痕跡本のすすめ

著者 :
  • 太田出版
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本棚登録 : 392
感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778312978

作品紹介・あらすじ

一冊の古本には、前の持ち主によって刻まれた、無数の「痕跡」が残されています。そんな「痕跡本」は、物語の宝庫。本と人との、誰も知らない秘密やミステリーが隠れています。本書は、世界初となる「痕跡本」の本。稼代の痕跡本コレクターである著者が、めくるめく痕跡本の世界へと、あなたを誘います。

感想・レビュー・書評

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  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/771867

  • 三中信宏『読む・打つ・書く』東京大学出版会,2021 でこの本の存在を知り,マルジナリアで活かせる技術を発見したく読んだ.発見はなかった.

  • 「言葉はこうして生き残った」の河野道和さんがすすめていた本を紐解いた。痕跡本を読むことも本の愉しみ方のひとつだと思う。

    著者は、とてもユニークな痕跡本を約60冊用意する。そこから様々な「物語」を読み解く。ただし、推理小説とは違って、「答え」はない。そういう推理小説は嫌いだと思う人には物足らないかもしれない。私は考古学ファンで、いつも答えのないサスペンスに接しているようなものなので、「あゝこういう角度から、本という〈遺物〉も楽しめばいいんだ!」と再発見した。そしてこの本、「造り」という点でも様々な工夫があります。奥付にも仕掛けがある。装丁屋さんにも参考になりそうな本です。河野道和さんありがとうございました!

    痕跡本には時に深い「物語」がある。特に本に書き込みをした年齢と手放した年齢との差を、古沢さんと同じように私も推理する。そこから、複雑な人生(妄想)が私の頭の中に展開されていくだろう。
    「高橋亮子 ボクちゃんーその世界」(1977年)この「画集」に挟み込まれた画と同じ雑誌の切り抜き。わたしも一時期マンガ単行本を買い集めていたことがあるので、この人の気持ちもわかる気がする。
    ‥‥18歳。新しい大学生活に膨大な雑誌は持っていけない。お母さんに言われた様に雑誌を処分することに決めた。中学生の頃から大好きだった高橋亮子先生の画集を買った。雑誌の処分の合間に画集と同じ絵を切り抜いて挟み込んだ。雑誌にはわたしの甘酸っぱい思い出の全てがある気がした。時を隔てて、2005年。46歳。子供に恥ずかしくて、隠してきたさまざまな趣味の本は一括して処分して、子供の自立を機会にわたしも自立する。‥‥などなど。

    或いは、私の「蔵書」の「痕跡本」の行末を推理する。痕跡本なので、ひと山100円どころか、古本屋行きさえも検討されなくて、ブルドーザーがゴミとして処分する未来は、あえて見ない。私はスマホを手にする前は、本の終わりの奥付やカバーの裏に読んだ直後の感想を書くことが多かった。その後に「ワープロ」で清書すると、わりと良い書評がかけるからである。細かくびっしりと書いた痕跡本は、やがて私の蔵書が「◯◯文庫」として郷土の図書館に寄贈された後に、研究者の研究対象となる。やがて一冊の評伝にまとめられて‥‥いかん、妄想とはいえ書いていること自体が恥ずかしくなってきた。

    これからは、ひと山百円のワゴンを見るのが楽しくなりそうだ。




  • 長年、古本を買い続けていたりすると、まれに‘傷物’と呼ばれる本に当たる。破れや汚れ、他にも文章にアンダーラインが引いてあったり、感想や落書きのようなものが書き込んであったりする。

    古本屋では大抵安価で売られている、そのような‘傷物’の本にスポットを当て、‘痕跡本’と命名したのがこの本の著者、古沢和宏さん。
    愛知県の犬山市で【古書 五つ葉書房】という古本屋を開いている方だそうだ。
    この方が秘蔵の‘痕跡本’たちを披露してくれるのだが、語り口が古本愛と豊かな妄想に満ちていて実に良いのだ。

    例えば古沢さんを‘痕跡本’道に引きずり込んだ運命の本、前の持ち主の怨念を感じる『まだらの卵』日野日出志。

    若輩者の私などはこんな本に当たったら、すぐに捨てるかなにかすると思うが、古沢さんは違う。

    「この本に残された傷の正体、それは狂気などではなく、かたちを変えた日野さんへの愛そのものだったのかもしれません。」p014

    古沢さんは、本というモノも好きなのだろうが、それ以上に人の気配、人の痕跡を愛しているんだろう、と思った。

    私自身は本に書き込みを入れることを一切しないのだが(たぶん、幼い頃に絵本に落書きをして母親にしこたま怒られたのだろう)古本で‘痕跡本’をみつけると(いい意味でも悪い意味でも)当たりだ、と思う。
    この前ネット新古書店で買った新書は、アンダーラインと感想(「そうだそうだ」「ww」など)が書かれていて、前の持ち主と一緒に読んでいるような、頭の中を覗いているような気分になった。

