0戦はやと (上)

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  • Amazon.co.jp ・マンガ (541ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784775910429

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  • 太平洋戦争を、マンガはどういうふうに描いているのか、ということを、絵本より先に手塚治虫のマンガを読み出した私は、気になってしょうがなくなった小3の頃、近所にある風変わりな理髪店、そこは散髪が本業なのかと疑うほど、やたらとたくさんのマンガを置いていて、馴染みのお客は借り出すこともできた奇特な床屋さんでしたが、年配のご主人がマニアなのか戦争もののマンガの宝庫でした。

    これを利用しない手はないと一念発起して、その店に毎日通った私は、店主に聞かれると、今日は直子ちゃんについてきてあげた、とか、次の日は、おっちゃんの仕事ぶりが格好いいから見にきた、とか、その次の日は、将来は理容師になりたいから勉強させていただきます、とかなんとか、それこそ適当な、否、当意即妙な答を用意して、通い続けて田河水泡の『のらくろ』や前谷惟光の『ロボット三等兵』、望月三起也の『最前線 二世部隊物語』や松本零士の『ザ・コックピット』などを貪り読みました。

    その中にこのマンガがあり、敗戦後15年以上も経つと戦争の悲惨や懺悔や鎮魂の気持ちも無くなってしまったのか、1960年代当時はこういう反戦意識などない、格好いい戦記ものとして受容されるマンガが成立したのだという事実に驚愕したのでした。

    もうほとんど覚えていませんが、兵器の劣悪さや物資の困窮をものともせず、主人公の東隼人がむかしの忍者よろしく秘術を考案・駆使して、敵機を次々と撃墜していく姿が、今でも記憶に残っています。

    そのひとつ、紙をあらかじめ細かく切っておいて大きな袋の中に入れておき、追いかけられる空中戦闘の際に、窓からプワーッと紙吹雪にして、後ろの敵機に浴びせかけて目くらましに使い、あわてふためいた相手を急旋回して銃撃するという方法、これは何故か自分が零戦の操縦士になって実体験している夢を、その後10代の終りまで何度も見ました。

    危機的状況や困難に遭遇したとき、紙吹雪というイメージがなんらかのかたちで浄化作用としてあったのか、それともただのヘルプミーという内なる叫びだったのか、もう理解不可能ですが。

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