破滅の恋-MeuAmor- (クロスノベルス)

著者 :
  • 笠倉出版社
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本棚登録 : 88
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784773085839

感想・レビュー・書評

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  • ポルトガルの首都リスボンが舞台。毎回、異国に迷い込んだような錯覚に陥る圧倒的な臨場感が素晴らしいと心酔しているセンセの作品です。五感の全てに伝わる描写力は、今回もファドとジャカランダの花とポルトガルワインにマフィア、というコラボで遺憾なく発揮されています。
    マフィアの幹部レイナルド×音大生の叶多。
    理不尽に陵辱されて、それでも決して堕ちることを潔しとせず、男としての矜持にあくまでもこだわる叶多ですが、それが元で異国でどんどん身の破滅とも思われる道をたどっていきます。

    二人の考え方の食い違いがそもそもの原因なんですが、情熱的なラテン男と慎み深い日本人では根本的な相違があるわけで、そこが難しくもあり、惹かれあうところでもあるんですね。
    叶多は一度だけ激しく攻様に奪われた後、歌で見返そうと声楽の練習に専念します。そして、再会した時に支援者としてしか接してこないレイナルドに失望する自分に気付いてしまいます。いつの間にか愛していたことに苦悩し葛藤する叶多。バイロ・アルトの高台でのキスシーンは泣けます。

    ここからは怒涛の展開。平穏無事でも心細くなる異国で、底辺にまで堕ちても気丈に耐え忍んで、レイナルドへの愛のために意思を貫き通した叶多の健気さに何度も胸が疼きました。
    冷たくて非情に見えたレイナルドの本心が叶多にわかってからも、彼を守るためにさらに辛い試練が待ち受けているので、ハラハラさせられっ放し。最後まで気を抜くことはできませんでした。
    ファドを極めようとする叶多が抱える郷愁や哀愁が切なく心を揺さぶられます。親への反発が、辛酸を舐めることで溶解していくのも読みどころ。
    何より2段組でボリュームたっぷりなので、かなりの読み応えです。

    そして、重めな本編とは趣を変えて、「あるラテン男の恋の悩み」はクスッと笑わせてくれるSSです。日本語を解さないレイナルドのちょっと残念で愛すべき話。特典ペーパー&小冊子は、ブルーノ話とクリスマス話で胸が熱くなるSSです。

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