    私も今度‘痕跡本’をみつけたら、いろいろ妄想してみよう。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      5552さん
      如何に書物が貴重だったのか判ります!
      それと「マルジナリアでつかまえて」も同趣向の本みたいです。
      5552さん
      如何に書物が貴重だったのか判ります!
      それと「マルジナリアでつかまえて」も同趣向の本みたいです。
      2020/08/09
    • 5552さん
      猫丸さん、おはようございます。
      おお!これまた面白そうな本ですね!
      マルジナリア=本の余白の書き込み、なのですね。
      まえがきからしてい...
      猫丸さん、おはようございます。
      おお!これまた面白そうな本ですね!
      マルジナリア=本の余白の書き込み、なのですね。
      まえがきからしていい感じです。
      こちらもご紹介ありがとうございました。
      2020/08/10
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      5552さん
      GOOD!
      5552さん
      GOOD!
      2020/08/15
  • 本に残された様々な痕跡を紹介した本。
    破ったり落書きしたりは好きではないが、
    メモ書きや感想、メッセージなどからは
    その本が愛されていた事が伝わってくる気がする。
    この本に出てきた、
    「たいくつなりし本なれど…故郷は良いなあ」
    なんて、とても素敵な書き込みじゃないですか。

    私は図書館で本を借りた時に、
    前に借りた人のレシートが入っているのが
    結構好きだったりする。
    その本と一緒にどんな本が借りられていたか、
    大袈裟だがその本の歴史が垣間見れるのが楽しい。
    レシートに気になった本があれば、
    借りてみたりしています。

  • 狙って買わなくても、思わぬ書き込みや紙モノが出てくる事もありますね。本はキレイに読みましょうという小学校の図書館での厳しい指導がトラウマで、いまだに自分では書き込みはしたことありませんが。

  • ちょっと期待はずれ。古本屋のオヤジの妄想が書かれてだけのような。

  • カード会社の会員誌で高橋源一郎氏がエッセイ中で紹介していたもの。
    感性が合うようで、今まで読んだ本は面白かった。
    本書もその一つ。

    「痕跡本」とはなんぞや?

    この言葉は著者の造語だそうで、古書店を営む著者が、前の持ち主の物語を想像させる様々な痕跡が残った本のこと。
    例えば、書き込み、挟んであったメモ、レシート、汚れなどなど。
    一体どんな物語が?
    第一章を開けてみると、『まだらの卵』という漫画本が紹介されている。
    恐怖漫画のようだが、そこには君の悪い、針様のもので何度も突き刺されたあと!
    ぎゃーああー!怖い!怖すぎる!
    絶対買わない!

    第三章 秘密
    うわ!絶対!私は!本に書き込みしない!!!!!痕跡なんて!残さない!
    悶えた。
    人というのは、他人の秘密は覗きたがるくせに、自分の秘密は見せたくない身勝手なものであるからにして......。
    野望だとか!ポエムだとか!見られた日には、恥ずかしくてたまらん!
    しかし思わず涙する場合も。
    ミノルタ(コニカミノルタになる前?)のカメラの保証書に、「初めてに 買ってもらひし 革靴の いたまぬままに 夫は居ませじ」(88頁)
    誰か著名な俳人の一句なのか、それともこの人の完全なる創作なのか。
    しかし、何か心に訴えかけてくるこの切なさ。
    詠み人知らずとして、世に残るのならば、それも良いかも。

    『せどり男爵数奇譚』は『ビブリア古書堂』で取り上げられていたのを思い出した。
    こんなに何度も私の前に現れてくるとは。
    読まねばならぬか。

    第五章 謎
    『寶塚』が衝撃的すぎる。いやこれはまた。
    わざとなら、彼女らを汚すもの、と怒りようもあるが、偶然ではどうしようもないというか。
    そのあとの「w」の謎とも絡めて、もう一度言おう。
    衝撃的w

  • 文字数が少ないのであっさり読み終わったが、「痕跡」の写真は充実している。古本に残った書き込みなどの痕跡をおもしろがるのは、ある種の才能がいると思う。まず必要なのは、書き込みや汚れを前の持ち主の「痕跡」として認識し発見する能力。そして、その痕跡を読み解く間違った?想像力だろう。持ち主はどんな人間か?どういう動機でこの本を買ったのか?この本を読んで何を思ったのか?どうして古本として出回ってしまったのか?

    著者は無責任かつテキトウな想像力を発揮している。これは誰にでもできることじゃない。大抵の人は、書き込みや汚れを忌むべきものとして切り捨てる。この違いは、おもしろがろうとする意思の有無だろう。もちろん、著者も最初からそんな意思を持っていた訳じゃないと思う。しかし、ある古本との出会いが著者のスイッチを入れたことで、おもしろがろうとする意思が生まれたのに違いない。そして、この本を読んだ読者の中にもスイッチが入ってしまった者がいることだろう。私も今後、痕跡本に出会うことがあったらおもしろがってみたい。その才能があるかどうかはともかく。

  • 一冊の古本には、前の持ち主によって刻まれた、無数の「痕跡」が残されています。そんな「痕跡本」は、物語の宝庫。本と人との、誰も知らない秘密やミステリーが隠れています。本書は、世界初となる「痕跡本」の本。稼代の痕跡本コレクターである著者が、めくるめく痕跡本の世界へと、あなたを誘います。(アマゾン紹介文)

    古本と向かい合う際の一つの新しい方法だと思う。ただ、探してまで読みたいか、と言われると…。
    その昔、図書館で借りた「Yの悲劇」(E・クイーン)でネタバレされたことをふと思い出した。

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