アトリエのきつね

  • ビーエル出版
3.17
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本棚登録 : 75
感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (23ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784776404958

作品紹介・あらすじ

その冬、はじめての雪が舞った12月のある日、ハンターは銃声とともに、わたしのアトリエの庭先に、一匹のきつねが現われた。きつねは追いつめられたまなざしでわたしを見つめ、わたしもきつねを見つめた-印象的な出会いを経て、きつねは画家のもとを訪れるようになりますが、やがてその野生が、両者を分かつ出来事を引き起こし…。一匹のきつねと画家の心の交流を描いた、珠玉の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 〝目をいっぱいに見開き、私をまじまじと見つめている。追い詰められた動物の眼差しに、私は立ちつくした。体に雪が積もりはじめたが、寒いとさえ感じなかった。私はキツネを見つめ、キツネも私を見つめていた...私は、キツネたちの絵を描き続けている。キツネたちの物語を描くために〟・・・ハンタ-に追い詰められた一匹のキツネが、アトリエの庭先に現われたことに始まる印象的な出会いから、画家のもとに訪れるようになったキツネとの心の交流を描いた、ベルギ-の作家と画家による静かな余韻が残る絵本。

  • 海外で出版されたきつねの絵本。絵本といっても描かれている絵は写実的で、リアルなきつねの姿、リアルな冬の景色、リアルな生態をとらえている。
    お話も童話や寓話の類とは違い、雪山にアトリエを持つ父親が冬に出会ったきつねと間接的に交流し、その記録を綴るという体裁になっている。なので物語を読む、というよりもドキュメンタリーを観るという感触に近かった。
    これは作家の経験談なのだろうか。
    ある冬にたまたま出会ったそのきつねは、ひどくお腹を空かせているようだ。きつねに餌をあたえ、場所もあたえたわたし。気づけば子ぎつねたちからもちょっとだけ懐かれ、しかし冬の終わりとともにきつねたちは姿を消す。それだけの話。だが、妙に心に残るものがあった。

    面白いのはアーティストである語り手、つまり父親がきつねに心を奪われ、その思い出を反芻するかのようにページにきつねのスケッチを残し、日記風な文章を書いている点。
    私がいま読んでいるこの絵本は、作者がきつねと交流した記憶であり、それを記録した日記であり、そのような風景を幻視した「物語」でもあるのだろう。そしてこの描き方だからこそ、作者がいかにきつねに心を掴まれ、きつねに"とらわれて"しまったのか、きつねを好きになったのかを感じ、そういうところが妙に心に残ってしまう。

    きつねの絵本であると同時に、人の心が何かに「傾倒する瞬間」と、ゆるやかに変化していく「機微」を描写している点にこそこの本のよさはある。

  • 「わたし」は画家なのでしょうか。
    納屋に現れたきつねたちとのつかの間の交流が語られます。描かれたきつねがリアルで美しいです。

  • 山にアトリエを構える画家が、ひょんなことからアトリエの建物に迷いこんできたきつねと淡い交流をし、街中でも同じきつねとすれ違い、ずっとずっとその子のことを想い続ける話
    表紙のほの暗い美しさにまず目が奪われ、そしてページをめくるごとに、一匹のきつねの様々な表情、そしてこちらを見つめる眼差しから受ける緊張感に、こわごわしながら読んだ
    犬や猫を街中で見かけて、あの子は迷子か野良なのか、安全な住み処や食事を得ているのか、気になるけど何も出来ない、ただ案じるしかない、という経験をしている人なら、このきつねの想う作者の気持ちは痛いほど分かる
    でもこの作者さんの凄いのは、その思いを乗せたスケッチを執拗に重ね、自身がきつねと邂逅した場面や、その消息を人に尋ねた情景をとびきりの絵にしているところ
    裏表紙の池のほとりの光がきらめくような絵は、本文とは趣がだいぶ違う どうかこうあってほしい、そんな切なる願いを感じる
    けど、それにしても
    きつねに心を奪われすぎ、囚われすぎているようにも読める、絵にもそうした不安な執着心がこびりついてるように見える、あやうさも感じる
    子ども向けの絵本ではないけど、こういう本を子どもの頃に読んで胸をざわつかせてみたいものだ

  • 取り憑かれるとはこういうことかもしれない

  • 面白い演出だなと思うのは、見開きページの左と右で、現実の世界と語り手でもある画家の想像の世界が分かれているところ。
    キツネの美しさとしなやかさを追いかける画家の気持ちが、段々と親心といおうか、気にかける気持ちに変わっていく様が強く伝わってくる。
    結局キツネたちは画家の前から姿を消してしまうが、今でも画家の創作意欲を刺激し続けている存在であるらしい。
    それを形にしたのがこの絵本だ、ということが最後に語られるところも中々に胸にぐっとくる。
    セルヴェ氏の絵も格別に美しく、そして力強い。

  • 安易な餌付け、考えもの…。

  • 絵は本当に美しくて好きだが、物語はたいしたことない。
    でも、画家が実体験に近いことを描いているのかな、と思いきや、絵と文章は別の人物がかいてる。
    じゃあ、こんな上手い絵を描く人に、こんなつまらないテキストを与えなきゃいいのに、と思ってしまった。
    絵のギ・セルヴェには期待したい。

  • 読み聞かせには向かない気もするが反応を知りたくなる。美しい。

  • 2012年12月23日

    <La Renarde>

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