中澤系歌集 uta0001.txt

著者 :
  • 皓星社
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本棚登録 : 137
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784774406510

作品紹介・あらすじ

3番線快速電車が通過します理解できない人は下がって この一首は、歌人の穂村弘に「これは完璧かもしれない」と言わしめたものである(本書掲載の雁書館版「栞」より)。中澤系は、短歌の世界での活躍が期待されながら、難病の副腎白質ジストロフィー(ALD)に冒され、2009年4月に逝去した夭折の歌人。 雁書館版と双風舎版が絶版となり、本書は適正価格では市場で入手できなくなった。ならば、中澤の没後10年を迎える今年に、若い人たちでも手に取れるような価格で再刊できないか……。 本書には遺族や版元のそんな思いが詰まっています! 中澤がその著書を参照したとされる宮台真司の特別寄稿を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 様々な選句集で紹介され気になっていた中澤系。風景とか情景とかうたっていないのに伝わってくる何かがある。 わずか4年半だった活動期間の歌をまとめた歌集の新装復刻版。いろんな方々の解説が良かった。やはり歌集は濃くて酔った気分になる。

    • 111108さん
      ベルガモットさん
      コメントありがとうございます♪
      解説はほむほむや岡井隆と言った多数の歌人達他、社会学者宮台真司氏(私は名前しか知らなかった...
      ベルガモットさん
      コメントありがとうございます♪
      解説はほむほむや岡井隆と言った多数の歌人達他、社会学者宮台真司氏(私は名前しか知らなかったです)のエッセイ的なのまでいろいろでした。人によって中澤系の人物像がかなり違ってそれも面白かったですよ。
      2021/12/26
    • ☆ベルガモット☆さん
      111108さん
      なるほど、ほむほむさん解説なら読まなくちゃ!
      宮台さんまで凄いですね。お知らせありがとうございます。
      積もるほどでは...
      111108さん
      なるほど、ほむほむさん解説なら読まなくちゃ!
      宮台さんまで凄いですね。お知らせありがとうございます。
      積もるほどではないですが雪が降ってきました。
      寒波が来て寒いですね。温かくして過ごしてくださいませ。
      2021/12/26
    • 111108さん
      ベルガモットさんお返事ありがとうございます。
      こちらも明日までに降るかもと‥暖かくして本読みましょう。
      ベルガモットさんお返事ありがとうございます。
      こちらも明日までに降るかもと‥暖かくして本読みましょう。
      2021/12/26
  • 111108さんの本棚で見つけて購入後積読でやっと読了
    未来短歌会に入会、岡井隆氏に師事、1997年未来賞受賞
    歌集刊行の理由に自分の生きた証を残したいという言葉を残している
    痛みに近いひりひりとした感覚と真剣なまなざしで物事を切り取った歌のような気がして、片手間に読むことができなかった
    生死を何度も連想させ瞬間を凝縮させたような歌で、時々息ができないような感覚の意味は、解説の皆さんから種明かしがされたような気がした
    ⅠからⅢ部で構成されている Ⅰ部に私の好きな歌は集中していて付箋がいっぱい飛び出ている

    日常から視点が転じる歌が特に印象的

    靴底がわずかに滑るたぶんこのままの世界にしかいられない
    牛乳のパックの口を開けたもう死んでもいいというくらい完璧に
    手触れ得ぬ君の眼窩の裏側を思うあら煮の身を削ぎながら
    湯上がりの汗引くまでのしばらくをあてのない予感を待っている
    出口なし それに気づける才能と気づかずにいる才能をくれ
    常にくじを引き続けなさいそして常に当たりのくじを引き当てなさい

    • 傍らに珈琲を。さん
      ベルガモットさん、こんばんは!
      ベルガモットさん、111108さん、お二人の本棚にある中澤系、気になって仕方がなくて、探しても見つからなくて...
      ベルガモットさん、こんばんは!
      ベルガモットさん、111108さん、お二人の本棚にある中澤系、気になって仕方がなくて、探しても見つからなくて、Amazonで注文しました。
      そして本日到着!
      ゆっくりのんびりペース確定ですが、楽しみたいと思ってます。
      2022/11/05
    • ☆ベルガモット☆さん
      傍らに珈琲を。さん こんばんは!

