ファルージャ 2004年4月

  • 現代企画室
4.60
  • (4)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 8
感想 : 3
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784773804041

作品紹介・あらすじ

米軍によるファルージャ包囲戦。狙撃兵が救急車や女性、子どもたちを撃つ。イラクに留まる人道援助活動家が21世紀初頭の「ゲルニカ」「南京」の実態を報告する。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 東日本大震災後、救援の為に「トモダチ作戦」に従事したアメリカ
    軍兵士の中に、健康を害した人たちがいる。小泉純一郎元首相は、
    彼らを思い涙を流し「トモダチ基金」を設立した。

    首相在任中、原発の安全神話を信じて推進して来たことを反省
    するのであれば、アメリカのイラク戦争をどの国よりも早く、無条件で
    支持したことも反省すべきなのではないか。

    サダム・フセインを権力の座から引きずりおろしたイラクは、イラク国民
    の手に委ねられたのではなかった。亡命イラク人を政府のトップに据え
    て、アメリカの思い通りになるような国に作り替えようとした。

    イラクの人々は新たな独裁者を求めたのではない。自分たちの政府を
    求めたのだ。だから、アメリカ軍の占領への不満が高まった。

    その不満のひとつの表れが2004年4月にファルージャで起きた。アメリカ
    の民間軍事会社の傭兵4人が何者かに殺害された。多分、日本国内で
    は「民間人」と報道されたと記憶する。

    正規の兵士と傭兵と。きっと見分けはつかなかたのだろう。しかし、この
    殺害事件はアメリカ軍の復讐心に火をつけた。その復讐心はかなり
    間違った方向へ向かったのだが。

    ファルージャを包囲し、クラスター爆弾で空爆し、人権を無視した家宅捜
    索を行う。武器も持たぬ女性や子供、老人に暴力を振るうのみならず、
    狙撃手は容赦なく銃撃する。それも背後から。

    怪我をして道に倒れている人の喉を掻き切り、病院を爆撃し、モスクに
    土足で踏み込み、ファルージャの人々を「ウジ虫野郎」とさえ呼ぶ。

    本書はファルージャで何が起きていたかを目撃した海外ジャーナリストや
    イラクの人たちへの人道支援の為にファルージャ入りした活動家の証言
    で構成されている。

    これは「テロとの戦い」などではない。アメリカ軍によるイラク民間人の
    虐殺である。

    「自分たちの酷的達成の為にまったく関係のない市民、国民を虐殺して
    平然としている」のがテロリストだと小泉元首相は言う。そうであるならば、
    アメリカ軍がファルージャで行ったことは正にテロ行為ではなかったか。

    小泉純一郎さん、あなたはこの現実を知っていましたか?何百人もの罪
    なきファルージャの人々が殺害された現実に、流す涙は持ち合わせて
    いませんか?

    いや、元首相ひとりだけではないんだよね。イラクに派遣されたアメリカ
    海兵隊の多くは沖縄の基地から飛んでいるんだ。直接イラクの人たちに
    銃口を向けたのではないけれど、日本はアメリカの戦争に協力している
    時点で加害者なんだよね。

    日本政府は当てにならないけれど、アメリカの正義を懐疑的に考える
    ことをしなくてはいけないと思うわ。失われた命は戻らないけれどね。

  • amazonの古本で1円で購入した。
    (したら、なんと高遠菜穂子さんの「命に国境はない イラク人に代わって 菜穂子」というサイン入りだった! ほんまもんかな・・・? 高遠菜穂子さんとは、ファルージャで虐殺が行われているとき、サラヤ・ムジャヒディーンと名乗るグループに拉致された日本人三人のうちの一人の方)

    この本には、米軍が行った虐殺の実態が有り体に書かれている。まさに自分の命を投げ打って活動をした四人の活動家の記録だ。
    胸に大きな穴が空いている人、喉をナイフでかき切られている人、クラスター爆弾で全身大火傷を覆っている人、腕がちぎれて溢れるように血が流れている人、そして電気が止められていて、薬品もないそんな地獄のような街を、襲撃を受けながら車で奔走し、負傷者や遺体を収容するのだ。
    弾が飛んでくる方向に向かって、拡声器で「怪我人を運ぶんだ、撃たないでくれ。」と言いながら、両手を挙げながら前に向かっていく。そんなこと、誰ができるというんだろう。

    以前読んだ本に書かれていたことを思い出した。彼らには、きっとそんな使命を持って生まれてきた人で、特別な人たちなんだと思う。そしてそれが活字になった限り、それは伝えられていくべきものになったのだ。だから、それを眼にした人は、周りに伝えていかなかればならないと思う。

    この書物のP199より引用する。
    --------------------------------------------
    ・・・とりあえず日本に暮らして最低限の収入を得ているならば、何ごとも起きていないかのように「日常」生活を送って、ひっそりと下を向いて、できるだけ世界を見ないようし、「都合の悪い」ことに耳を傾けないようにし、自分が生きているうちに自分の番にならないように心の中で祈るだけにしていたくなる。
     けれども、こんな時だからこそ、キング牧師の次のような言葉を、改めて思い起こそう。「後世に残るこの世界最大の悲劇は、悪しき人の暴言や暴力ではなく、善意の人の沈黙と無関心だ」
    --------------------------------------------

  • 4月のファルージャに入った英米の人たちのレポート。私は共訳者のひとり。※この書籍についての私のアカウントのamazon.co.jpアソシエイトのキックバックは、全額、イラクの医療援助活動に寄付しています。

全3件中 1 - 3件を表示

益岡賢の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×