師弟百景 “技”をつないでいく職人という生き方

著者 :
  • 辰巳出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784777828258

作品紹介・あらすじ

一子相伝でなく、血縁以外に門戸を広げている師匠と弟子の“リアル”な関係を、16組に取材して描き出していきます。そこには、長年の作業で身に付けた確固たる思想や、引き継いでいく金言があります。日本美術や工芸に興味がある人はもちろん、職人という生き方に興味を持っている多くの人たちにも手に取ってもらえる一冊です。

感想・レビュー・書評

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  • なぜ、彼は遺影写真の加工・撮影業をしながら洋傘職人に弟子入りしたのか?【師弟百景 第1回】 | GetNavi web ゲットナビ(2022/3/11)
    https://getnavi.jp/life/708739/

    ノンフィクションライター 井上理津子 - inoueritsuko.com
    https://inoueritsuko.com/

    師弟百景 井上理津子(著/文) - 辰巳出版 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784777828258

  • この手の本には 目がない
    ついつい 手が出てしまいます

    本当に大事なものは
    目に見えないんだよ

    そのことは
    「職人」さんの世界では
    ごくごく当たり前のこと

    いろいろなところで
    耳にしてしまう
    「後継者が居ない」
    そんなことを吹き飛ばしてしまう
    力強い一冊です

    つい数十年前には
    ごくごく当たり前のことであったことが
    いまでは…
    それゆえに話題なっている

    なにか釈然としない
    気持は残ります

  • 『師弟百景』
    井上理津子
    2023年
    辰巳出版

    職人とは気難しく寡黙で
    「師の背中を見て仕事を覚える」
    といった一昔前のイメージは全くなく、
    気さくで大らかな師匠と、
    仕事に真剣で夢中な弟子たちの姿を
    丁寧に取材した大変読みやすい本だった。

    本書で取り上げられた
    庭師や仏師、佐官に文化財修理装潢(こう)師、
    刀匠に英国靴職人など、
    16組の師弟たちそれぞれの人物の人生が
    どれも興味深かった。

    個人的に興味のある分野、
    仏師の項目では、
    鎌倉時代の仏師、運慶・快慶の流れをくむ
    「慶派」唯一の継承者であり
    仏師の最高位、大佛師の称号を持つ
    松本明慶(みょうけい)氏の言葉が印象的だった。

    「私は仏さんをつくろうと思って彫っていくのではなく、
    木から要らないところを削り落としていくと、
    そこに仏さんがいはるんですね」

    これはルネサンス期を代表する
    彫刻家ミケランジェロの

    「すべて大理石の塊の中にはあらかじめ
    像が内包されているのだ。
    彫刻家の仕事はそれを発見する事」

    と共通している思考だし、
    夏目漱石が『夢十夜』で
    運慶を登場させた際に出てくる言葉とも
    共通している。
    それを踏まえた上で松本明慶氏は
    伝説的な「慶派」の長に倣った
    言い回しをしたのかもしれない。

    もう一つ印象に残った言葉に、
    文化財修理装潢(こう)師の半田昌規氏の

    「我々がおこなっているのは、
    九十歳のおばあさんを二十歳に戻すのでなくて、
    九十歳のままの姿を保ってもらうことなんですね」

    がある。
    偉大な作品の歴史をつなぐという
    重大な仕事であり、
    気が遠くなるような地道な作業であり、
    繊細な技術が求められる世界において
    大らかで説得力のある言葉だと感じた。

    閉鎖的で師匠の檄が飛ぶような光景を
    イメージしがちな職人という世界において、
    深刻な人手不足が叫ばれる昨今、
    師匠と弟子の関係も柔軟に変化してきた。
    これからも本書で紹介された師弟関係、
    そして職人という仕事が
    後世に伝えられていくことを願ってやまない。

    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
    ⚫︎目次情報⚫︎

    はじめに

    1 庭師

    2 釜師

    3 仏師

    4 染織家

    5 左官

    6 刀匠

    7 江戸切子職人

    8 文化財修理装潢師

    9 江戸小紋染織人

    10 宮大工

    11 江戸木版画彫師

    12 洋傘職人

    13 英国靴職人

    14 硯職人

    15 宮絵師

    16 茅葺き職人

    あとがき
    ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

  • 写真が豊富なので師匠と弟子が並ぶ時の笑い顔が眩しく、そしてどこか似通ってる
    背中を見て覚えろはない。手取り足取りでも職人としての矜持は失われず、無給の仕事でもやる
    なぜやるか?楽しいからだ。誇りを持っているからだ
    そういう人たちの伝えたい思いとその思いを受け取る姿勢は頼もしく美しい