      111108さんの推しだったので気になったのですが図書館にはありませんでした。思い切って私も購入して...
      傍らに珈琲を。さん こんばんは!

      111108さんの推しだったので気になったのですが図書館にはありませんでした。思い切って私も購入してとても良かったです☆
      正座して読むような真剣さが私には必要でした
      ゆっくりのんびりペース確定なんですね☆
      レビュー楽しみにしていまーす
      2022/11/06
    • 111108さん
      ベルガモットさん、傍らに珈琲を。さん こんばんは♪

      お二人とも購入されたのですね。私は図書館本だったので記憶がイマイチなの残念です。
      ベル...
      ベルガモットさん、傍らに珈琲を。さん こんばんは♪

      お二人とも購入されたのですね。私は図書館本だったので記憶がイマイチなの残念です。
      ベルガモットさんの「正座して読むような真剣さ」わかる気がします。
      傍らに珈琲を。さん、じっくり読んでくださいね。私も寝かせて読み頃を待つ本いっぱいあります!
      2022/11/06
  • 留めておきたい気持ちが溢れてきて、おそろしく長文になってしまった。
    読んでくださる方がいらしたら、長過ぎてごめんなさい。

    本名は中澤圭佐。
    難病のALDにより2009年38歳で亡くなった。
    さいかち真さんの編集後記に中澤さんは哲学を専攻していたとあり、なるほど、と納得。
    全てではないけれど、彼の歌は哲学的だ。
    中澤系。
    自分は一個人ではなく、例えば「癒し系」のような「中澤系」という系統の、ざっくりとした大枠の中に属しているだけですよ、という意味なのかな。
    例えば「癒し系」にしても、癒し系と思うかどうかには人の好みも介入してくるわけで、ある人にとっては癒しでも、そうでない人にとっては「癒し系ですよ」と主張されても、特に何者でもない存在。
    それとも、もっとシステマチックな意味なんだろうか。
    肉体の器官、「呼吸器系」とか「消化器系」のような。
    大きなものを形作っている、「部位」としての「系」。
    他にも「系」のもつ意味を深追いしてゆくとキリがなく、ペンネームだけで中澤系に取り込まれてしまう。

    なんだか、そのネーミングに伊藤計劃(いとうけいかく)を思い出す。
    計劃って難しい漢字だけれど、=計画だろうから。
    彼らの才能や個性を一緒くたに括ってはいけないと分かっているけれど、実際私には色々なものが追い付かない。

    「3番線快速電車が通過します理解出来ない人は下がって」

    中澤系に注目する切っ掛けとなった歌は、最初に載っていた。
    この歌、何重にも怖さが重なってるように思えて底が深い。
    通常、電車が入ってくる場合は危ないので下がるもの。
    理解出来る人は下がるのだ。
    だが、別の目的を持ってホームに居る人間にとっては、前に出る瞬間になりうる。
    その意味を理解出来ない者は下がれと彼は歌う。
    怖い歌だ。
    また直接「死」に繋げなくても、この小さなコミュニティー(駅)には目もくれず高速で通り過ぎる強い大きな力は恐ろしい。
    力の無い者、速度に追い付けない者は、分からない者は、いいから下がっていろという意味なのか。
    こういう威圧を持つ組織や人って、現実に存在するから怖い。
    社会に存在する当たり前のシステムを覆す、攻撃的な歌だ。

