・ドイツと障害者」に関心を寄せるまでには、ちょっとしたいきさつがありました。
    それは偶然とも言えるものでした。きっかけはドイツ人のオットー・ヴァイトとの出会いです。』


    『わたしで最後にして: ナチスの障害者虐殺と優生思想』
    著者: 藤井克徳(ふじい かつのり)
    出版社 ‏: ‎合同出版
    単行本 ‏: ‎175ページ
    発売日 ‏: ‎2018/9/5

  • とても読みやすく、わかりやすく、
    読んだあと抱きしめたくなるような気持ちになりました。
    こびないぶれないあきらめない(AKB)ですね。

  • まず思うのは、将来自分も障害者になり得る可能性があるにも関わらず、劣勢と決めつける浅はかさ。優生思想の人たちは、自分が障害者になった時は素直にそれを受け入れるのだろうか?
    またこの本の書き方で気になったのは、「友人からの情報によると」「私の想像ですが」など、不明瞭な書き方が多かった。信憑性にかける言い回しをしたのはなぜだろう。

    • _junnoさん
      不明瞭な書き方については、筆者は中途視覚障害者なので、直接ご覧になっておらず、断定して仰ることができない部分ではないでしょうか。
      不明瞭な書き方については、筆者は中途視覚障害者なので、直接ご覧になっておらず、断定して仰ることができない部分ではないでしょうか。
      2020/08/05
    • アンジェラさん
      なるほど、確かに資料や文献は全て『目』からの情報ですね。だとすると、視覚障害者の方自身はいつもあやふやな情報しか得ることが出来ないのでしょう...
      なるほど、確かに資料や文献は全て『目』からの情報ですね。だとすると、視覚障害者の方自身はいつもあやふやな情報しか得ることが出来ないのでしょうか。とても興味深いところです。その視点はなかったので、ありがとうございました。
      2020/08/06
  • 途中でやめた

  • ナチスの障害者虐殺について、世界での優生思想の歴史、国連で採択された障害者権利条約、現在の取組みについて、分かりやすく書かれた本です。
    詳しい虐殺の手順、やまゆり園事件など、辛い出来事も多く、情緒的になりそうな内容なのに、要点や問題点が整理され、冷静に読むことができます。
    注釈もあり丁寧に説明されていて、中高生くらいから読めますが、大人の方にも、もちろんおすすめです。

  • タイトルにある「ナチスの障害者虐殺と優生思想」のみならず日本における優生思想の歴史や障害者福祉の成立風景が読める本。

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著者プロフィール

NPO法人日本障害者協議会代表、きょうされん専務理事
青森県立盲学校高等部専攻科卒業。1982年都立小平養護学校教諭退職。養護学校在職中の1974年にあさやけ作業所設置に参加、同じく1977年に共同作業所全国連絡会(現・きょうされん)結成に参加。2014年国連障害者権利条約締約国会議日本政府代表団顧問。2012年国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)チャンピオン賞(障害者の権利擁護推進)受賞。障害のある人の法律や制度の拡充に尽力している。

「2020年 『ゆうこさんのルーペ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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