直島から瀬戸内国際芸術祭へ

  • 現代企画室
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784773816167

作品紹介・あらすじ

瀬戸内アート本の決定版!「アートによる地域づくり」を切り開いてきた福武總一郎(プロデューサー)+北川フラム(ディレクター)初の共著、ついに刊行!

「海の復権」を掲げ、近代化の負の遺産を負い、過疎・高齢化が進んできた島の活性化を目指す芸術祭の歴史は、すでに四半世紀前のベネッセアートサイト直島の誕生から始まっていた。
「お年寄りの笑顔」を謳い「よく生きる」ための理想の地をアートによってつくろうとしてきた福武總一郎が、里山の過疎化・越後妻有でアートに寄る地域づく理に奮闘していた北川フラムと出会ったとき、瀬戸内国歳芸術祭の構想は生まれた。
 香川県と市町村を巻き込んで展開する瀬戸内国際芸術祭は、観光地としての再生、島への移住、休校の再開、ハンセン病患者の島の開放などさまざまな成果を生みだし、さらにアジア・アートプラットフォーム、アジア・アート・フォーラムへと、海を介したアジアとのダイナミックな交流の場へと展開しようとしている。
 その歴史と現在、そして未来を、プロジェクトを牽引してきた二人の立役者が語り、書きおろす。安藤忠雄、新旧の香川県知事の証言なども織り込みながら、瀬戸内海を舞台に繰り広げられる地域づくりの過去・現在・未来を描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • 『#直島から瀬戸内国際芸術祭へ』

    ほぼ日書評 Day634

    草間彌生の「カボチャ」アート、あるいは安藤忠雄の地下美術館、そこに納められたモネの大作、杉本博司や宮島達男の現代アート、多くの有名作品で知られる「直島(なおしま)」ゆかりのエピソードと、多くのアート作品の写真で構成される、見ているだけでも楽しくなる一冊だ。

    さて、本書を読むまで浅学にして知らなかったのだが、本書の著者でもあるベネッセの福武總一郎がプロデューサー(実質上のスポンサー)として関わった瀬戸内の島々というのは、直島の他にも、豊島、犬島、女木島、男木島…等、数多い。
    それぞれが、元はハンセン病患者の隔離施設であったり、産廃の投棄場であったりと、負の歴史も抱えつつ、アートを軸に新たなステージへ進むことができたというエピソードが語られる。

    文章としては全体の3割ほどだが、福武氏の著述パートは圧巻だ。
    アート作品を欲しいと思う観点は何か? オークションで落とし損ねた作品を、改めて落札者に交渉して入手したり、モネの大作を入手するまでの粘着質ともいえる交渉等、そこだけでノンフィクションが一冊書けそうだ。

    氏の提唱する「公益資本主義」という考え方は、今日以降、アートに携わる人に取って、福音となる可能性大な着想だ。すなわち、企業が公益財団を設立し、財団がその株式会社の大株主となる。そして、その配当金を原資として、財団が社会に貢献できる文化活動を行う。都度都度、頭を下げて金策に走る必要を無くす。
    相続対策として持株会社を作ることと、技術的には同じことになるはずだが、そのカネの使い道が全く異なることになるわけだ。

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  • 瀬戸内国際芸術祭は世界的にも有名になり、多くの来場者を集めているが、本書では、その前に15年以上にわたって福武總一郎氏がこの地域を芸術の力を借りながら再生しようとしてきた取組みに触れられており、印象に残った。

    本書の中でもあえて注記されているが、ベネッセアートサイト直島(BASN)と呼ばれるこの取り組みは、瀬戸内国際芸術祭とは別の取り組みである。

    本書でその歴史を読むことで、福武氏が現代美術に対して感じている「人を自由にする力」を、地域のつながりやアイデンティティを地元の人たち自身が見つめ直し共有するための取り組みに使えないかという想いが、長い時間をかけて現実のになっていったということが感じられた。

    そして、このような土壌の上に瀬戸内国際芸術祭が行われたからこそ、この芸術祭が非常に意義深いものになったのだということがよく分かった。

    瀬戸内国際芸術祭は、外からの人(観光客)を迎え入れること、期間を限定してインスタレーションなどを展開することなど、BASNの取り組みとは異なる要素も取り入れているが、地域の歴史、風土、課題に向き合うという根幹の部分はなくさず、大島のハンセン病患者の療養施設の歴史などをテーマとして取り上げている。

    芸術祭の方は北川フラム氏が語っているが、この取り組みを実現するにあたって、地域の人たちとの対話、外からの人々を迎え入れるための受け入れ体制の構築、必要な資金やボランティアの確保などの取り組みに、どれだけの労力がかけられているかということが、文中の端々から伝わってきた。

    そして、これらの取り組み自体が3年に1回というサイクルの中で1つの歳時記になりつつあるということが、この芸術祭が地域に与えている最も大きな産物なのではないかと感じた。

    芸術祭の意義は来場者数やチケットの売上だけでは測ることはできず、地域のネットワークをどれだけ活性化することができたかということこそが最も重要なことだということを改めて教えられた。

  • アートによる地域づくり。三回目の瀬戸内国際美術際。また行きたい。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784773816167

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著者プロフィール

公益財団法人福武財団理事長、瀬戸内国際芸術祭総合プロデューサー、株式会社ベネッセホールディングス名誉顧問。
1945年岡山県生まれ。早稲田大学理工学部卒業。1973年福武書店(現ベネッセホールディングス)入社。1986年代表取締役社長、2007年に代表取締役会長兼CEO、2014年より最高顧問、2016年10月より現職。
1988年、直島文化村構想を発表。香川県・直島を自然とアートで活性化するプロジェクト(ベネッセアートサイト直島)を30年にわたって指揮。2004年直島に地中美術館を開館、直島町名誉町民受賞。日本建築学会文化賞(2010年)、モンブラン国際文化賞(2012年)、地域文化功労者表彰(2013年)などを受賞。

「2016年 『直島から瀬戸内国際芸術祭へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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