    歌集、始めは難しかった。
    それって私が健康体な証だろうか。
    それとも呑気なだけか。
    薄っぺらい経験しか重ねていないからか。
    私は、初めて読む人の歌や詩って、その作家の世界を心で掴むまで理解するのに時間がいる。
    しかしページを捲るうち、だんだんと世界観に入ることが出来た…ように思う。

    人は社会のルールに則って生きているけれど、
    中澤系はそのルールを俯瞰で歌っているような気がする。
    そう歌われると、当たり前すぎて気にも止めなかったものに、何か妙な違和感を覚えたり、
    得体の知れない気味悪さや、抜け出せないループに寒気がしたりする。

    短歌や俳句って、文字数に限りがある故の趣や色気があると思っていた。
    それが彼にかかると、性的な意味を持つと思われる歌でさえ、感情よりも器官であったり肉体(というより最早肉塊)の動きとして捉えていて、私が思い描いていた短歌の世界とはまるで別世界で大変なショックを受けた。

    戯れや、皮肉や、何気ない日常、恋心、それらも全て何かに抗っているように思えて、
    そう思うのって、病によって失われた存在であることを知ってしまった私の傲慢だろうか。
    あ、でも「抗い」ではないのかな……病は関係なく、人として「終わり」を言い渡される「未来のいつか」からの「圧」を受け止めているからこその、苦しみや恐怖を回避する為の、皮肉や生々しさなのかな。
    いや、毒々しい歌ばかりではないのだけれど。

    「なおもあかるき昼にまどろみつつあればアウフタクトのごとき始業ベル」

    音楽の拍子をとる時に、例えば4拍子だと、
    ①、2、3、4、 ①、2、3、4 と拍子をとる。
    この時1拍目を強く、234拍目は弱く数えるはずだ。
    この弱く数えるタイミングから楽曲が始まることをアウフタクトと言う。
    始業ベルって大抵タイミングよく鳴ってくれるものではない。
    アウフタクトという音楽用語を用いる事で、ベルがなる前の状況も、ベル自体も、全てが音楽のように奏でられる。
    アウフタクトと言っているのだから、ジリリリリという無機質なベルではなく、キーンコーンカーンというメロディアスな始業ベルであることも想像できる。


    「コフドロップひとつ男の口中にとけてゆくゆるき甘露という圧」

    咳止めドロップの甘さを「圧」と表現するセンス。
    男とは中澤系さんだと思われるが、「我」などとハッキリとした対象に限定せずに「男」とすることで、じんわり溶けゆく独特の甘味だけでなく、「口の中」という部位までも目に浮かぶほど強調されるように思う。

    読み進めながらいつも通り沢山の付箋をたてつつも、何度も逃げるように歌集を閉じた。
    自分が呼吸を忘れていたんじゃないかと思うほどギリギリの歌も多く、一気に読むことが出来なかったのだ。
    本書の中程で幾つも詠まれている風船の歌も、やりきれない気持ちになった。
    (私の解釈が合っているかは分からないが)
    風船は希望の象徴のようであるのに、彼の歌う風船は危険を暗示する黄色。
    するりと手を離れ、届きそうで届かず、なのにいつも視界のどこかに現れるのだ。

    気持ちは掻き乱されたけど、中澤系を知ることが出来て本当に良かった。
    凄いものを受け取ってしまった感じがする。
    読みながら涙ぐんでしまった箇所もあった。
    読む側も覚悟のいる歌集だ。
    片手で軽々持ち上げるのではなく、出来れば両手でしっかり抱えたい大切な歌集。
    そんな風に感じる。
    時間をおいて、また読み返そうと思う。
    ただ、私はまだ、世の中をこんな風には見られない(見たくない)甘ちゃんだ。

    この歌集を手にする切っ掛けを下さった
    ベルガモットさん、5552さん、111108さん(順不同)に心から感謝します。

    追記
    この感情を忘れないように…と歌の解釈は読んだ直後にメモした物をここに付したのだけど、読了間近、解説(穂村さん等)が載っていることを知った。
    それでも、自分が読後に感じた事であるので、感想文としてそのまま書かせて頂きました。