  •  いつも聴いているpodcastの番組に著者の井上理津子さんがゲスト出演していて紹介していた著作です。
     内容は、今日に続く“職人” の世界を舞台に、“伝統的技芸”を伝えていく師弟関係の「今」を紹介した著作です。丹念な取材で描き出された“職人の世界”のエピソードはどれもとても興味深いものでした。
     登場する職人芸はどれも素晴らしく見事なものですが、それを自分が修行で会得するのは、並大抵の決意では無理ですね・・・。


  • 厳しい世界であることはもちろんですが、高学歴の世界でもあると感じました。

  • 師弟百景
    ~〝技〟をつないでいく職人という生き方~

    著者:井上理津子
    発行:2023年3月1日
    辰巳出版
    初出:
    月刊誌「なごみ」(淡交社)
    1~11:2020年1-6月号、2020年8-12月号
    12、13:「GetNavi web」2022年3月、8月各公開
    14書き下ろし
    15、16:「GetNavi web」2023年1月、2月各公開

    かなり話題になっている本。きっと売れていることだろう。16職種、その師弟を16組32人取材している。連載11組、追加取材5組。

    庭師、釜師、仏師、染織家、左官、刀匠、江戸切子職人、文化財修理装潢(そうこう)師、江戸小紋染職人、宮大工、江戸木版画彫師、洋傘職人、英国靴職人、硯職人、宮絵師、茅葺き職人。
    知らない職種もあった。宮絵師というのは初めて聞いたし、文化財修理装潢師というのもどんな仕事かは大体分かるが、正式名称はこういうのかと知った。装潢の「潢」は紙を染める意味のようだ。

    職人の師弟関係というと、師匠が言葉でほとんど教えず、見て覚えろという態度で、最初は下働きばかりさせるイメージがあるが、この本を読むと、そういう人もいるが、最近の師匠は結構、最初から教えているようことが分かる。もちろん、そうでない人もいるが。あとがきにも、どちらかというと饒舌だったと書かれている。ただ、師匠の弟子時代は、昔ながらのそうした師匠が多かったようにも感じさせられた。

    釜師や刀匠など、弟子は「無給」が当たり前という。弟子仕事が終わってから深夜までアルバイトをして生活費を稼いでいる。なかなか厳しいが、本人たちはそうは思っていないようだ。とくに工芸の世界は「芸術」でもあり(あるいはそれに近くもあり)、職業として最初から成り立つわけではないだろう。

    例えば、刀匠についている弟子はまったくの無給で、コンビニのアルバイトで生計維持。一方、鍛冶には「炭切り三年、向こう槌(づち)五年、沸かし一生」といわれる厳しい修行が待っている。「積み沸かし」という鋼を熱する工程では、グツグツといういい音がするらしい。鋼に含まれる炭素などの不純物が熔けて流れ出る音。これに耳を澄ますのだという。非常に重要な工程だそうだ。一生が修行なのか・・・

    そんな厳しい修行をこなしながら、弟子は5年で刀匠の資格試験(文化庁)に一発合格したという。この弟子が師匠を評し、師匠は形に対するセンスがずば抜けていると言う。叩くとき「ちょっとここ取ってみな」とアドバイスされ、そうるすとスッとした形に変わったり、全然違うものになったりするらしい。なんともカッコイイ話。読んでいるだけで惚れ惚れする。

    江戸木版画彫師、つまり、今でも浮世絵が描かれ、彫り師が存在するというのも驚きだった。洋傘職人という仕事にも、やはり驚き。

    この本、話題になっていて、売れているのも理解できる。素晴らしい。著者は各章、取材も構成もまことにきっちりしている。下調べも丁寧。まさに職人技。井上理津子さんに、弟子はいるのだろうか。次の師弟百景はそれが読みたい。

  • 750-I
    閲覧

  • 宮大工や陶芸など職人からイメージするものから洋傘や絵画修復までさまざまな分野の師弟が紹介されている

    弟子になるきっかけ
    師匠の教え方
    師匠のまた師匠との出会い

    多くの師弟が描かれ、この本の何倍もの濃密な師弟の関係が日本中にあることを想わせる

    伝統と革新に感銘を受ける弟子と、弟子に真摯に向き合う師匠
    日本の底力はまだまだあるなと感じた

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著者プロフィール

井上 理津子(いのうえ・りつこ):ノンフィクションライター。1955年奈良県生まれ。タウン誌記者を経てフリーに。主な著書に『さいごの色街 飛田』『葬送の仕事師たち』『親を送る』『葬送のお仕事』『医療現場は地獄の戦場だった!』『師弟百景』など多数。人物ルポや食、性、死など人々の生活に密着したことをテーマにした作品が多い。

「2024年 『絶滅危惧個人商店』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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