もえぎ草子 (くもんの児童文学)

著者 :
  • くもん出版
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本棚登録 : 118
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784774329284

作品紹介・あらすじ

12歳の少女・萌黄は、育ての親の叔母が遠国に行くことになったのを機に、中宮のための役所・職御曹司(しきのみぞうし)で、下働きをはじめる。別れぎわ、叔母は萌黄に「お前の父さんがつくったものだよ」といって、白い紙を預けてくれるが、萌黄には父の記憶はない。
先輩の瑞木(みずき)や、庭で暮らす木守(こもり)の親子、牛飼い見習いの幼なじみとともに、充実した日々を送るが、父から預かった紙を、「清少納言から盗んだ」と勘違いされ、職御曹司を追い出されてしまう。
途方に暮れるなかで、路上で歌をうたって日銭を稼ぐ紅葉と出会い、ともに暮らしはじめる。しかし、突然の別れがあり……。

萌黄は、清少納言が藤原行成に送る手紙を届けたり、枕草子の一説を読んでもらったり、書き損じの紙を集めたりするなかで、言葉が紙を通じて広がっていくことの不思議を知る。そして次第に、紙というものに惹かれていく。

歴史のなかでたくましく生きる、名もない庶民を描きつづけてきた久保田さんが次に描くのは、平安時代に土を踏みしめて力強く生きた人々。枕草子から着想を得た、枕草子の裏側にあったかもしれない、一人の少女の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 久保田さんの本を読むのも何冊目でしょうか。作家読みするたちなのでハマるとその方の本ばかり読んでしまいます。粗筋を読んだ時にちょっとヘビーそうな感じだったのでしばらく寝かせていました。心の余裕ができたので読み出したのですが、前半はちょっと辛い展開でしたね…。後半はそれなりに幸せそうで良かったですけど。

  • 【内容】天涯孤独になった平安時代の内向的な少女「もえぎ」。会ったこともない父からの贈り物と言われた紙の束(貴重品)を胸に、清少納言もいる職御曹司(しきのみぞうし)で働き始める。もえぎと和紙、「枕草子」や「梁塵秘抄」や、「源氏物語」もちょっとからむ。

    【感想】個人的に紙やペンや言葉は好きなので共感しながら読めた。
    また、昔の貴族の暮らしぶりはある程度知ることができるが、庶民のことは意外にわからず、ずっと関心は抱いていた。もっとも、本当に知りたいのは平安京その他の貴族たちが暮らしていた枠の外にいた人たちのことなのだけど、ここではまだ枠内の人たち。

  • なかなかつらいところもあるお話だった…。けど清少納言の言葉とか出来事がほぼ事実だとは驚き。この時代に当然のようにあった身分の違い、上の者と下の者の違いを感じた。枕草子読んでみたくなった。

  • 最初は焦れったく内気過ぎてもっと自分の意見を言わないとと思いながら読む。濡れ衣を着せられたときも仲良くなった下働きの子の顔を窺い他人に言ってもらおうという、昔の自分を見ているようではがゆいのと、イライラのない混ぜ。追い出されてから行くあてもないのに善人ヅラ。それで誰かの目に留まり主人公は貴族に仕える話なら時間を無駄にしたと思うけど話は全然違い、自分の性格や甘い考えを徐々に捨て、老女の浮浪者と路上生活を学びながらたくましく生きようと努力する。私はというとまだまだ甘い考えで自己中な毎日を送っている。厳しいと逃げ、踏み出す事もできない。
    主人公は今の状況で生きて行こうと決意しても生活が変わるとこの仕事で生きようと思い、甘い考えだと自分を責めてフラフラしているのを戒めている。環境が変われば生き方も変わる、そんなんでも自分のしたい事をすれば良いと浮浪者に教わった言葉を胸に下働きをしていた頃から紙に興味があった紙漉きを始める。
    どんどん逞しくなっていく姿、ずっと悩んで、葛藤しながら生きていく強さにもっと若い時に出会っていれば私も変われたかな???
    ただの物語と思っただけかも。

  • 図書館の児童書のおすすめ棚にあった本で装丁に惹かれて借りた。
    読んでみると面白く、一気読み。
    舞台は平安時代中期らしい。清少納言が出てくる。
    貴族に仕える萌黄、清少納言にも意地悪されて貴族のお屋敷を追い出される。
    萌黄の先輩の瑞木や木守の子の小竹丸、幼馴染の犬丸など厳しい環境の中でも逞しく上を目指して進んでいくのが気持ちがいい。
    紙が貴重だったこの時代、その貴重な紙を軸にして話が進んでいく。
    現在では考えられない社会背景ではあるが、希望を持って成長していく子どもの姿は爽やかで感動的だ。
    偶然だが良い作品に出会った。

  • 清少納言のいる屋敷で働いていて、紙を盗んだと濡れ衣を着せられ、都で芸人と一緒に懸命に生きて、父と再会し紙作りの職人として歩み始めためでたしめでたし。のシンプルでまっすぐな児童書でした。
    清少納言が中宮と雪がいつまで残っているか賭けるエピソードや、貴族との文のやりとりの雅なエピソードは知っているモノでしたが、立場変わって雑仕からみればいじわるに見えたりするのかと思い、私から見れば新しい視点(教科書にしろ、新書にしろ、清少納言は褒められがちなので若干の悪役で)面白かったです。

  • 2022.07.09

  • 時代物はあまり得意ではないのだけれど、こちらはなかなか読みごたえがあり面白かった。清少納言の言動などはわりと史実に忠実とのこと。

  •  萌黄(12歳)。平安時代、紙屋紙、清少納言

  • 家族が買っていたので冒険。カバーや扉の色味、豊富な挿絵がかわいらしくとっつきやすい。

    紙をきっかけに始まり、出逢い、夢を見つける物語。宮仕えの下働きというスタートがまず物珍しく面白かった。藤原家の勢力争いや、清少納言が『枕草子』に著したエピソードをも絡めて、真面目で内気な少女萌黄の物語として仕立てていく手ごたえがある。おかげでまだまだ序盤といったところで追放の身となってしまうのには驚いた。大内裏の出入りは簡単なようだから、登場人物紹介にいた未登場の人達にも、下働きの萌黄として出逢うことになるんだとばかり。
    ただの庶民としての暮らしの苦労は、正直心配したほどどん底ではなかった。早々に紅葉という師を得ているし、さらにその紅葉が歌だけを生業にしているらしいのが大いに救い。なんでもして生きていかなければならない、その「なんでも」の現実的なラインに踏み込むことはついぞなかった。何より、紙をよすがに最後には実父という後ろ盾を得ている。やはり伝手だよね、と少ししょっぱい気持ちで思う。
    文遣いの経験や、自分の歌う歌だって書き留められるという発見、誰かに何かを伝えられる媒体となる紙との関わりが物語のあちこちで光っていて面白かった。『源氏物語』もそのうち読もう。

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著者プロフィール

岐阜県生まれ。2004年、『青き竜の伝説』(岩崎書店)で第3回ジュニア冒険小説大賞を受賞しデビュー。『氷石』(くもん出版)で第38回児童文芸新人賞、『きつねの橋』(偕成社)で第67回産経児童出版文化賞・JR賞を受賞。他の作品に『きつねの橋 巻の二 うたう鬼』(偕成社)、『緑瑠璃の鞠』(岩崎書店)、『駅鈴』『もえぎ草子』(くもん出版)、『千に染める古の色』(アリス館)など。

「2022年 『やくやもしおの百人一首』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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