    • 傍らに珈琲を。さん
      111108さん、こんばんは!
      コメント有難う御座います~。
      読みましたよ、中澤系。
      体力消耗しました 笑
      読み終えた今、ホント胸熱です。
      ...
      111108さん、こんばんは!
      コメント有難う御座います~。
      読みましたよ、中澤系。
      体力消耗しました 笑
      読み終えた今、ホント胸熱です。
      こんな長文を読んで頂けただけで感謝なのに、気持ちを汲んで下さって嬉しいです。
      私にとって特別な1冊になりました♪
      2022/11/17
    • 111108さん
      傍らに珈琲を。さん、お返事ありがとうございます。

      本当、体力消耗しそうですよね。私は深酔いした感じになりました笑
      みなさんの歌集の感想楽し...
      傍らに珈琲を。さん、お返事ありがとうございます。

      本当、体力消耗しそうですよね。私は深酔いした感じになりました笑
      みなさんの歌集の感想楽しいです!特別な一冊に出会えたなんて本当に良かったです♪
      2022/11/18
    • 傍らに珈琲を。さん
      111108さん
      深酔い、何となく分かります。
      中澤系という帳が下りてきて飲み込まれる感じでしょうか。
      私は同時に読み進めていた小川糸さんの...
      111108さん
      深酔い、何となく分かります。
      中澤系という帳が下りてきて飲み込まれる感じでしょうか。
      私は同時に読み進めていた小川糸さんの「ライオンのおやつ」の読後感に影響出てしまいました 笑
      ブクログの皆さんのお陰で、この秋、読書の幅がかなり広くなってます。
      楽しいです!
      2022/11/18
  • 歌集や詩集は短い中に世界観がぎゅっと詰まってるから、読むたびに新たな発見があり、ハッとさせられる。

  • <書評>菊地貴子:どうしん電子版(北海道新聞)
    https://www.hokkaido-np.co.jp/article/261781?rct=s_books

    死の自覚に拮抗する新生への意志 ー 伝説の歌集、待望の復刊!
    ″3番線快速電車が通過します理解できない人は下がって
    「この一首は、歌人の穂村弘に「これは完璧かもしれない」と言わしめたものである」(本書掲載の雁書館版「栞」より)。 中澤系は、短歌の世界での活躍が期待されながら、難病の副腎白質ジストロフィー(ALD)に冒され、2009 年4 月に逝去した夭折の歌人。 雁書館版と双風舎版が絶版となり、本書は適正価格では市場で入手できなくなった。ならば、中澤の没後10 年を迎える今年に、若い人たちでも手に取れるような価格で再刊できないか……。 遺族や版元のそんな思いが詰まって、新刻版の復刊が決まった。 中澤がその著書を参照したとされる、社会学者・宮台真司の特別寄稿を収録。
    → 宮台真司×穂村弘トークセッション「歌人・中澤系が生きた時代、そして今」
    http://www.libro-koseisha.co.jp/literature_criticism/nakazawakei-uta0001-txt/

  • 武蔵野大学図書館OPACへ⇒https://opac.musashino-u.ac.jp/detail?bbid=1000260079

  • 全部の言葉が簡単に消えずに頭に残って何度も噛み締めたくなる作品。一回や二回読むだけじゃ足りないし、何回読んでも必ず発見がある常に新鮮な歌 詩ばかり。

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著者プロフィール

1970年9月、横浜生まれ。本名、中澤圭祐。早稲田大学文学部を卒業後、日本育英会で働きながら短歌作りを始める。1997年、未来短歌会に入会し、岡井隆氏に師事。「uta0001.txt」20首で1997年度未来賞を受賞。2002年からALD と闘病し、2009年逝去。享年38。

「2018年 『中澤系歌集 uta0001.txt』 で使われていた紹介文から引用しています。」

中澤系の作品

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