- Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
- / ISBN・EAN: 9784774300825
感想・レビュー・書評
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おととい借りて読み始め、きのう読了。アメリカYAとしては有名?
地の文のない構成なのが興味深い。「事実」と「証言」が重ねられていくけれど、それぞれが各々の「立場」を如実に反映しているから、ひとつの「真実」につきあたることはない。誰もフィリップの姿を見ようとしないまま「フィリップ」が増殖してゆく感じに、ちょっとぞっとする。文章だと音がきこえない、というところがミソだなぁ。
訳者あとがきの、ナーウィン先生に落ち度がない、という意見はちょっと疑問。彼女は彼女で固定的な見方にとらわれていて、それも「フィリップ」の増殖にひと役買っていると思うのだけど。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ハリソン学区高等学校に通うフィリップ・マロイは14歳。春学期からのクラス替えで、フィリップはナーウィン先生のクラスになった。朝礼での国歌演奏の際、「敬意をもって静かに聴くこと」という規則になっていたが、フィリップはハミングをする。ナーウィン先生は、規則違反をしたフィリップを教室から追い出した。続けて2度追い出されたため、フィリップは2日間の停学処分になってしまったのだが、この小さなトラブルが、やがてアメリカ全土をゆるがす大騒動につながっていった。
読んでいて終始イライラしてしまいました。きちんと事実を語ってくれる人もいなければ、しっかり最後まで話を聞いてくれる人もいない。「もうっ、そうじゃないのにぃぃぃ!」ともどかしくて仕方なかったです。
ちょっとしたことがとんでもない事件に発展していく過程がドキュメンタリー・タッチで描かれていきます。そのおかげで普段自分の周りでも起こりうるのではないかという現実味が感じられ、空恐ろしくなりました。ええっ、一体どうなっちゃうの、という気持ちであっという間に読めてしまう本です。
この訳者は確か『ワトソン一家に天使がやってくるとき』の訳者だったなぁと思ったら、やはりそうでした。どちらもくもん出版の本ですね。(2002.12.28)